戦闘力
レインハルトの話によると、東西を合わせたレヴィアスの人口はおよそ50万。
ただし、そこには乳幼児や女性、高齢者も勿論数に含まれており、兵士や傭兵として戦える者は限られているとのことだった。
レインハルトが言った。
「なにしろ、殆どは西レヴィアスで農業や観光業に従事していた者ばかりです」
たしかに、一部の東レヴィアスの住民を除いて、ほとんどが元々の西レヴィアスの住民だ。
兵士として訓練されているわけではなく、普段はほそぼそと日用品や食品を売ったり、リゾート産業にせいを出している人間ばかりなのだ。
「となると、戦力になるのは、獣人騎士団だが、あいつらは……何人いるんだっけ?」
レインハルトが淡々と言った。
「そうですね、三十人くらいでしょうか」
「さんじゅ……少なッ!」
ノエルは目を見開いた。
前世の学校の定員でさえもう少しいたような気がする。
そんな戦力で勝てるのだろうか。
「待てよ、じゃあ俺たちの今のところの戦力って――、多く見積もって900くらいか?」
ノエルは愕然とした。
対するロタゾの戦力はどれくらいなのだろう。
(小国ならば勝算があるかもしれないけど)
レインハルトがノエルが不安そうにしているのを感じ取ってかフォローに回る。
「常時、騎士団として訓練をしているのは確かに少数です。しかし、獣人は身体能力が高く、町人でも何かしらの秀でた力があることは多いです」
エルフの侵入に気が付く町人がいるのだから、それも然りだ。
リーヴィンザールが言った。
「タルザールのやつらは……百人強ってところやな。何しろうちはほとんどが商人の国や。他国の情報や物資はよお集まるけど、戦闘訓練を積んでるのは俺に仕える奴らくらいや」
そうはいっても、リーヴィンザールに忠誠を誓っている荒くれ者が百人もいるというのだから驚きだ。
リーヴィンザールはおまけに付け足した。
「宮殿で働いてるやつらは他にもおる。下働きみたいなことをしてくれとるやつらや、文官やら魔道具の担当、時計師なんてのもおる」
「ふうん。たくさん働いてるんだな」
ノエルは素直に感心した。
確かに民に慕われているとは思ったが、不毛の地を整備して国を拓いたのだから、亡命者というよりも革命家のようなものだろう。
「せやな、千五百人くらいやな」
リーヴィンザールはさらりと言った。
それだけが自分のために動くのを何とも思わない。
だからこそ独裁者たりえるのだ。
ノエルは心中、リーヴィンザールの資質に舌を巻いた。
それでいて人なつっこく、人当たりが良いところがリーヴィンザールの凄いところだ。
「ふーん。じゃあ、俺たち連合軍全員の戦力は……」
レインハルトが言った。
「ざっと考えて、千人」
ノエルが首を傾げる。
「それって多いのか……?」
その時、青い光が戻ってきた。
外地調査にやってきていたティリオンの精霊、ルルだ。
ティリオンは難しい顔をして、青い光をじっと見つめていた。
レインハルトがハッと息をのんだ。
「ど、どうしたんだよ……」
思わずノエルが心配になると、ティリオンが良く響く低音で言った。
「ロタゾの戦力が分かった。相手は、八千。それに、訳の分からない兵器が一ついるらしい」




