表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(5)聖ルキナス修道院

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/278

テレパシーの有効利用

のんきな風を装ってはいたけれど、ノエルは正直なところ、ドキドキしていた。

なにしろ、『オリテの元・王子様』と『ゼガルドの逃亡奴隷』を連れての亡命だ。

絶対に捕まってはならないが、極めて危ない。

だが、どれほど危ない橋を渡ろうとも、必ず国を逃れたかった。


(自分を慕って、ついてきてくれる若者を裏切っちゃあ、年取ってきた意味がないってもんだ)


晴天の空の下、決意を新たにノエルは歩みを進めていた。


(こいつらのことは、俺が守る。この命に代えても――)


前世の己の行動に、一つも後悔などしていなかったノエルは本気でそう思っていた。

眉間に皺を寄せてがに股で歩く青髯の厳つい冒険者を、向こうから来る旅人が目を合わせないようにしながら通り過ぎる。


ノエルの頭上で鳥が囀る。

「ピチチチ、ピチチチ」


隣を歩く猫は、5歩ごとに

「にゃあん」

と鳴く。


――非常に、わざとらしい。


ノエルは周囲に旅人の影が無くなったのを確認して言った。


「なあ、そのわざとらしい動物のフリ、やめてくれないか? すごく、気になるんだが」


黒猫のモルフェが言った。

「じゃあテレパシーを使うことにしよう」

「何だと、そんなことができるのか」

ノエルは驚いた。


「簡単なことだ。魔力を放出するんじゃなくて、歌を歌うときのように喉に集める。そして、語りかけたい相手を視界に入れる。相手に届くように魔力を流し込むイメージだ……ためしに俺がやってみよう。心の中に語りかけるんだ」

と、モルフェは言って、てちてちと歩いたまま、黙った。


暫し静寂が訪れる。

歩き続けていた一行の、頭の中に直接、モルフェの声が響いた。



(『レインハルトは……クソ野郎……』)




ノエルはバッと振り返ってモルフェを見た。

黒猫はしっぽを立てて、いっそ得意気に澄まして歩いている。


ノエルは呆然として言った。


「お前、ヤバイな……前から思ってたけど、ほんっと……あー……何というかだな……」

(『何だ、主。俺はヤバくなんてない』)

「いや、十分ヤバいよ……テレパシーって結構すごいのにさ、魔法なのに、……第一声が仲間の悪口ってそれはどうなんだろう?」

(『事実を言っただけだ』)

「俺巻き込んでケンカすんなよお前らぁ……って、レイン、静かだな?」


レインも大人になったのか、と思っていた矢先、モルフェの声が届く。


(『アイツは魔力がないから、いくらやりたくてもテレパシーはできねぇんだ。ははは、ざまあみさらせクソクソ王子様』)


「なんて口が悪いんだろうなモルフェェェ!? ちょっと黙ろう!? そして少しずつでいいから丁寧な言葉を使っていこうッ? なッ? おじさんからの忠告だ」


(『うっせーよ。ふふふふ、アイツはパタパタ、ばかみたいに俺の上を飛んでるが、アレしかできないんだ。なぜか? そう、俺が、猫で! アイツは鳥ッ! 捕食する側とされる側だ! ちなみにこのテレパシーはテメェにも送っているからなレインハルト! ハハーッ、悔しいだろう一方的に俺の声を聞かされて! つつきに来てもいいんだぜぇ、だが、俺は魔法も使える猫! そしてお前は剣を持てないた・だ・の鳥ッ! 優勢にも程があるなぁ!?』)


モルフェはルンルンと軽快にキャットウォークをきめている。

ノエルは頭を抱えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
二回目読み進めています。 だめだ、面白すぎて腹筋が筋肉痛になりそうです。
[一言] (ファミチキください)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ