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〜第一章〜見習い保安官ジュリ、始動3(改)

「おおい、こっちだ」

急ぎ集合場所の西門に向かうと、馬の貸出し手続きを済ませておいてくれたカイドさんが右手をヒラヒラと揺らしながら声を掛けてくれた。



西門は主に役人の人達が使うことが多いと聞いたけれど、とても人が多くて驚いた。

クルリドの関所はやはり国境の砦だけあって人数も多いんだなぁ・・

ちらほら見かける異国の人達がここが国境なのだと認識させる。

うわぁあの人の髪、銀髪!聞いたことはあるけれど初めてみた。

深紅のピアスを着けているということは北のガルネット国の人であろうか。

北国の人たちは色素が薄い人が多く、銀髪や白髪、肌は透けるような白、と聞いたことがある。

わわ、あの人スラっとしていて凄く綺麗な女性だなぁ。ん?男性?え、どっちだろう??

私は興味がそそられる事が多過ぎてキョロキョロと視線を動かすのが止まらない。



「ジュリちゃん、急いで」

隣を歩いていたはずのマリノさんの数メートル先から急かすような声にハッと我に返った。

「あっ、すみません、すぐ行きます」

タタタッと駆け寄りマリノさんと歩みを合わせた。



「すみません。初めて見る人達がとても新鮮で」

「確かに国境の関所だと様々な国の役人に会うわよね」

そんな会話をしながら関所を出る為の手続きを済ませる。

入国した際と同様に保安官用の板書に名前や所属などを書き、必要に応じて出立先や理由なども書くこともあるという。

「思わぬ事故や事件に巻き込まれた場合、早期に気付いて対処することができるからね。特に役人は任務で向かう事がほとんどだから、予想外のハプニングなんかもあるのよ」

「そうなんですね」

「これで良し、と。さあ向かいましょう」

首から下げた身分証を守衛官に見せ、カイドさんが待つ城壁付近まで向かった。



用意してくれていた馬の手綱を引き事件現場へと向かう国境沿いの山道へと歩みを進める。

「ここから先はルビリエ国よ。と言っても大きな違いはないかしら。肌の色や髪色なんかも似ているし。あ、でもそうね、パーリー国よりは身分の差があるかしら。貴族と平民が食卓を共にする、なんてパーリー国ではよく見かける光景だけれど、ルビリエ国ではまずないわね」

「そうなんですか。意識しておいた方が良いですよね」

「まぁでも俺らの身分は基本的にどこにも属さないからな。貴族でも平民でもない。この身分証をぶら下げている時はいわば特権階級みたいなもんだ。だから貴族相手でも対等に話していいし、謙る必要はねぇよ」

「そう・・ですか」



クルリドの街中を抜け、遠くに放牧されている家畜を眺めながら、その事件現場に到着したのは1時間ほど経過した頃だった。

「保安局の者だが」

事件現場に近寄らないよう警備してくれているルビリエ国の騎士団に身分証を見せると、規制を張ったローブを通してくれて、馬も預かってくれた。



「こちらから上に登った所が土砂崩れが発生した現場です。騎士団で出来る処置は行なって一応の安全は確保出来ておりますが、まだ足場が不安定な部分もありますので十分ご注意ください」

辺りを見渡すとごっそりと崩れ落ちた山肌が前方へ向かう道を遮断している。

「報告書にある通り大きな規模の土砂崩れね。下の道まで崩れてしまっているわ」

「この規模を人為的にって・・個人じゃ無理だろ」

「何かの組織ってことですか?」

「少なくとも2〜3人でできる規模じゃねぇよな」

爆発らしき勢いで薙ぎ倒された大木が道路脇に積み重ねてある。騎士団の人達がやってくれたのであろうか。



少し離れたところから草を掻き分けて上へと向かう。

ううぅ・・、絶対虫いるよ・・

虫が何よりも苦手な私はあまり自然と触れ合うことは好きではない。

小さな頃は小さな羽虫でさえ逃げ惑っていたが、少しずつ強くなってはいるものの、指先ほどの大きさの虫すら未だに退治することは難しい。

先頭を歩くカイドさんが草を掻き分けてくれることが本当に有難い。



息切れするほど急な斜面を時に木を支えにしながら登ること30分、土砂崩れの発生箇所まで辿り着いた。

「ふぅ、きつかったわね」

秋になり始めているとはいえ昼間はまだ汗ばむ日もある季節。

水を口に含み汗を拭いながら辺りを見回す。

「この山道を爆薬、若しくはそれに準ずる物を運んだって事だよな。一体どれ程の労力だろうな」

「上からは無理ですか?下りなら何とかなりそうかもですよね」

「まぁそうだが・・、上まで登るのか、この斜面を」

カイドさんの返答でハッと気付いた。

そうだった。気付いてしまった以上、確認をする為に上まで登らなければならないということに。

「上まで行くのは最後でいいわ。まずは引継ぎ資料を元に捜査を始めましょう」



倒れた木々、砕け散った岩の破片、剥き出しになった山肌。

各々注意深く観察していく。



黒い石の破片が大量に散らばっている。

これ、資料にもあった、ギルダさん達が言っていた黒く光る石、この事かな。

確かに辺り一面、特に爆発があったと思われる箇所を中心に大量に散乱していることが分かる。

事件から既に数日。

それなのにまだこんなに残留しているなんて。

爆発が起こったであろう大きな穴をゆっくり、じっくりと見て回る。



途中何度か散乱している粉砕された木の幹に足を取られそうになる。

この黒い石は何の鉱石なんだろう。見た感じジルサニアに見えるけど・・

資料を更に読み込んでいくと、黒い石と共に幾つかの鉱石が散乱していると書かれている。



まぁ山だし石くらい落ちているだろうけれど、きっとそういうわけではないんだよね。

爆発の起点となった大きな穴をじっくり見ていると、太陽の光が差し込んでキラキラと黒い鉱石に虹色の輝きが反射している。

虹色・・・?

虹色!!

そうか、そういうことか!

「マリノさん、カイドさん!!」

私はある事に気付いて、いや思い出して、思わず二人の名前を叫んでいた。



「どうしたの?ジュリちゃん」

大声に驚いたのだろう。

二人が駆け寄って来てくれた。

「これ、この石、恐らくこの黒い石が原因です!」

私が断言すると二人は顔を見合わせた。



「ギルダさん達が言っていたこの黒く光る石、これは正確には黒く虹色に輝く石なんです。この鉱石はジルサミアと言って、ジルサニアにとてもよく似ています。お二人ともジルサニアはよくご存知ですよね?油分を多く含む鉱石で砕いたり調合したりして私達の灯りや火元になったりする馴染み深い鉱石です。ところがジルサミアは一般的にはあまり知られていない。だけれど、極一部の人にはよく知られた鉱石なんです。というのも、このジルサミアはある鉱石と一定の割合で調合して強い力を加えると爆薬のような大きな爆発を引き起こす作用を持っているんです。そしてそれは・・・」

私はそこで我に返った。

夢中になると一気に捲し立てるように話してしまう。

私の悪癖が出てしまった。

その存在を知って、いつか見てみたいと願っていたジルサミアを手に取ることが叶い興奮してしまったのだ。

やってしまった・・、子どもっぽいから興奮しないように気を付けていたのに。

二人ともきっと呆れてる。

学院時代もそれで呆れられた事が何度もある。



私は恐る恐る二人の顔を見た。

マリノさんもカイドさんも驚いたような表情を浮かべている。

「ブハッ、お前・・、凄いな。そんなに一気に喋れるヤツだったのか」

カイドさんは爆笑、マリノさんも笑いを堪えるようにクスクスと笑っている。

「はは、、興奮してつい・・」

良かった、二人の反応からして呆れられてはいないようだ。



「それで、それはジルサミアという鉱石なのか?」

笑いすぎて出た涙を指で拭いながらカイドさんが尋ねてきた。

「ジルサミア・・私は聞いたことはあるけれど詳しくは知らないわ」

「そうなんです。広い知識を必要とする保安官でもあまり知られていない、だけれど一部の人にはよく知られている鉱石なんです」

「お前はどうして知っているんだ?」

「私は王立学院の選択科目が鉱石学だったんです。だから試験の時に書架にある鉱石関連の論文を読み漁って・・、その時にジルサニアに似た名前と、その特徴的な効能に興味を持って覚えていました」

最終学歴にあたる王立学院の試験はとても幅が広く難易度も高い。

それをクリアする為に毎日遅くまで書庫に通い詰めていた日々を思い出す。



「ジルサニアと名前が似ているけど、同じ分類なのかしら?」

「そうですね。油分を秘めるという意味では同じです。ジルサミアにもジルサニア同様、多くの油分が含まれています」

「でもジルサニアは爆発するなんて聞いたことがないけれど・・」

「ええ、私もジルサニアは爆発はしないという認識ですし、実際そうだと思います。でもジルサミアは違う。ケパコスという鉱石と一定の割合で調合すると爆薬のような効果が出るんです」

鉱石学の最終試験を受験したのは数ヶ月前だ。

とはいえ専門家ほどの知識はない。

頭に詰め込んだ記憶の中の知識を辿りながら説明をする。



「ケパコス?聞いたことのない鉱石だな」

「そうですね、私達の国、オパール国では採石出来ない鉱石ですから」

記憶の中の知識を手繰り寄せる。

ケパコスは確かこの大陸の北方の鉱脈で採石できると記憶している。



「ジルサミアとその、ケパコスという鉱石と調合したとして、どの程度の威力なのかしら?」

「私も古い文献を読んだだけなので定かではありません。だけど爆薬に匹敵する威力、という印象を受けました」

「でもそんなに危ない鉱石、民間人が簡単に手に入れられるわけねぇよな」

カイドさんの言う通り、誰にでも入手することが叶ったらとても危険な事になるだろう。

「確かに・・、取り扱い・・、いや、でも・・」

試験の時、鉱石の作用のその先をどうして調べておかなかったのか、今更ながら悔やまれる。

一人でぐるぐると考えを巡らせていると、おい、と肩を掴まれてハッとした。



「どうした?一人でブツブツ言って」

「すみません。ジルサミアとケパコスはどのような取り扱いになっているんだろうと考え込んでいました」

「そこは気になるところだけれど、今考えても仕方ないから支部に戻ってから調べましょう。とりあえず今はどうやってここまで運べたのか、そのルートや痕跡、残留物も再度採取しておきましょう」

太陽が高いうちに出来ることは終わらせなければならない。

カイドさんは山を更に登り山頂からのルートを調べ、マリノさんは土砂崩れの起点となった穴を中心にその距離などを測定し、私は残留物の更なる採取を行った。

ケパコスは確か赤っぽい鉱石だったはずなんだけど・・

先遣隊が捜査し採取した鉱石の資料に赤い鉱石の記載はなかった。

いくつかの鉱石、土や粉砕された木々、数種類の植物も採取する。

必要な物はこれくらいだと思うんだけど・・




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