表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(14)激ヤバ侵略国ロタゾ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

182/278

数じゃない

ノエルは息を詰めたまま、ティリオンの言葉を飲み込んだ。


「八千……」


敵はおよそ八倍の戦力だと聞いて、その場にいる全員が息を詰めた。


「それに未知の兵器、か」

と、ノエルは低く呟いた。


ティリオンは腕を組み、難しい顔で思考を巡らせている。

彼の鋭い目は、瞬きもせずに空間の一点を見つめていた。

重苦しい沈黙が部屋を包み込んだ。


張り詰めた空気に亀裂を入れたのは、やはりリーヴィンザールだった。


(死線を潜ってきた人間たちは、やっぱり若くてもしっかりしてるなあ)


と、一度死んだことのある人間の側であるノエルは彼らを見守った。


「ティリオン、ロタゾの兵器ってどんなんか分かるか?」

リーヴィンザールが口を開き、ティリオンに問いかけた。


ティリオンは一瞬目を閉じ、再び精霊の青い光を凝視した。

「まだ正確には掴めていない。ただ、我々の知識を超えた技術か、魔法か……何か異質なものだということは確かだ。ルルもそれ以上は近づけなかった」


「異質な……」

リーヴィンザールの眉が微かに動き、その表情に僅かな苛立ちが見えた。

「まるで、お伽話の怪物のようやな。けど、ここに勇者はおらん。実際に戦わなあかんのは、俺たちと生身の人間たちや」


ノエルは肩をすくめ、レインハルトを見た。

「どうする?  八千の軍勢に対して、俺たちができることって……」


「単純に戦力だけ見れば、厳しいでしょうね」

レインハルトが厳しい表情を緩め、ノエルの目を見据えた。


ふむ、とノエルは首を傾げた。

前世の記憶をたぐり寄せる。

「なあ、たとえばさ。五人で四十人を相手にするってとき、大事なのはタイミングと作戦と……入念な準備だ」


美少女の肩まで伸びた紅い髪が、さらりと揺れた。

つやつやした唇から物騒な言葉が出るが、この場の男たちは誰も動じない。


「戦力だけを見れば、確かに劣勢だ。しかし、戦いってやつは数だけで決まるもんじゃねぇよ。いいか、ここに集った俺たちには覚悟がある。それに、レヴィアスやタルザールの民、獣人たちもいる。単一民族だった我々のために連携を深めれば、勝機は見出せるはずだ」


「そうやな、ノエルの言う通りや」

リーヴィンザールも頷き、ノエルに微笑みかけた。

「そもそも、今回はロタゾを皆殺しにするために戦うんやない。エルフたちが生き延びるため。良い未来を掴むために戦うんや。数の差なんて関係あらへん。やらんといかん。ロタゾは放っておけば、もっと周辺に手を伸ばしてくる。俺らも人ごとじゃないねん。いや、俺らじゃないとできん。レヴィアスとタルザール、ラソの三国が今こそ団結するときなんや」


感動的な言葉だった。

が、ノエルはリーヴィンザールの頭の中には、

(こいつ、魔石の公算があるな)

と思ってあまり感情移入できなかった。


しかし、レインハルトとモルフェは感じ入ったようだった。

真剣な瞳で頷く彼らを見てノエルは表情を緩めた。


(まあ、何だっていいさ。ティリオンには借りがある)


ノエルは胸の内に再び力が湧き上がるのを感じた。

これまで幾度も逆境に立たされ、そのたびに彼らと共に乗り越えてきた。

今度も、きっと同じだ。


「わかった。やろう」

レインハルトは力強く言った。

「俺たちのやり方で、この戦いを乗り越える」


リーヴィンザールが微笑み、肩に手を置いた。

「その意気や。共に戦おう、仲間よ! 慈悲も無いロタゾにこの大陸を渡すわけにはいかん」


モルフェが言った。

「明日にでも戦えるぜ」


リーヴィンザールは高らかに笑い、拳を握りしめた。

「よっしゃ!  俺たちの力を見せつける時がきたな。気合いは十分。やけど、ノエルが言ったように、念入りな準備が必要や。やるべきことは山積みやけど、まずは兵の士気を高めることやな。連合軍全員に、覚悟を決めさせなあかん」


その時、ティリオンが静かに口を開いた。

「まずは、我々の戦力を再編成する。そして、可能な限りロタゾの兵器の詳細を探る。それがこの戦の鍵となるだろう」


彼らは頷き合い、部屋を後にした。

複数の足音が廊下に響き、やがて静寂が戻る。

青い光を放つ精霊ルルが、再び淡く輝きながらティリオンの後を追った。


外には既に夕暮れが迫り、赤く染まった空が僅かに不安な影を落としていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ノエルは気合十分でも物理的には作戦次第でしょうね~
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ