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ガチャっと!  作者: 彩銘
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再会2


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


遠くから轟音が聞こえ、あたしは意識を取り戻した。何の音だろう。サイレン?非常ベル…?まだ視界はぼんやりしているが、みんな倒れたままみたいだ。


「何の音や…?」


「校舎からだな」


生徒会長と見知らぬ男の姿が見えた。隣にアオイと、トキもいる。


トキの顔には黒い痣が浮かび上がっていた。おぼろげだが、アオイが注射器を持っていた。あの液体、打たれたんだ。


遅かった。


「トキ、オマエ校舎見て来い。最初の仕事だぞ〜」


男がトキの背中を押す。トキはゆっくりと体育館の扉の方に歩いていく。途中、あたしの隣を歩いたがあたしが意識を取り戻しているのは気づかなかったみたいだ。


トキが体育館を出て行った後、男が体育館を見回す。


「紫月、コイツらどーすんの?このまま?」


生徒会長が腕組みをする。この二人、知り合い?生徒会長の事名前で呼んでるし…


「全員落とすか。白菜ちゃんみたいに」


あたしは咄嗟に起き上がりそうになった。それはまずい、そもそも白菜もどうなったのかわからないし。それに落とすってどこに?白菜みたいに、床に消えてしまうのだろうか。


「アオイ」


生徒会長がアオイの名前を呼ぶと、アオイは指をパチン、と鳴らした。その瞬間体育館の床に大きな穴のようなものが現れる。白菜が吸い込まれたものと同じだ。


「うわ、すげ〜」


何故か生徒会長、アオイ、男は浮かんでいるみたいに穴に吸い込まれない。あたしも抵抗できず、吸い込まれていく。


「これからどーすんの?」


「…校舎の方が気になるから、見に行くか」


そんな会話を聞きながら、あたし達は穴に完全に吸い込まれた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「美佳姉!!」


俺は体育館の扉を勢いよく開けた。だが、誰もいなかった。照明だけが煌々とついている。


体育館に来る間も誰ともすれ違わなかった。どう考えてもおかしい。他に校舎と体育館を繋ぐ通路があるとしても、ここまで静かで誰とも会わないわけがない。


「一体何が起こってるの…」


体育館をゆっくり歩きながら呟く。ふと、足元に違和感がある事に気づく。見た目は普通の板張りの床だが、何だろう、変な感じ…


床に手を置く。何かの気配がする。何かいる。確信した。


「床下…?じゃない…」


ルーンの言っていた事を思い出した。狭間。姫路白菜は狭間に落とされたって…じゃあ、もしかしてみんな狭間にいる?


「どうしよう…」


俺は狭間の開け方を知らない。ガチャっとの中で狭間を開け閉めできる個体なんて見たことない。相当な術だ。


「あれ〜?ハオじゃん」


聞き覚えのある、嫌味な声に顔を上げる。俺は身構えた。


「…神楽水…」


「苗字呼び捨てとか距離感じるわ〜前みたく紫杏兄って呼べよ」


神楽水はスタスタと体育館に入って来る。周りには誰もいない。一人みたいだ。


「お前か?狭間にみんなを落としたの」


「俺がそんなんできるワケねぇだろ。ガチャっとにやってもらったんだよ。ま、命令したのは紫月だけど」


紫月姉がこいつの話を聞くわけがないから紫月姉が独断でやったんだろう。その事実にも胸が痛い。


こいつのせいで紫月姉がああなったと思うと、胸糞悪い。


「…その紫月姉はどこ?愛想尽かされたの?」


「煽り方覚えたんだなぁ?つか最初から愛想とかねぇから。校舎の方に行ったよ」


校舎。ルーンが今何かと戦ってるところ…あの二人、対峙して大丈夫なんだろうか。


「で、オマエは何してんの?」


ちらりと神楽水は俺の首を見る。


「首輪も誰かに外してもらっちゃってさぁ」


「自分で千切ったんだけど。あんなスカスカの首輪、すぐ外れたし」


「ルーンだろ?」


口を紡ぐ。やっぱり勘づいてた。神楽水は校舎の方を見る。


「…ま、ルーンには紫月がお灸を据えるだろ」


「紫月姉はルーンにはそんな事しない。お前と違って」


神楽水がにやりと笑う。嫌いだ、この顔。虫唾が走る。


校舎の方から大きな音や振動が伝わってくる。ルーンと…何かが戦っている。ルーンは強いしそう簡単には負けないと思うけど。


「楽しそ〜俺も混ざって来ようかなぁ」


「行かせるわけないだろ」


俺はルーンに渡されたナイフを片手に身構えた。神楽水がナイフを見る。


「何それ。ルーンの形見?アイツ死ぬの?」


「死なないし死なせない」


「かっこい〜」


神楽水が指を鳴らす。神楽水の周りを囲むように、ガチャっと達が現れる。誰とも契約してない、感情もない、ロボットみたいなガチャっと達だ。


ただ、戦闘機として扱われるだけの。


「まだそんな玩具持ってたんだ」


「そんな事言うなよ、オマエと同じガチャっとだぜ?」


その玩具は俺をめがけて一斉に飛び込んでくる。殴り飛ばして、蹴り飛ばして…数が多い。神楽水を囲むように戦うので神楽水にも近づけない。


「いいよな〜ガチャっとって。問答無用で俺の味方になってくれる」


「お前がそういう風に作ったんだろ!!」


玩具達を投げ飛ばして声を荒らげる。俺の事も、ルーンもパルも、他のガチャっと達もこの男にとってはただの都合の良い味方でしかない。


それが嫌だから、嫌だったから俺とパルはこいつの元を離れたのだ。


「お前にとって俺達は良く動く人形なんだろ、だからもっと良い物が作れたら後はポイなんだろ!!」


「ルーンはずっと俺の味方なんだけど?」


「紫月姉がいるからだよ。お前の為じゃない」


その言葉が癪に障ったのか、初めて神楽水が自ら俺に殴りかかってきた。人間より力があるのはガチャっとなので、俺は余裕で躱す。


「舐め腐りやがって…クソガチャっとが」


「先に舐め腐ったのはお前だろ」


神楽水は玩具達を追加で出した。

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