オリテの歴史書(外伝より)
オリテの歴史書
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やがて、稀代の歌手とその妻フランとの間には、二人の息子と一人の娘が生まれた。
子供らは、ラソに近い森の中で育った。
一人は雄々しく、料理が上手い、筋骨隆々とした男に育った。
もう一人は女のような男で、薬草の調合が上手くて魔力は莫大だった。
最も歌が上手かったのは末の娘だった。
その美しい娘は、マリと言った。
マリは、シーアンというオリテの第一王子に見初められ、オリテの王家に嫁いだ。
成長し、王となったオリテの王シーアンは、側室を持たなかった。
シーアンとマリの間には何人かの子供が産まれたが、皆、娘だった。
シーアン王は美しく歌の上手いマリをこよなく愛した。稀代の歌手を父とするマリは、澄み渡る美声を持っていたという。
オリテの王シーアンは、当時のゼガルドの王の政治理念に共感し、ゼガルドと協定を結んだ。
その友好の証として、シーアンとマリの長女ターリャはゼガルドに嫁いだ。
次女マーニャはオリテの女王として即位した。
三女、四女はオリテの臣下として仕えた。
オリテの女王マーニャはやがて、婿をとった。
婿の名はレオポルド。
そして、婿の弟はバルナバスと言った。
レオポルドとオリテの女王マーニャは、仲睦まじく良い夫婦だった。
穏健派として、平和のために尽くす治世が民に受け入れられた。
レオポルドとマーニャの間には、美しい王子が産まれた。
まるでエルフのような、黄金の玉のように光り輝く王子には、勇敢な獅子の心という意味の、レオンハートという名が付けられた。
レオンハートは、レナード王子の愛称で民に愛され、
……
歴史書はここで破かれている。




