オリテの情報収集
職場でインフルやらコロナが流行ってますが皆さんお元気ですか。私はしばし精神と時の部屋に入るので、感想返信が滞ります。豆腐フィジカルですみません… おっさんの話が一段落つきましたら返します!
イーリスの言葉に、部屋の中が一瞬静まり返った。
モルフェが深く息を吐き、レインハルトは無言で窓の外を見つめた。
レインハルトの美貌には余裕が浮かんでいるように見えるが、内心では誰よりも緊張感を抱えているはずだ。
オリテはレインハルトにとって神聖で因果な土地だ。
ノエルはゆっくりと宿屋の部屋の中央に歩み寄り、口を開いた。
「バルナバスについての情報を集めるには、まず彼の手下たちの動きを掴まないといけない。町の中で目立たないように動きながら、情報を集めるのが最善策だろうな」
「ああ。それで、どうやって情報を得るんだ?」
モルフェが目を細めた。
「俺はこんな気難しいお姫さんと街歩きするのは御免だぜ」
モルフェは常に気を使わなければならない状況にうんざりしていた。
ノエルは腕を組んだ。
この五人のうち、過半数が女の身なのだ。
一人は生まれついての美少女。
一人は変化薬のセクシー美女。
一人は麗しい女装。
しかし全員が『心は男』というのは共通している。
まるで男子校の文化祭のようだ。
そこに、獣人の少年のニコラ。
どう逆立ちしても女には見えない、というか堅気には見えない元暗殺者のモルフェ。
「全員兄弟姉妹ですってのは、さすがに無理があるよなあ」
とノエルは乾いた笑いをこぼした。
「このわがままお姫さんと俺に共通項があると思うのか?」
モルフェが抗議した。
イーリスがふっくらした唇を開いて言った。
「西のレヴィアスからオリテに流れてきた冒険者ということにしましょうか。まず、宿の周りを歩いてみるのがいいです。町の噂や誰かが話していることに耳を傾けるだけでも十分。街の住人たちは、しばしば重要な情報を無意識に漏らしますからね」
イーリスは立ち上がり、楽しげに言った。
「私は市場の方へ行って、商人たちと少し話してみましょう。お金が絡む話題なら、意外と色々と教えてくれることが多いですからね」
「俺は街の裏通りを見て回る」
モルフェが肩をまわした。
「表じゃ話せない情報が転がってるかもしれねえ」
「僕は生活用品を集めましょう。食料や薬や……買い物をしながら世間話をしてみます」
ニコラがにっこりした。
「おいしいグレッドもあるかもしれません」
「俺もニコラと一緒に行こう」
ノエルが言うと、モルフェがにやついた。
「お前、グレッドにつられたな?」
「いや、ちがうって! ニコラだけじゃ心配だろ、攻撃魔法使えるからな、俺も一応!」
そう言いながらも、ノエルの頭の中には、ほかほかに焼きあがった未知のグレッドが、良い匂いをさせて整列し始めていた。
「俺は……」
「レインはここで待機だな」
ノエルの言葉にレインハルトは不満そうに顔をあげた。
が、すぐにため息をついた。
「仕方ないですね、今回ばかりは」
ノエルは頷き、パンッと手を叩いた。
「それぞれが情報を集めたら、またここで合流して報告し合おう」 と続けた。
その時、レインハルトが静かに口を開いた。
「その前に、俺も少し準備をしたい。何か、俺にできることがあれば言ってくれ」
「ナンパのあしらい方くらいじゃねえか?」
モルフェはニヤニヤと提案した。
食事係をかって出たレインハルトが、モルフェの食事だけ冷えたココナッツスープを出したのは言うまでもない。




