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道で拾った少女が俺の好きな子だったのだが

作者: アレム

「さぁ、上がって」

「……あの」

「どうした?」

「こういう時、男性はエッチなことすると思うのですが」


 ……なんか少し思考を読まれた気がする。

 だが俺は好きな子にそんなことをするDTでない! 故に安心してもらいたいね!


「僕はしないよ。でもいやなら食事だけでもして行って」

「すみません、失言でした。おじゃまします……」


 ドアの前にいるだけでももうビシャビシャだ。

 久しぶりこんな大雨が降ったよ。


 彼女はゆっくりと家の中に入って行った。彼女が上がったのを確認した俺もこれ以上濡れないよう足速に家に入って行った。


「靴下はここで脱いでね」


そう言うと黒色のソックスをその場で脱いだ。

 青色のデニムは濃い青に変色しており、真っ白な半袖の服は雨によって体に引っ付いている。

 焦茶の髪もいくつかの束になり、ポニーテールや顔から水が落ち、薄紫の瞳のまつ毛も濡れている。


「あ、床を濡らしてしまったわね、ごめんなさい」

「いいや大丈夫だよ」


 俺も靴と靴下を脱ぎ彼女の横を抜けて、右の部屋へと入る。ベッドの隣にある自分のタンスの引き出しを引っ張りいくつもの服の束から彼女着替えとタオルを持ち部屋を出る。

 そして着替えとタオルをお風呂場へと運ぶ。


「着替え置いておいたからお風呂入って良いよ」

「……ありがとう」


そう言ってお風呂場へと入って行った。

 俺はその間に部屋から持ってきたタオルで床を拭きリビングへと向かった。


 今、俺の家には莉奈がいる。それを考えるだけで頭がどうにかなりそうだ。

 大学内の莉奈と講義が被ることはほとんどない。だから接点もなくもちろんのこと話したこともなかった。だが一度だけ講義が被るというラッキーなことがあった。

 その姿みて俺はただ勤勉だなぁと思った。授業中に姿勢を崩すことはなく教授の話に夢中なのか集中しているのか………。


 その後も食堂や弁当を食べているところを見たが誰かとつるんでいるところは全く見たことがなかった。少しお嬢様気味だと思った。


「よし、作りますか」


 俺は雨の中買い出しに行った。理由は簡単だ。

 カレーが食べたかった。たたそれだけ。

 実家では週一でカレーが出るほどうちの母はカレー好きだった。だが一人暮らしをするようになってからはカレーを作ることなんてなかった。ふとした瞬間に食べたいって思っただけ。


「にしてもどんな偶然なのか……」


 カレーのためにした行動がこんな幸運を引き寄せたなんて……。


 俺は手慣れた手つきでジャガイモ、人参、玉ねぎを水で洗い、皮を剥いた。人参をいちょう切り、玉ねぎをうす切り、じゃがいもを半分に切りにした。

 それらを炒める。そして水を入れて沸騰するまで待つ。そしたらアクを取ってしばらくは放置。


 その間スマホで天気予報を確認する。


「うーわ、明日まで大雨か」


 そこには明日まで大雨に注意、となっていた。予想降水量は6mm、今日の8mmより減ったがまだまだ大雨だ。梅雨の季節にしては妥当なのか、そうではないのか……。

 最近ようやくニュースや天気予報に目を通すようになったからこれまでどうだったのかさっぱりだ。


 その時リビングの扉がゆっくりと開かれた。


「あの……あがりました」


 声のする方向を見ると、お風呂からあがり顔が少し火照っている莉奈がいた。濡れた髪はポニーテールで止められている。


 さっき渡した白色のパーカーと膝の上くらいまでの黒色の半ズボンがよく似合っている。

 彼シャツみたいだな………。俺は少し見惚れていた。

 見られて恥ずかしそうにモジモジしている。


「あーっと、あの、カレー作ってるよ」

「え、ええ申し訳ないわね」


 それがとっさに出た言葉だった。


 カレーを放置してからまだ数分しか経過してない。

もう少し放置する必要がある。だからまだまだ時間が掛かる。


 その間何をしていたら良いのか………。変にジロジロするより大人しくスマホでも見ていた方が得策か。

 俺はその後もスマホで時間を確認しながら煮詰まるのを待った。その間チラチラと何をしているのか見てみたが立ったまま座ろうとしない。


「何してるんだ? 座っていいぞ」

「ありがとうございます……」


 そしてゆっくりと着席した。

 あぁ、そういえば荷物は何もなかったな。ということは突然飛び出してきたのだろうか。

まあ家出に関して特に言える立場じゃないけど。

ちょっとした質問くらいはしても良いよね。


「なんであんなところにいたんだ?」

「お母さんと喧嘩したから」


 典型的なパターンだ。ここで深掘りして一刻も早く家に返すのが良いのか、それとも本人が帰りたいっていうまで待つのか、はたしてどっちが良いのか……。

 こういう経験がないからどうしたらいいのか分からないな。


「何があったか知らないけど、早めに帰ってあげなよ。大学生にもなってお母さん困らせるのは親不孝だぞ」

「知ってるわよ、でも今回は許せないかも……」


 そう言うと顔が少し暗くなった。俺はスマホで時間を確認した。ちょうど良い時間だ。

 俺は立ち上がり火をつけている鍋の様子を見に行った。


「よしルウをいれるか」


 買ってきたルウの箱から取り出し溶かしながら鍋の中に入れた。

 俺はルウを溶かしながら様子を伺った。するとこちらをチラリと見た。その瞬間立ち上がり少しだけ顔が明るくなった。


「いい匂いね」

「カレーだよ、あと少しでできるから待ってて」

「自炊とかするの?」

「うん、一人暮らしするなら自炊できた方がいいからね」

「カッコいいわね………」

「え?」

「な、なんでもないわ私待ってるから」


 そう言って再び座った。


 俺はルウが溶けたので。トロみがつくまで鍋を置いておいた。

 そして俺は莉奈の横に座る。ソファがあるが莉奈が地べたにいるのに男の俺が座るわけには行かないからな。

 俺は雰囲気を変えたかったので大学の話に切り替えた。


「そういえばどうして横丘大学に?」

「……家が近いから」

「え? まじ? 中々入試の難易度高いと思うんだけど」

「そうね、でも意外に簡単だったわ」

「すげぇな、良く『簡単』って言えるな。カッコいいね」


 横丘大学は私立でも入試難易度が高い。だがその分入学後は他の大学と比べて利点も多い。就職や起業する人もいるし、OBやOGからスカウトされる。


 毎年倍率は2〜3倍になり、うちの高校でも受験するのは40人くらいだった。それが全国の高校から集まってくる。

 改めて思い返すと俺もよく受かったもんだ。


「あのさ一つ聞きたいんだけどさ」

「どうしたの?」

「どうしていつも一人なんだ? 誰かと一緒にいることは嫌い?」

「そんなことないわよ、あなたが見てないだけで私友達いるわよ」

「え? まじ?」

「あなたもしかして私に友達がいないって思ってる?」


 と少し睨まれた。うぉ……これは申し訳ねぇことをしちまった。まぁ確かに友達いないのかい? って遠回しに言われるのは気分が悪いからね。

 ここはしっかり誤っておこう。


「ごめん、勘違いだったよ」

「気にしてないわ、あなたはどうしてこの大学に?」

「うーん、まぁあれだよ将来のためだよ」

「そうなのね、偉いわね」

「普通だろ」


 そう言って雑談をして俺はカレーの様子を見に行った。いい感じのとろけ具合だ。

 俺は皿にご飯を乗せて、カレーをいれた。

先にそれを机に置いた。


「先に食べてていいよ」

「ダメよ、あなたが来るまで待つわ」

「お、おう」


 そう言って机の前に座った。


 俺は待たせてはいけないと急いでご飯を乗せてカレーをかけた。

 

 そして座りいただきますだ。

スプーンを手に取りカレーを口へと運ぶ。パクリと一口食べると目がキラキラし出した。


「んー!美味しいわね!」


 その満足そうな顔をみて思わずニヤけてしまった。そして一口、また一口とどんどん食べていく。


(お嬢様かと思ってたけど、純粋な女の子なんだなー)


「あ、ご、ごめんなさい、はしたなかったわね……」

「いや、良いよ。喜んでもらって嬉しいよ。カレー好きなの?」

「ううん、好きまでとはいかないけれどあなたの作るカレーは大好きよ」


 お、おう中々に嬉しいこと言ってくれるじゃん。誰かに料理を褒めてもらえるのは初めてだ。

 俺はその言葉に頬が緩んでしまった。


「ど、どうしたの?」

「あぁ、いや嬉しいなって……///」

「誰かにおいしいって褒められたことないの?」

「いやあるけど、大好きまでは……」

「あ、あぁ……えぇっと……///」


 妙な雰囲気になってしまった。互いに赤面して顔を背けている。いやいや、これくらいで何赤面してるんだ。まったく。


「お、おかわり、食べる?」

「あ、ありがとう」


 俺は莉奈のお皿を受け取り台所へと向かった。俺のてには莉奈が食べたカレーのあとがある。それだけでニヤニヤしてるんだ俺は!

 あぁ、もう!早くご飯とカレーをよそおう!


莉奈視点ーーー


(………ど、どうしよう! だ、大好きって何言ってるのよ! いつもみたいに静かにしていればいいのに! 好きな人の家………こんなに落ち着かないのね。)


 彼に出会ったのは私が高校2年生のとき、私がナンパされているときに助けてくれた。

 その日は暑くて、私が日陰に入って涼んでいた時。突然みたことない人に肩を組まれた。私はとっさにその手を払いのけて距離を取った。けれどその人はしつこく何度もこちらに寄ってきてついに日なたに出た時に助けてくれた。


「あんなのがまた来るかもしれないのでしばらくいてもいいですか?」


 そう言われて私はこくりと頷いた。この人も同じことをするんじゃ………って思ったけれど、ほんとに一緒にいるだけだった。


 その日は暑いというのに彼は緑色のカーゴパンツを履いていた。けれど真っ白な半袖を着ていた。その二色がよく記憶に残っている。


 運が良かったのか、大学で再会して今は家にまで上がっている。彼はわするているかもしれないけれど私は初めての出会いをしっかり覚えている。


清力視点ーーー


「はーい、どうぞ」

「ありがとう」


 ふぅーと深呼吸をする。さてどうするよ、清近。この後は、こんな雨の中で外に追い返すわけにもいかない。

 ということは………泊まりなのか? 泊まっていくのか?!

 だってそうだろう。雨はまだ全然降っている。さっきからザーザー、ザーザー降っている。それに外も暗くなりつつある。


「今日泊まってく?」


 俺がそう言った直後その場の空気が凍りついた。

 あれ? もしかして聞いたらダメだったのだろうか……。


「もし、あなたが許してくれるなら……」


 という感じで今日、好きな子とお泊まり会することになりましたー


ーーー


………てな感じで今は夜の12時だ。


「ねぇねぇぶっちゃけさ、私って可愛いでしょぉ?」


 家にあった度数低めの酒を一缶飲ませたら見事に酔った。顔が真っ赤で時々ポケーっとしてる。

正直ここまでの酔っ払いはみたことがない。まぁ普段から飲みに行かないだけだけど………。


「ふふふ、カッコいいわねぇ。」


 そう言って頬をツンツンされている。酔って数分後にわかったことだが、この人酒癖が悪い。酔うとダル絡みしてくる系だ。

 俺はというとまだ酒を飲んでいない。酔って判断力が鈍り変なことするのは避けたいからね。


 「あついーー」


 そう言って服を脱ごうと、どんどんパーカーを上に上げていった。少しずつ顕になる莉奈の肌。それにゴクリと息を飲んだが俺は冷静になり止めにかかった。


「バカバカ! 何してんだ。ほら扇風機つけるから脱ぐな」


 扇風機をつけると脱ぐのをやめた。しかし次の攻撃が始まる。


「うへへへ///」


 その直後、立ち上がり後ろから体を乗せられた。突然の行動に俺は飲んでいた酒を吹き出してしまった。


「ブッ!!!」

「汚いー」

「あのーどいてもらえませんか?」

「いーやだー、ねぇえこっち来てぇ///」


 そう言ってされるがまま手を引っ張られ誘導されると俺の自室へと入った。こんなところで何するんだよって思っていたがいきなりベッドに入りこんでいった。


 いやいつの間に、俺の部屋把握してたし……。


「ほーぉらー入って」

「うぇ?! 俺も?」

「はーやーくー」


 なんだなんだ、酒の勢いに任せてDTを弄ぶ気なのか? 残念だが我には効かぬ。


 そうしてベッドに入ると抱きつかれた。やっぱりそういうことですかね? そう思っていたが


「抱き枕ぁ……」


 どうやら俺を抱き枕にしたかったらしい。変なこと考えた俺がバカみたいじゃん。


 そして莉奈はそのまま寝てしまった。まあ明日は大学がない。だから寝てもいいかと思い俺も寝てしまった。


翌日ーーー


 目が覚めると莉奈が目の前でスヤスヤ寝ていた。俺は何がなんだか分からず、ベットから飛び起きた。

 

「ん……んん」


 危うく起こすところだった。えぇーっと落ち着け、思い出せない何があったか。


 そうだ昨日酒を飲んでいて徐々に過激になって行った気が………。


「ん……んん?」


 そうやって思考をこらしていると目を開けた莉奈と目が合った。

 「あ……」という雰囲気が流れた。


「いや違うよ? 何もしてないよ? 」

「……///」


 と言ったが赤面して布団にこもってしまった。

声をかけたが布団から出てこなかった。

 今は8時だ。俺は何か飲みのものがないか冷蔵庫を探したが何もなかったのでコンビニへ行くことにした。


「俺、コンビニ行ってくるから、休んでて良いよ」


 一言声をかけて俺はコンビニへと向かった。

案の定今日も雨だ。雨雲のせいで外も薄暗い。


 「濡れる前に早くコンビニに向かおう」


 俺は足早にコンビニに行き家に帰って行った。

 ドアノブに手をかけて扉を引いた。


「お帰りなさい。ご飯にする? お風呂にする? それとも」

「はいストップ! 莉奈やめなさい。そういうのは好きな子にしてくださいね」


 自分でいうのもなんだが好きな子はおれじゃないしな。はぁ………ほんとにこの子が彼女だったらな。

ていうか、もしこれがどんどん悪化するならお母さんと早く仲直りさせなきゃな。

そう思い俺は家に入った。



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