表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(5)獣人の国レヴィアスへ ヒロインが令嬢なんて誰が決めたんだ?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/278

魔法の真の姿

モルフェはノエルに昨夜、一つだけ実践的な魔法を教えてくれた。

詠唱しなくても魔法の使えるモルフェと違い、ノエルは呪文がないとうまく魔力を発現できなかった。


まずは落ち着いて、魔力を集める。

胸元に込み上がるエネルギーを掌に集める。

ここまでは同じだ。


土気色の顔をしたコボルトが噛みつこうと飛びかかってくるのを、レインハルトが剣で防いだ。


「ありがと!」


今度は自分の番だ。ノエルは張り切った。

モルフェは戦うつもりはないようで、横でのんびりと見ている。


ノエルは元気よく詠唱した。




「アクア・ブレード!」



水の刃という意味の呪文。


こつは手裏剣のように小さな刃の塊を飛ばすこと。

モルフェから聞いたポイントを頭の隅で反復する。


レインハルトを押しつぶしそうになった、あの水爆弾のような惨劇はもうこりごりだ。

この訳アリ青年たちとの旅が始まったのだから、自分も保護者らしいところを見せてやりたい。


「攻撃魔法、使いこなせる俺を、とくとご覧あれ!」


ノエルが放った水の刃は、硬いボールのようにコボルトに向かって放たせれた。

そして途中で平たく形を変えると、薄くなり、そして――。



「グア……」


スパッと、コボルトの首と胴体とが離れた。

本体も一体何が起こったのが気づいていなかっただろう。

切れ味が抜群だ。


地面にコボルトの赤い血がどろっと染み込んでいく。

モルフェの足に偽の血として塗られていたのと同じ色だ。

乾くとブドウ色になって、どす黒い赤になる。

鉄臭い匂いが辺りに漂った。



ノエルはうまくやれた達成感を抱いていた。

しかし、思ったよりもそれ以上に、命のあるものを殺してしまった感覚が手に残っていた。


やらなきゃ、やられてたんだ。


噛みつかれていれば、人間に悪影響をもたらす菌や魔力がうつるリスクがある。

魔獣は切り捨てていい。殺していい。

殺していいはずだ。


(本当に?)


ノエルは氷の刃を放った自分の手をじっと見た。

白くてマメもない、綺麗な手だ。

貴族の女らしい、たおやかな手。




「牛や豚や鶏もこうやってシメるんだ」

と、モルフェが言った。

「お前らは知らねぇだろうがな」




レインハルトはフンと鼻で笑う。

「知らんな。俺は剣だけでウサギを殺してきた」

「ハハッ、お貴族様のご趣味ですか」


ノエルは思わず間に入った。

「モルフェ。レインはさ、オリテから逃げて来たんだよ。12のとき、一人で……レインは、こう見えて、貴族じゃないんだ。そりゃ今は俺と、兄弟のふりしてるけど……これはふりで、」


レインハルトは挑発するようにモルフェに言った。

「親ナシ、身寄りナシ、のカワイソウな『平民』はお前だけじゃないってことだ」

「フン、くだらねぇ」


モルフェは憮然として、興味をなくしたようにコボルトに近寄った。


「さすがにこいつは食えねぇな」

と言って、まるで虫でも払うように、転がったコボルトの頭部を足で道の端に寄せた。





「ああ、そうか……」


その瞬間、ノエルは悟った。

なぜ、学院の教科書にはのっていない呪文ばかりをモルフェが知っているのか。




貴族は、生命の生死に直接関わらない。




戦争は兵士のすることだ。

獣を屠るのは冒険者のすることだ。

料理はコックのすることだ。

葬儀は神父の仕事だ。



『伯爵令嬢』として生きていれば知らないはずだった呪文。



ノエルは命を奪う呪文を唱えた自分の桃色の唇にそっと触れてみた。

髭でちくちくした男の分厚い唇ではなく、やわらかくて頼りない薄い皮膚だった。




「おい、地図によるとこの先の街道には宿屋がほとんどない。夕方までこのまま歩くと、今夜は野営することになるぞ」

モルフェが上に上った太陽を見て言った。

「近くに泉がある。今のうちに汗を流しておくか」



ノエルはレインハルトと顔を見合わせた。


そういえば、モルフェに『ノエルが女の身体』であることを伝えていない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ