015.お持ち帰り
ガバッ!!
オレは、ベッドの中で目が覚めた。
だけど、どう見ても自分がいつも使ってる安物のシングルベッドじゃない。
そもそも、部屋の中身がまるで違うのだ。
「イタタタ……」
おまけにちょっと頭が痛い。何でこんな……。
……そうだ、思い出してきた。
昨日の夜は……時計の時刻は夜中の0時過ぎだろうから、昨日で合ってるよな。
昼だったら窓のカーテンの隙間から明かりが漏れるはずだが、見た感じ外は真っ暗だ。
で、ヒルデとその知り合いたちが集まった飲み会に途中から混ぜてもらった。
そこでビールをたらふく飲んで……いや、最初はチョットだけにするつもりだったんだ。
でもヒルデが奢ってくれるって言うんで、ついつい追加でどんどん頼んでしまって。
更に、周りの人たちに勧められるまま、普段は絶対に口をつけることのない高級なお酒まで飲ませてもらった。
それでもうへべれけになって、その後は……。
それにしても楽しかったなあ。
ヒルデは様々な業界に顔が広くて、色んな人から面白い話を聞けたっけ。
って、そんなどころじゃない。
本当にここは何処なんだ?
前後不覚になって誰かの部屋に運ばれたのだろうか。
シャツとパンツだけの格好だけど、服まで脱がせてくれたってことか。
ところでやたら大きなベッドだな。
ダブル……いやそれ以上、確かクイーンとかキングだっけか。
スゲーな、こんなベッドで寝られたら毎日が快眠に違いない。
ガチャ。
部屋のドアノブを回す音が聞こえた。
オレを運んでくれた人が判明……んんっ!!
「なんだ。もう起きてたんだね、タツロウくん」
「ヒ、ヒルデ……さん。そ、その格好は」
「あー、あたしはいつもこの格好で寝るんだよ。シャワー浴びてから、下着とキャミソールだけ身につけてさ」
ヒルデの寝間着姿、というには……ピンクっぽいベージュ色のキャミソールが少し透けて、同じ色のブラとパンツがチラッと見えて……オレには刺激が強すぎる。
単に露出が多いだけでなく、モデルらしく背が高くて均整のとれたプロポーションと、見るからにスベスベなお肌……。
オレは、その、生唾を飲み込みそうになるのを我慢するので精一杯だった。
ヒルデはランウェイを歩く時のような、いやもっと腰を動かすような歩き方でこちらに迫ってくる。
そしてベッドに腰を下ろすと、オレの顔をまっすぐ見ながら、挑発的というか獲物を狙うような眼差しでとんでもないことを言い放った。
「それじゃあタツロウくん。あたしと、えっちなこと、しようか」
「なっ! あ、あのっ!」
「ふふふ、慌てる表情が可愛いじゃない。でも、まだ何もしてないから安心して? ……いや、残念だったかな?」
「い、いや、そういうわけじゃ」
「で、あたしはそのために、飲み会で裸踊りしてからぶっ倒れたキミに服を……シャツもパンツも着せてあげて、ここまで苦労して運んで。また上着とズボンを脱がせて寝かせたんだよ」
ま、マジか!
つまり、オレは、ヒルデに『お持ち帰り』されてしまったってことかっ!!