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おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は婚約破棄と国外追放をくらいましたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(5)聖ルキナス修道院

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いざ変身

(信号機みてーだな……)


とノエルは思った。


赤・黄・緑の瓶に入った薬は、ノエルがプルミエから貰ってきたものだ。

あの図書館のような戸棚に入っていたときは小さく見えたが、今こうして手元にあると思いの外大きく感じられる。

ごくり、とノエルは唾を飲み込んだ。

モルフェが自分の口端に着いたパン屑を払い、あくびをしながら言った。

どうやらよっぽど眠たいらしい。


「おい、その前に確認させろ。これは何になるんだ? 効果はいつまでだ?」

「えっと、この中の二つが動物になるらしい。全員動物だと移動しにくいから、一人は人間のまま、髪の色や目の色が変わるようになってる」


レインハルトが目をこすりながら言った。

「俺がゼガルドに脱出したときと同じ薬かもしれません。俺はもともと髪も目も金でしたが、薬を飲んだら銀色になり、髪も伸びたのです」


ノエルはさらさらして艶のあったレインハルトの髪を見た。

普段は質の良い布のようなレインの髪は、今は見るも無惨に埃と泥を被っている。


「ふうん。だが、なら、そんな感じなんだろう。効果は七日だ」

ノエルはさらっと言った。

が、モルフェは見逃してくれなかった。

「なのかぁ? なんでそんな短ぇんだ? 万が一、騎士団や憲兵に見つかったときに、拘束でもされたら言い訳きかねぇぞ」

「俺の『対価』じゃ七日が限界だったんだよ。とにかくこれを飲んだら、すぐに出発する。明日の朝だ。一晩かかるらしいから、朝起きたら姿が変わってるはずだって」


ハッタリでは限界があったが、希望の糸はまだ切れていない。

七日経つ前に、レヴィアスに入国してしまえばこっちのものだ。


「おい、ノエルは人間用のを飲めよ。お前がイチバン常識的だからな。行動が」


モルフェにも非常識な自覚はあったらしい。

確かに秘密の暗殺者やら、ザ・王子様やらに比べれば、多少なりとも一般人寄りではある。


(一応、伯爵令嬢として育てられたんだけどなあ……転生者なんだけどなあ、俺)


納得いかない部分はあるものの、ノエルは素直に人間用の赤色の薬を手にとった。


「よし、いざっ!」

思い切り良く、ガラスの栓を引き抜いてごくんと飲み込む。

フローラルな香りがする。

後味はフルーツのようにさっぱりとして、さらりとしている。


(お、おお! あたかも高級梅酒のような、まったりとさっぱりの交わりッ! 鼻に抜けるふわりとした余韻ッ!)


後半、テイスティングのようになりながらも、ノエルは最後まで頂いた。


「よし! ってあれ?」


気付けば、もう限界だったのか、レインハルトとモルフェはウトウトと船をこいでいる。


「おーい! レイン! モルフェ! だめ! 今日だけはまだ寝ないで! 疲れてるのは分かるけど!」

「うお……ヤベー、マジで寝そうだった」

「思っていたより、疲労しましたね……」

「お前らまだ体汚れてるだろっ。ほら、はやく薬飲んで。共同浴場があるから行ってこいよ」


もはや、兄弟を持つお母さんの気持ちである。


「眠い」

「目が重いです」

「ほら、そこに座ってるともっと眠くなるから! ほら、薬!」


レインハルトとモルフェはそれぞれ手渡された薬を一口飲んだ。


「う……」

「に……」

「ウニ?」


高貴な美貌と野生的な色香が、仲良く叫んだ。


「うえええぇぇっっ!! まずううぅぅっ!!」

「にっっっっがい!!!」

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