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翌日…の放課後。
私は足早に教室を後にした。赤間君とは校門前で待ち合わせている。その時、下駄箱で声をかけられた。
「白菜!一緒に帰ろ〜」
「美佳…」
振り返ると美佳が立っていた。鞄にパルはついていない。私の視線に気づいたのか、美佳が小声で言う。
「パルちゃん…自分のせいであたし達が狙われるのはよくないってお留守番してるの。この前の事はパルちゃんのせいじゃないって言ったんだけど」
なるほど。見た目は小学生みたいだが色々考えているんだな。とはいえパルの意見も一理ある。いつまたアオイとキサメが襲ってくるかわからないし。
「姫路さん!」
息を切らしながら赤間君が私に声をかけた。校門で待たせすぎた。わざわざ戻って来てくれたんだ。
「…と、松尾さん…」
赤間君が美佳に視線を移す。美佳が私と赤間君を交互に見て、にやついた。
「ほ〜ん…そういう事」
「ちょ、美佳!違うって!」
「あたしお邪魔だよね!ごめんね!先帰るね!」
「美佳ってば!!」
私の制止も聞かず、美佳は颯爽と下駄箱から出て行ってしまった。絶対勘違いしてる。明日ちゃんと誤解を解かなきゃ…。
「…えっと、よかったの?」
赤間君が申し訳なさそうに言う。赤間君との先約があったのは本当だし、赤間君が気にする事はない。私は頷いた。
「それより、行こう。赤間君とキサメが会ったっていうガチャポンのところ」
「うん」
学校からそう遠くない道端に赤間君とキサメが会ったというガチャポンが並んでいた。というかここって、私が赤間君に告白された場所…の近くだ。
なんとなく気まずい空気が流れる。と、ポムッという音がしてトキが人間姿で現れた。
「何二人して突っ立ってんだよ。金あるだろ?」
「い、今財布出そうとしてたの!」
気まずい空気を誤魔化すように私は財布を出した。昨日の話から、トキにガチャポンを回してもらう事にした。私はトキに百円を渡す。
「…回すぞ」
トキが百円をガチャポンに入れる。そしてダイヤルに手をかけた瞬間ーー…
「うわっ!?」
バチン!という大きな音と共に閃光が走った。まるで雷でも落ちたように。私と赤間君は後退り、トキは尻もちをついてしまった。
「トキ!大丈夫!?」
「ああ…けど、これでわかった…俺は、ガチャっとはガチャっとのいるガチャポンは回せない」
トキが手をプラプラさせながら言う。あれは強制終了みたいな感じなのだろうか。百円も戻って来ている。
「…また振り出しに戻ったね」
赤間君がポツリと呟く。そう、これでますますわからなくなってしまった。アオイと『組んでる奴』とやらは一体…
「あれ?白菜?…と赤間君も」
不意に呼ばれ、私と赤間君が振り返ると体操服姿の冴子が立っていた。手にはビニール袋。買い出しだろうか。
「冴子、部活は?」
「今終わって部員みんなで腹ごしらえしよ!って話になって買い出ししてたの。ジャンケン弱くて嫌になるよ〜」
ビニール袋をガサガサと漁りながら冴子は言う。パンやお菓子がたくさん入っているようだ。
「二人は…というか三人?白菜のいとこだっけ。三人は何してたの?」
そうだ。冴子はガチャっとの事は知らない。トキは私のいとこって事になってたんだった。トキが冴子をちらりと見る。
「…別に。今から帰るところ。な?」
誤魔化してるのか何なのかぶっきらぼうな返事である。別に冴子に知られても困らないんだけど、どこから何を話せば…。今は帰った方がいいかな。
「あ、うん…そうなの。じゃあまた明日ね、冴子。赤間君も」
流れで赤間君にも別れの挨拶をしてしまった。方向違うし、今日は何も作戦会議?できないし妥当だろう。
「?また明日ね〜」
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…女子と二人きりになるとなんでこう気まずいんだろう。いや、姫路さんも女子だけど最近はトキもいるから三人だし。
「うわ〜ガチャポンとか懐かしい」
気づくと木村さんはガチャポンの前に移動していた。ガチャポンを上や横から見ている。
…キサメ、どうしてるだろう。あのレストランの件以降会ってないけど…。
「…ん?この人形、似たやつ白菜と美佳もつけてるよね」
不意な発言に素早く顔を上げる。二人が持っているトキとパルに似ている人形…やはり、他にもガチャっとがいるのか。他のガチャっとからも話を聞けないだろうか。だが、今の俺はまだキサメと契約してる状態だろうから回せないし…。
木村さんは契約してないけど、何も知らないし危険な目に合わせるわけにも…。
「あと、部長も」
…部長?
「部長って…?」
「ん?えっと、私の入ってる茶道部の部長。あーでも…生徒会長の方が通じるかな?兼任してるとはいえ、知名度は生徒会長って言った方が上だろうし」
生徒会長…この学校の生徒会長が、ガチャっとと契約している?俺は食い気味に木村さんに尋ねた。
「ほ、本当にこの人形だったの?生徒会長がつけてるのって」
「え、多分…全く一緒じゃなかったしいつもつけてるわけじゃないっぽいからうろ覚えだけど」
ここにきてまさか、こんな重要な情報を得られるなんて。姫路さんに一刻も早く知らせたいが、もう遅いし俺は連絡先を渡したけど、姫路さんの連絡先は知らない。
木村さんは知ってるだろうけど、さすがに全部話す時間はない。今日は帰ろう、また明日言えばいい。
「ありがとう、木村さん。俺帰る!じゃあ!」
「へっ?う、うん、じゃあねー…」
俺は足早に帰路を辿った。