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これで何度目のヴァージン

君の部屋はいつも良い香りがする。この花園に滞在を許された自分に未だ戸惑いつつも、これから始まる事を思うと高鳴る胸の鼓動を収めることができない。信じられないくらいの間君を欲しがっていた。君を抱かずに死ぬつまらない人生なんて心から嫌だと思っていた。そんな僕だから、君の無防備な姿の前では理性を保つことなど出来やしなかった。


いつもこうして持ち上げる度に、君は僕に「重くない?」って聞く。野暮な質問だ。でもどうやら君も緊張しているようで、今日そのコミュニケーションを取る必要は無かった。君を今夜の会場にエスコートし、全身で覆い被さった。興奮と緊張で破裂しそうな心臓を抑えながら、うっとりと君を見つめる。目と目が合った瞬間、時間が止まった。いつも君の目を直視することはできないけれど、この時だけは、君が初めて僕に見せる余裕のない表情に思わず見惚れてしまった。心に焼き付けたいと思ったから、目を離すことなんてできるはずもなかった。


僕たちの間に、余計な言葉は要らない。こうなってしまったからこそ、尚更そう感じた。どちらともなく唇を交わす。これまで幾度となく交わしてきた唇。そんなよく知った唇が、今日はやけに色っぽい。僕たちは時間の概念すら忘れてしまうほどの間そうしていた。ふと君を見る。君の瞳の奥が、僕に語りかけている。なんて言っているのかなんて、なん言って欲しいのかなんて、分かり切っていた。でも僕は悪い男だから、それを君に答えさせたかった。君の言葉で、それを確認したかった。


「いいよ」


世界で1番パワフルな3文字が、僕のこめかみを打ち抜く。もうとても冷静ではいられなかった。純白のベールから露わになった君を見て、思わず息を呑む。感じたことのない色気に、全身が熱くなった。綺麗だ。この世の何よりも美しい。そしてそんな君を、僕で汚してしまいたい。

そこからはシンプルだった。欲望のまま、力強く君を抱きしめた。熱く熱く、唇を交わした。先程のそれとは訳が違う。このまま食べてしまいたいと思った。欲望のまま、君に噛み付いた。濃厚な君の味がする。僕の大好きな味。

君の大事なものが溶けて無くなってしまうまで絡み合った後、僕の愛でぐちゃぐちゃになった体に優しく触れた。薄氷のように美しくて脆くて儚い純白の体を、ゆっくりと指でなぞる。探したい。君の好きなところを。教えて欲しい。僕の知らない君を。悦ばせてあげたい。世界で1番大好きな君を。僕の全部で。

甘ったるい声と荒い息遣いが、頭の奥に響き渡る。君の悶える体を両腕で強く抑えた。逃がさない。僕の中の悪魔が囁いている。もっと君を壊したい。汚したい。いつでも余裕たっぷりの君の頭の中を、僕でいっぱいにしたい。その欲望に抗おうとする理性なんて、一欠片も残ってはいなかった。焦らしたい。意地悪したい。今君がして欲しいことは手に取るようにわかる。でもまだしてあげない。だっていつも君は、僕の事ならなんでも手に取るようにわかってしまうから。はじめて握った君の主導権を、僕は簡単には返してあげやしない。君が壊れそうになったら、僕は君が欲しかった事をしてあげる。


我慢にも限度はあるって、君がようやくわかったような顔をした。思わず綻ぶ。しょうがないな。僕はゆっくりと、君の大切な部分に触れた。「ダメ」「やばい」なんてありきたいなこと言われても、やめてあげられる訳がない。だって君が欲しいって言ったものなんだから、全部受け取って貰わないとね。そうして君の頭の中が一面のマゼンタで埋め尽くされた時、零れ落ちた言葉を僕は聞き逃さなかった。


はじめての時でさえ、こんなに緊張感と高揚感が湧き上がることはなかった。この時を何年も待ち続けていた。心の中では無理かもしれないと思いながら、それでも一筋の光を抱き続けた。そして遂に今、君と僕が繋がる時が来た。ゆっくりと君の中に僕の全部が飲み込まれていく。あって無いような壁一枚挟んで、君と僕はひとつになった。全身を霹靂が駆け抜けた。興奮と快感に溺れそうになりながら、僕はゆっくりと動く。ずぶ濡れになって溶けそうな声を出す君を見て、僕の思考回路は完全にショートした。本能のまま、君を求めた。君も僕を求めてくれた。君の中は、どんな空間より居心地が良かった。文字通り柔らかく、愛に溢れた君に包まれて、僕はもう止まることなんてできなかった。止まりたくなかった。汗ばんだ体を絡め合う。室温なんて、この灼熱の愛の前ではただの数字に過ぎない。ただ互いに求め合った。唇を絡ませて、体に触れて、口付けて。深い所に辿り着く度、君の愛おしい声が響く。君の体が反応する度に、僕は君を逃がさぬよう優しく、残酷に動いた。そこに君が大好きだという感情以外は存在を許されなかった。そのうち僕の体に、限界のエマージェンシーが鳴り響く。まだ終わりたくなんてなかったけれど、それが許されるほど君は僕を半端に締め付けてはいなかった。体の底から熱いものが込み上げてくる。脱力感と幸福感に締め付けられながら、僕ははじめて愛とは何かを知った。


優しい腕に包まれながら、真っ白になった頭と力の入らない全身に鞭を打ち、君を抱き締める。震える体を優しく包んでくれる君に甘えながら、僕はこれを絶対に逃さぬように、一生忘れないように、そっと君の唇で愛を確認した。いつも誰かを抱いた後、はすぐに会いたくなるなる不健康な友人も、この幸福の時間に比べるとちっぽけな存在に感じた。時計を見て驚く君に、思わず表情が緩んでしまう。僕だけが知っている君。世界で1番綺麗な君。そんな君をこれからもっと、僕が壊してしまいたい。

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