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おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(3)ノエルとレイン オリテ国境へ

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その頃、王宮では


ゼガルド王室の内部は、第二王子の軽率な行動によって大きく揺れていた。

第二王子エリックが一方的に、ブリザーグ家の伯爵令嬢ノエルとの婚約を破棄したことは、政治的なバランスを大きく崩す出来事となってしまった。

王室内だけでなく、国内外の多くの貴族からの批判の声が高まっていた。


王宮の豪華な会議室では、王族と高官たちが緊急会議を開いていた。

全員の表情は厳しかった。

室内の空気は緊張と苛立ちに満ちていた。


「これは、単に家族間の問題では済まされませんぞ」

高官がひげをなでつけながら言う。

「ただでさえ、ゼガルドとオリテの間は緊張関係が続いている。両国間の緊張が高まっている今、なぜ国内が混乱することをしたのです」

高官はこの場にいないエリックを糾弾した。

本人はソフィソフィで話にならないとして自室で謹慎させられている。


「真面目で無口なやつだと思ってはいたが……」

王はため息をついた。


「ブリザーグ伯爵は王室との強固な絆を期待していた。婚約破棄はその信頼を根底から覆す行為だ。伯爵家は先代が鉱山で儲けた莫大な富がある」

「ああ。それにノエル様だって」

別の声が加わる。


「そうだ。魔力石が光るほどの魔力を持ちながら、文武に長けた令嬢だった。それを国外追放などと」

「伯爵は烈火の如く怒っておられるぞ」

「それも然り」

「伯爵がオリテの別荘地を探されているとの話がある」

「もしや国を抜けてオリテへ!?」

「これは一大事ですぞ」

「有力貴族がオリテへ行くとなれば、国中の勢力が全部変わってしまう」


王は深くため息をつきながら、重々しく頭を下げた。

「愚息のために申し訳ない。だが、我々はこの事態を正すために何か策を講じなければならん」

高官たちは難しい顔で咳払いをした。


「エリック様の行為は個人の判断であり、ゼガルド王国全体の意志ではないことを明確にする必要がありますな」

「ええ。オリテとの関係以上に、伯爵家との関係をこれ以上悪化させてはいけません。あの鉱山は、オリテとの国境に位置している。万が一伯爵家がオリテに寝返ったら」

「いっそ処刑してしまっては」

「理由もないのにか」

「うーむ……さすがに国民が納得しないだろうよ」

「暴動でも起きたらコトだな」


会議は紛糾した。

が、話し合いの末、最終的な結論はなんとかまとまった。


「では、伯爵家に対して公式な謝罪を行い、第二王子の行動がゼガルド王国全体の意志を代表するものではないことを強調していく、ということでよろしいかな」

「異議なし」

「異議なし」


この決議によって、第二王子は完全にゼガルド王室の『お荷物』と認識された。

本人はそんなことを知ってか知らずか、自室でのうのうと過ごしていたが――。







「どうして保留なのよ!」

男爵令嬢ソフィーは丸テーブルに乗っていたクッキーやティーカップをなぎ払った。

メイドはヒッと息をのんで逃げていく。


おかしい。婚約が、保留になるなんて。

王子のフィアンセになったというのに、周囲は全然ソフィーをちやほやしてくれない。


殿下の父親であるゼガルド王に会ったときも、ソフィーは愛らしい子猫のような態度をとったのに。


「こんにちは、王様! ソフィーです。エリック様のお嫁さんになります!」

とご挨拶をしたのに。


「レディ。私たちは理解しようと努めた。だが、この決定は王家にとっても国にとっても多大な影響を及ぼすものだ。王族の婚姻というのは国家の未来を形作る上で重要な役割を果たすものなのだ。愛情だけで決められるものではない」


「父上! ソフィーは賢く、心優しい女性です! 彼女こそが私の伴侶にふさわしい」

エリックは情熱的に反論した。

自分に夢中の王子をソフィーは好ましく思っていた。


「殿下ぁ。ありがとうございますっ……でも、大丈夫! ソフィー、みなさんにわかってもらえるように頑張ります」


エリックはソフィーの髪を優しく撫でてくれた。

王様も困った顔をしていたけれど、すぐに分かってくれるだろう。

だって、ソフィーはこんなに可愛い娘なのだから――。


「お待ちになって、レディ」と、針で刺すような声がした。

大きくはないのに、明確な攻撃性を感じさせる声だった。

ゼガルド王妃が柔和な笑みを浮かべながら発言した。


「大丈夫、かどうか判断するのは我々です。それをゆめゆめ、忘れないように」








(あっのクッソババァ!)


ソフィーはティーカップを粉々にしながら、口汚く、内心で蔑んだ。



(うぜぇうぜぇうぜぇっ! うぜぇんだよっ! 誰が好き好んでこんな三文芝居うってると思ってんだ! 仮にもフィアンセなんだろ? 王室の! もっと敬えよ! 崇めろよ! 称えろよ!)




ソフィーの目はぎらついていた。

メイドもいなくなった荒れた部屋で、ソフィーは息を荒げながら、自分の立場をさらに押し上げるにはどうすればいいか考えていた。

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