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ガチャっと!  作者: 彩銘
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戦闘


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺はアオイと共に例の倉庫にたどり着いた。道中、俺もアオイも一言も話さなかった。聞きたいことはたくさんあるが、余計な事をしてキサメに危機が及ぶのは避けたい…そう思って大人しく従ったのだ。


アオイが倉庫の扉を開ける。そこにはキサメが立っていた。俺を見ても何の反応もなし。あのレストランの時と変わらない反応だ。むしろ、あの時より反応が薄くなっている気がする。


「…他には誰もいないのか」


俺はやっと口を開き、アオイに尋ねた。アオイは扉の近くにあった古びた椅子に腰掛ける。


「いない。そのうち来る、待ってて」


「来るって誰が?」


「お兄さんに会いたいって言ってた人」


その言葉に身構える。アオイが俺をここに連れてきたのは、別に俺と話したい人がいたからか。俺はキサメをちらりと見る。


「…キサメはあれからずっとこんな感じなの?」


「そう。もう俺の声かけにもあまり反応しなくなった。まあどうでもいいけど」


「だったら元に戻せよ」


「それを決めるのは俺じゃない」


吐き捨てるようにアオイは言う。キサメを黒に染めたのも、誰かの指図なんだろうか。アオイの立場もよくわからない。


…ガチャっとの事を知っているであろう生徒会長と関係があったりするのだろうか。



ーー…どれくらい経っただろう。夕日が倉庫に射し込む。何時間も俺達は倉庫に留まっていた。アオイもキサメも倉庫を出る素振りはない。


俺はというと縛られてもないので出て行く事は可能なのだがやはりキサメを元に戻して一緒に帰りたい気持ちがある。もう、チャンスは来ないかもしれない。


その時、倉庫の扉が開いた。夕日も一緒に射し込み、入ってきた人物の顔は逆光で見えない。アオイが頭を下げる。


「…おかえりなさい」


「待たせたなあ、アオイ。あと…赤間洋平君やったかな」


聞き覚えのある声。声の主がこちらに近づき、顔がはっきりと見えた。


「…生徒会長…」


直接話すのは初めてだが、よく知った顔。現れたのは俺の通う学校の生徒会長、山吹紫月だった。


「手荒い真似して堪忍な。アオイにあんたを連れてこいって言ったのうちやねん」


「キサメを黒に染めろと命令したのもあなたですか」


俺は強い口調で尋ねる。だとしたら、この人は味方じゃない。何のためにキサメを…怒りすらわいてくる。会長は首を傾げた。


「半分正解やな。黒に染めたのはアオイの独断や。せやけど…それを利用しようとしたのはうちやから」


「利用…?」


会長がアオイに何か耳打ちをした。アオイは不服そうだったが頷く。そして、銃を出し突然キサメに発砲した。


「な…!?」


キサメはそれまで突っ立っていたが、さすがに危機を感じたのか間一髪でそれを避ける。


「うちな、絆ってもんが見たいねん」


アオイの背後で会長が呟いた。絆?二人を止めるでもなく、何を言っているんだ…?会長が続ける。


「ガチャっとはパートナー…主人の為に命をはって、命に変えても主人を守り抜く。これは基本やな?でもなあ、うちずっと気になっててん」


アオイは発砲をやめない。キサメは避けはするものの戦う気はなさそうで物陰に隠れ、アオイはそれを追っていく。それを会長は眺める。


「黒に染まったガチャっとは、どこまで主人に尽くすんやろ?って…」


その時、肩に鈍い痛みが走り俺はその場にうずくまった。見ると、肩から血が出ている。なんだこれ、怪我?でも会長は何もしていない。まさかアオイに撃たれたのか?


振り向くと、キサメも同じように肩を怪我しており、うずくまっていた。アオイがキサメの頭に銃口を向ける。


「キサメ…」


「ほお、さすがに全部は避けきれんかったか…主人であるあんたも同じところ怪我するのは知っとったやろ?パートナーなんやし」


そうか、ガチャっとが怪我したり死んだりすると契約を結んでいる人間も同じように影響が出る、その話は前に聞いた。これがそうなのか。だとしたら…。


「…キサメの事、殺す気なんですか…」


そうとしか考えられない。その場合俺も死ぬ可能性が高い。けど、キサメは戦う気ないみたいだし、俺が命令しても聞いてくれないかもしれない。どうしたらいいんだ?


「うーん…殺したくはないんやけどなあ…そうや」


会長がアオイの方に向かっていく。何かをアオイに伝え、アオイがこちらに向かってくる。


そして、銃を俺の太ももに撃った。激痛が走る。


「あぁぁあぁぁっ!?」


「うっ…!?」


キサメも同じように太ももに痛みが走ったのか、声を上げた。俺が怪我をするとキサメも同じように怪我をする。このままだと俺でもキサメでも、攻撃され続けたら共倒れだ。


「キサメ!このままやとあんたの主人死ぬで?あんたも死ぬけど」


こんな状況で、会長は煽るようにキサメに言う。なんなんだこの人、正気じゃない。恐怖で思考が停止する。


キサメはというとうずくまったまま、悶えている。キサメの心配をしている場合じゃないくらい肩と太ももの痛みが酷くなっていく。変な汗が止まらない。


「…先輩、これ以上は無駄では?」


アオイが銃を下げながら言った。アオイもアオイで会長の言う事を聞くだけだ。二人ともどうかしている。


「せやな、このままほっといたらどっちも死ぬしなあ…はあ、期待外れや」


会長が踵を返す。アオイも後について行く。視界が歪んできた。このまま気を失うのはマズいと分かっているのに、力が入らない。


その時、扉が開かれた。アオイがとっさに銃をそちらに向ける。


「赤間君!!キサメ!!」


そこに居たのは姫路さんとトキだった。意識が朦朧としつつ、それは分かった。そのまま俺は、気を失った。

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