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おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(14)激ヤバ侵略国ロタゾ編

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モルフェの場合2

「で、なんで俺がお前と一緒にピクニックしてるんだよ」


モルフェは不機嫌を隠そうともしないで言った。

ここはタルザールの城下、リーヴィンザールの宮殿に併設された庭園である。


ロタゾとの戦いを控えた身だというのに、どうして男二人でのんきにピクニックをしなければならないのか。


リーヴィンザールは無駄に色気のある蒼い瞳を細めた。

レインハルトとはまた違った角度の美丈夫で、その事実がモルフェの不機嫌の火に油を注いだ。


「いややなあ。これも打倒ロタゾのためやん。モルフェを頼むぞってノエルに言われとんねん」


「だ・か・ら! それはそうとして、なんで花を見ながらサンドイッチなんだ!? オランジュのジュースなんだ!? 特訓はどうなったんだ? まさかこれで終わりなのか!?」


「いややなあ、せっかちな男は嫌われんで。おやつがわりやんか」


「付き合ってられねえ。俺はもう城に戻るぜ」


「ちょっと待ちい。なんでわざわざ庭園に来たと思うとるんや」


「なんでって……」


モルフェは言葉に詰まり、リーヴィンザールを睨みつけた。


リーヴィンザールは微笑みを浮かべたまま、サンドイッチをひとつ手に取る。そして、ゆっくりと口元に運んだ。


「ここはただの庭園やないで、モルフェ。この場所には特別な力が宿っとるんや」


「特別な力だと?」

モルフェは眉をひそめた。

「冗談を言っている場合じゃねぇぞ」


美しい庭園だが、ゼガルドの王宮にあった花壇とたいして変わりない。

ここに何があるというのだろう。


リーヴィンザールはカラカラと笑った。

「いややなあ、冗談でこんなこと言わへんわ」


モルフェは目を細めた。

「信じられねぇが……詳しく聞かせろ」


リーヴィンザールは少し笑って、肩をすくめた。

「信じる信じないは別として、備えは万全にしたいんや。ロタゾとの戦いには、最高の状態で挑みたい。モルフェ、自分もやろ?」


モルフェはしばらく考え込んだ後、ため息をついて座り直した。

「……お前がそこまで言うなら、付き合ってやる」


リーヴィンザールの蒼い瞳が一瞬、真剣な光を帯びた。


すると、庭園の静けさが一変し、緊張感が辺りを包んだ。


リーヴィンザールは、さっきまでの穏やかな雰囲気を捨て去り、鋭い眼差しでモルフェを見つめていた。


「まずは基礎からや。今から教える技は、力だけじゃなく、心の集中も必要やからな」

とリーヴィンザールは言い、ゆっくりと両手を広げた。

リーヴィンザールの両の腕についているブレスレットが光り始める。

モルフェは黙ってその動きを見守った。


リーヴィンザールの手のひらの間に、次第に青白い光が集まり始めた。

その光は庭園の花々のエネルギーを吸い込むように輝きを増し、やがて一つの青い球体となった。


「お前、魔法は使えないと言っていなかったか?」

と、思わずモルフェは訊いた。


リーヴィンザールは首を振った。


「ああ。自分の体内エネルギーを使うことはできん。せやけど、同じようなエネルギーを創り出すことはできる」


モルフェは黙り込んだ。

分かるような分からないような感じだ。

何より説明が難しすぎる。


「このブレスレットについている魔石は『蒼焔球そうえんきゅう』や。ロタゾに対抗するために必要な力の一つやけど、完全に制御するには相当の集中力がいる。モルフェ、お前にもできるか?」


モルフェは怯むことなく、リーヴィンザールに頷いた。

「知らねぇけど、ま、やってみる」



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― 新着の感想 ―
[一言] 今のモルフェなら大概のことならできそう!!
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