修道院の魔女(1)
モデルは『カマルドリ』という世界最古の修道院です。
修道院までは二日かかった。
丘といえば聞こえはいいが、崖のような切り立った場所にあったので登るのに骨が折れた。
山脈に挟まれた、小高い森の中にサン・ルキナス修道院は位置していた。
500年の歴史がある修道院らしく、芸術品のような風格がある。
かつて神に身を捧げた修道士や修道女たちが創り上げた、美しい建築物だ。
積み上げた石の塀。
ぴっちりと隙間なく埋まっている。
「うわ~、すげーもんだな」
ノエルは感心して呟いた。
信仰心を守るためには、これくらい強固な建造物を残さなければいけないのかもしれない。
「中の建物はもっとすごいですよ」
レインハルトが得意げに言った。
「すべての建物のステンドグラスには、オリテの名産の色付きガラスを使っています。この石の塀の内は信者や巡礼者のための祈りの場と、修道士たちの住宅地や教会に分かれているんです」
石の塀に沿って歩きながら、レインハルトが説明した。中は隠者と呼ばれる修道士たちの庵、巡礼の信者を迎える宿坊、大きなホールや図書館、そして調剤所が併設されているらしい。
「小さな街みたいだな」
と、モルフェが言う。
「ああ。ここは別名、薬師の隠れ里というんだ」
レインハルトが答えた。
「ここは修道士たちの自治で成り立っているので、たとえ王族でも許可なくしては入れない」
石の塀の終わりが来て、鉄格子がはまった厳めしい門が現れた。
修道服に身を包んだ男が二人、門の両側に立っている。
「巡礼の方はこちらへお願いします」
門番のような役なのだろう。
右側のトロールのような男が、太い腕を上にあげて呼びかけていた。
「これ、どうすればいいんだ。通行証なんかないぞ」
ノエルは心配して、レインハルトに尋ねた。
持っているのは、ノエルの『国外追放に関わる証明書』だけだ。
「俺も、偽造のゼガルドからの通行証だけだぜ」
と、悪びれなくモルフェが言った。
門番がジロッとにらんだ気がする。
ノエルはモルフェにシイッと静かにしているようジェスチャーをして、レインハルトに言った。
「あのさあ、レインさん。俺らが万が一にもオリテの兵にここで捕まるとか、そういう可能性はないんだよな?」
「ええ、まあ……たぶん」
「たぶん!?」
「おそらく」
たぶんとかおそらくでは困る。
絶対という言質が欲しかった。
そんなとき、前に並んでいた列の中から大声が聞こえた。
何か騒いでいるようだ。
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