表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガチャっと!  作者: 彩銘
13/40

アオイの過去


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


数年前。


まだアオイのパートナーが涼華で、俺のパートナーが洋平ではなかった頃俺達はよく四人で会っていた。


偶然俺のパートナーが涼華の学校の先生だったからだ。また、涼華は風紀委員でその風紀委員会を担当していたのが俺のパートナーだった。


平穏な日々を過ごしていたある日、涼華が暗い顔で風紀委員会の部室に現れた事から事態は一変する。


「…羽山はねやまさん?どうしたの、今日は風紀委員会はお休みでしょう」


俺の元パートナー…高瀬綾たかせあやは部室の片付けをしていた。だいぶ片付け終え、帰ろうとした矢先の出来事だった。


「先生…今少し話せますか」


「?ええ…」


「私、ストーカーされてるかもしれないんです」


詳しく聞くと、夏休みが開けてしばらくしてから帰り道に誰かにつけられている気がする、との事。最初は気のせいだと思っていたそうだが、毎日毎日気配を感じるという。


「帰り道をわざと変えたり遠回りしたりしたんですけど…それでもつけられてるみたいで」


「ご両親には言ったの?」


涼華は首を左右に振った。無理もない、涼華の両親は共働きでかなり忙しいそうで、余計な心配をさせたくないだろう。


「最近はアオイに人間姿で一緒に帰ってもらってるんですけど」


「そう…私も協力してあげたいけど…」


綾は既に結婚しており、子供もいる。俺は子供にねだられて綾が回したガチャポンから出てきたのだ。綾の家族も俺の事、涼華とアオイの事も知っている。


「いいんです、先生お家の事でも大変でしょ?アオイもいてくれるし大丈夫!ただ…話だけ聞いてほしくて」


そう言って、涼華は部室を去った。


その後ろ姿を、俺は今も忘れない。


ーー…それから数日後、綾に涼華の死が伝えられた。綾は担任ではなかったし風紀委員会の活動も毎日ではなかったので伝わるのが遅くなったのだ。


涼華は、ストーカー…同い年の男に殺された。他校の生徒で、涼華を通学路で一目見て好きになったそうだ。話しかける勇気がなく、後をつけていた…。


綾はその場で泣き崩れ、しばらく学校を休んだ。アオイはパートナーの死により契約が切れ、ガチャポンに戻った…と思われる。


ーー…数ヶ月後、綾の移動が決まり、引っ越しをする事になった。その時、告げられた。自分との契約を切ってほしい、と。


「…娘も小学生になるし、これからもっと忙しくなると思うの。その前に…勝手だけど、あなたとの契約を切りたい」


俺はなんとなく予想がついていた。涼華もアオイもいなくなった今、俺がいると色々思い出して辛いだろうと。俺は確認した。


「…家族で決めた事なんだよね?」


「うん…」


なら、いい。そう思った。俺は綾との契約を切り、ガチャポンの中に戻った。


戻る前、うっすら思っていた。アオイはどうしているだろう…もう一生、人間と契約しないかもしれないと。




「…だからアオイに会った時、少し嬉しかった。ああ、誰かと契約したんだな…って」


過去の話をトキに話し、俺は黙った。トキもずっと黙ったまま話を聞いてくれた。トキが立ち上がる。


「ありがとな、話してくれて」


「…うん」


「話し終わってすぐで悪いんだけど、アオイが黒に染まった理由と染めた人物はわからないって事だよな?」


俺は頷いた。アオイがガチャポンに戻って再会するまでの間の事は知らない。ただ、今も黒に染まったままという事はそれだけ強力な力か、力のサポートができる人物が近くにいると考えていいだろう。


「ただいま!トキ!キサメはーー…」


バタバタと足音が響き、トキのパートナー…白菜が勢いよく部屋に入ってきた。俺を見て白菜は立ちすくむ。


「…起きてたんだ…」


「迷惑かけてごめんなさい」


俺は頭を下げた。黒に染まっていた時の事はほとんど覚えてないにしろ、迷惑をかけていた事には変わりない。白菜は慌てる。


「そ、そんな…謝らないで。無事でよかった」


「キサメ、さっきと同じ話白菜にもしてやってくれないか」


「…わかった」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


キサメからアオイの過去を聞いた私はしばらく思考が追いつかなかった。パートナーを殺され、誰かに黒に染められ…今も元に戻っていないアオイ。


彼は今、何のために動いているんだろう。


「…白菜…」


トキの声で我に返る。視界が歪んでいる。私は泣いていた。慌てて涙を袖で拭う。


「ご、ごめん…」


トキが優しく私の頭を撫でた。安心する。けど、今はその優しさもなんだか辛い。キサメが口を開く。


「…俺もアオイを元に戻したい。誰に染められたかわからないから、その人物を捜すところからだけど…」


私は頷いた。トキが顎に手を当てる。


「となると、やっぱり怪しいのは山吹紫月だな。あいつにまた話を聞くしかない」


ただ、私達の敵でも味方でもなさそうな山吹先輩が簡単にアオイの事を話してくれるとは思えない。また冴子に頼んで、部活の時間を割いてもらうのも気が引ける…。


「あの倉庫にまだアオイっているの?」


キサメが尋ねた。キサメと赤間君を助けに行った際、アオイは倉庫の奥に姿を消した。あそこから動いてないとしたら可能性はある。


「行ってみなきゃわかんねえな。けど、あいつ山吹紫月としかつるんでないみたいだし、いるんじゃねえの」


「明日行こう。白菜、トキ…悪いんだけど、一緒に来てくれない?」


私とトキは頷いた。山吹先輩も一緒なら話もできる。私達は明日、再び例の倉庫に向かう事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ