カグラミ
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翌日。土曜日だったので学校は休みだが、昨日あった事を美佳にも話しておきたいと思い、連絡を取った。
パルが念の為アオイを警戒しているとの事で、私とトキ、キサメが美佳の家に行く事になった。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
美佳の両親は仕事で不在だった。美佳の部屋に入るとパルが座っており、私達を見て表情を明るくした。
「白菜!久しぶりみゅ〜!」
「パル!元気?」
「にゅ!」
パルは私に抱きつき、トキとキサメを見た。トキは軽く会釈し、キサメはじっとパルを見ている。
「…あなた、黒に染められてたみゅね」
「わかるんだ」
パルは頷く。パルはどうやらアオイの事は知っているようだがキサメとはほぼ初対面らしい。確かに美佳がアオイにさらわれた時もパルとは契約前だったし。
美佳が飲み物とお菓子を持ってきてくれたところで私は昨日の出来事を美佳とパルに話した。トキがクッキーをつまむ。
「…山吹紫月は敵と見ていいだろうな。アオイとルーンも然り」
「実際あんたの友達に何か吹き込んでたっぽいしね」
キサメが私を見る。冴子…あの後ハオと家に帰ったんだろうけど…。気まずくて連絡もとっていない。
「…パルちゃん、生徒会長の事とかハオ?の事とかわからない?」
美佳がパルに尋ねる。確かにパルはアオイの事も知ってたし、トキの前の名前も知ってた。何かわからないだろうか。パルは顎に手を当てる。
「…ハオはわかるかもしれないみゅ。他に特徴教えてほしいみゅ」
私はハオの特徴をパルに教えた。犬みたいな耳と尻尾があった事、キサメと同じくらいの体格と身長、そして素早く、とても強かった事。
「…レオン…」
パルが呟いた。レオン、聞いたことない名前だ。トキが尋ねる。
「誰だ?」
「そのハオって子…特徴聞いてピンときたみゅ。レオン…そうかみゅ…」
パルが深刻そうな顔をして俯く。反応からするに私達の味方ではなさそうだ。ルーンと知り合いっぽかったし、当然か。
「ねえパル、ルーンってガチャっとは知ってる?」
私はルーンの事も尋ねた。今のところ一番正体がわからないのがルーンだ。山吹先輩とは契約してないのにやけに慕ってる。ハオとも知り合いみたいだし…。
「知ってるみゅ。名前がそのままって事はまだあの人のパートナーかみゅ…?」
「あの人?」
「カグラミみゅ」
また知らない名前だ。私と美佳は首を傾げる。キサメも誰?という表情だ。ただーー…。
「…カグラミ…」
トキだけ唯一反応を示した。
「トキ、知ってるの?」
「いや…そういうわけじゃねえけど…なんか引っかかる」
私達の通う学校にカグラミという苗字の人はいない。少し珍しいし、いたら覚えているだろう。
「パルちゃん、そのカグラミってどんな人?」
「…最悪最低の奴みゅ」
パルの声が低くなる。普段明るくて温厚なパルがここまで嫌悪感を出すなんてよっぽどだろう。私はキサメに尋ねた。
「キサメ、山吹先輩の事は知らないって言ってたよね?カグラミって人の事は?」
「黒に染まってた時の記憶が曖昧だから断言できないけど…倉庫に現れた事はない。アオイもその山吹って人も話はしてなかったと思う」
「…カグラミはレオン…今のハオのパートナーだったみゅ」
パルが不意に口を開く。一斉にパルに視線が向けられる。という事は、冴子と契約をする前ハオはそのカグラミって人のパートナーだったのか。
「…ん?待てよ、でもそのカグラミって奴ルーンのパートナーって言ってたよな。今もそうなら、ハオと契約解除した後ルーンと契約したって事か?」
トキが早口で言う。確かにそういう事になる。人間一人につき、契約できるガチャっとは一人だから…。
「違うみゅ。…カグラミは同時に複数のガチャっとと契約できるんだみゅ。今は違うけどハオ、ルーンと同時に契約してたみゅ」
「は!?なんだそりゃ!?」
トキが声を荒げる。それを制するようにパルが静かに言った。
「…パルも、カグラミのパートナーだったから」
その時、美佳のスマホが鳴った。美佳が部屋を出る。私はパルに尋ねた。
「じゃあパルはカグラミとの契約を解除して、美佳と契約したの?」
パルが頷く。話を聞くにパルはカグラミをよく思ってなかったみたいだし、何か複雑な事情があったんだろう。
「白菜!!」
電話を終えた美佳が勢いよく戻って来た。そして続ける。
「赤間君が…目を覚ましたって」




