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おっさん令嬢  作者: 丹空 舞
(2)ノエル15歳 婚約破棄と国外追放

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20/278

オリテ領

ひたすら山道を歩いて、関所につく頃には夕方になっていた。


「前へどうぞ」

「はい」


ノエルは返事をして前へ進み出る。

王城から送られてきた『国外追放書』と一緒に、父親のコランドの『爵位証明書』、身分を表す伯爵家の家紋の入ったブレスレットを番人へ渡す。


「ほう……伯爵家の御子息ですね。失礼いたします。そちらのお連れの方は……」


兄、と言いかけて、ノエルは口をつぐんだ。

書類では証明できない。

変に言い訳をすれば怪しまれる。

どうすれば不自然じゃないか……国外追放になった伯爵令息についてきた若い男……。


「護衛のレインハルトです」

門番はじろっとレインハルトを見た。

フードを目深にかぶった若い男は、姿勢もよく礼儀正しく目礼する。

そのあたりのゴロツキとは違った気品があり、伯爵家の護衛というのも頷けるーー。


「ふむ、良いでしょう。下まで降りればすぐにオリテの領地です。宿屋がありますが、悪どい商売をしている輩もいるようですから、お気を付け下さい」


ノエルはほっと息をついた。

武器を持った門番たちは物々しい。

ここは中立地なので、ゼガルド側、オリテ側ということはないが、なんとなく背筋を伸ばさなければいけないような気持ちになる。


「新たな場所での幸運を」

「ありがとう」


木の簡素な門をくぐり、ノエルはレインハルトとオリテ領に入った。

返してもらった書類とブレスレットを鞄の奥にしまう。ここからは、ただの平民の兄弟だ。


「ついに、国外追放だな」

「……ええ」


レインハルトは山を下りながら、浮かない顔をしていた。

ノエルはその背中を、バンッと叩く。


「うわっ! 何なんですか」

「おい。忘れてんじゃねぇぞ。お前は俺の?」

「……兄、です」

「うし。お綺麗な言葉も品の良さも、身分を偽るのには邪魔になるんだからな。平民らしくしろよ」

「あなたは、生まれてからずっと貴族として暮らしてきたはずなのに、どうしてか時々ひどく平民らしいときがありますね」

「えっ? いや? 全然?」

「目が泳いでますよ」

レインハルトは涼しい顔で言ってのける。


「そういうお前だって、何か隠してるよな」

ノエルは坂を下りながら、レインハルトに話しかけた。

「お前は他のやつと違う。貴族の学院でいろんなやつを見たけど、お前の所作はそいつらと比べても遜色無い」

「またまた、かいかぶりすぎですよ。ほら、宿屋が見えてきた。ここからはオリテ領です。僻地とはいえ、村人はいますから気を付けて……もうすぐ着きます……じゃなかった。着くよ、ノエル」

「ああ」


ノエルは眼下に広がる、寂れた田舎町を眺めた。

ここが、新しい生活の拠点になるのだ。

頼れる者は己と、この涼しい顔をした謎の多い『兄』だけだ。

とりあえず今日は宿屋に泊まって、旅の疲れを癒やそう。

その時、何かが山道の木陰から飛び出してきた。


「ギイィィィッ!」


それは2対の大きな植物だった。

壺のような形で、黄色と紫と緑が入り交じったような気色の悪い色をしている。


「マンイーターだ!」

レインハルトが叫んだ。

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