表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(14)激ヤバ侵略国ロタゾ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

174/278

ネズミ退治

ノエル、レインハルト、モルフェ、ティリオン、そしてリーヴィンザールの五人は、タルザールの庭園に集まっていた。


リーヴィンザールは軽装で、庭園の奥の扉に皆を案内し、にっかりと笑った。


「よし、鍵は開いたな、と……ここから地下道に繋がっとる」

「地下道の先はどうなってるんだ?」

モルフェが暗い地下への階段をのぞき込みながら言った。


「俺の酒屋に繋がっとる」

と、リーヴィンザールが言った。


「さて、魔鼠はどこにいるんだ!?」

ノエルは気合いいっぱいに、右足を踏み出した。


「少し待って下さい」

と、レインハルトが進もうとするノエルの両肩を後ろから留めた。


「なんだよぉ」


「まずは情報収集ですよ。魔鼠の巣の場所や、どのくらいの数がいるのかとか、詳細を把握する必要があります」

とレインハルトが提案した。


階段のほこりっぽい空気を入れ換えながら、リーヴィンザールが言った。

「でもなあ、魔鼠は魔法を使ってくる厄介な敵やねん。普通の人間やと、全体を把握するんは難しいかもしれへんなあ」


ティリオンが前に進み出た。

「それなら、我々エルフの精霊たちの力を借りよう。精霊は魔法に敏感だから、魔鼠の動きを察知することができる」


「それは頼もしい」

とリーヴィンザールが頷いた。

「では、ティリオン、頼む」


ティリオンは静かに入り口に立った。

目を閉じ、心を澄ませて精霊たちとの交信に集中する。

周囲の混乱をものともせず、深く息を吸い込んだ。

そして、胸の奥底から力強い声で叫ぶ。


「精霊ルルよ、我が声に応え、この地に舞い降りよ!」


その瞬間、ティリオンの手に向かって、風が吹き込んだように見えた。

次第に風は激しさを増し、手の中から青い光が溢れでる。


「ルル、魔鼠がどこにいるかを教えてくれ」

すると、地下に続く階段に青い光が飛び込んで行った。


「よし。これで精霊が先に地下を探索する。精霊の声が聞こえるのはエルフだけなのだ。戻ってきたルルの言葉を俺が通訳しよう」


「さすがだ、ティリオン」

とノエルは微笑みながら言った。


後ろでレインハルトが変な顔をしている。

それは微妙な表情の違いだったが、ノエルはめざとく気が付いた。


「どうした? レイン」

「ああ……いや……疲れてるのでしょうか……なんだか幻聴が聞こえて」

「耳鳴りか? 大丈夫か?」

「いえ……はい、平気です」


「エルフの力ってすげー」

と、モルフェがどこかのゲームで聞いたことのあるような、素直な感想を漏らした。


ティリオンは僅かに微笑んで言った。

「さあ、共に戦おうぞ。我々の絆と力で、魔鼠とやらを一網打尽にするぞ」


その言葉に皆が頷いた。


リーヴィンザールが魔石で明るくしたカンテラを持って地下道を歩く。

ノエルとモルフェは魔石の代わりに魔法で光を点した。


「ほな、いこか」

というリーヴのカンテラの中に紅く光る魔石を見て、ノエルはじんわりと嫌な予感がした。


「なあ、あのさ、リーヴさ……その、魔石なんだけど」

「おん?」

「あの、ルーナ……俺たちの仲間から、『紅い魔石は人間の生命エネルギーで動く』って聞いたんだけど……あの」

「ああ、そんなことか」


リーヴィンザールが笑うので、ノエルもつられて笑顔になった。


「そうや。というか、言ってなかったか? 紅い魔石は人間の寿命削って動くんやんで」

「わあああああ! ダメ! ダメ! こんなので命を安売りするなッ」


じたばたするノエルの頭に、リーヴィンザールはポンッと手を置いた。


「あのなあ、寿命っていうのは要するに、体力や」

「へ?」

「ライフポイント、みたいなことや。俺らは魔道具作りが得意な国民やったって言ったやろ? もちろん、紅い魔石が人の体力を奪う、使いすぎたら死んでしまうことも織り込み済や。やから、回復可能な量に留めてるねん」


「ほあ〜……そうなのか」


「無理な出力なんてしたらほんまに死んでまう。でも、ちょっと灯りをつけるくらいは、まあ、その辺の山に登山してるくらいのもんで、一晩寝れば回復する。メリットとデメリット天秤にかけて、計算してつこうとるから心配いらんで」


ノエルはあからさまにほっとした。

こんな、魔鼠退治の前に、カンテラで寿命を縮めるなんてイヤ過ぎる。


「この紅い魔石の仕組みを教えてくれたやつがいてな……俺の悪友や」

リーヴィンザールは昔を懐かしむように、歯を見せて笑った。


(こうしてみると、魔力持ちってなんつーか、便利なんだなあ)


ノエルは手を握りしめてまた開いた。


生まれついて、これが普通だと思っていたから気付かなかった。

やはり、ゼガルドに閉じこもっていては分からなかったことが、最近はいろいろと見えてくるようになった。


精霊のルルが帰ってきて、ティリオンの右手の中に飛び込んだ。


「ありがとう、ルル」


ティリオンはためらわずに光をわしっと掴むと、尻のポケットに入れた。


ノエルが尋ねた。

「なあなあ、精霊、なんて?」

「この先に、魔鼠の巣があるようです。その数、数十匹、いや、数百匹かもしれぬと」

「うわああ……」


背筋がぞわぞわする。

数百匹の魔法が使えるネズミなんて、へたすればこの地下道が壊れてしまうのではないだろうか。


「ん?」

またレインハルトが変な顔をしている。


「どうしたんだ、レイン」

「それが、あの青い光から声が聞こえるんです。おかしいな」

「レインにも精霊の声が聞こえるってことか!?」

「どうやら、そうみたいですね……」

「ってことはさ、お前、エルフじゃん?」

「エルフ!?」


ノエルとレインハルトは顔を見合わせた。

なんとなく不思議な感じだ。


「でも、俺は耳も短いし、髪は金色です。目は青いし」

「ハーフエルフってことか?」

「うーん……どうなんでしょう。何かの間違いではないでしょうか? とにかく、それでですね、あの光が」

「そうだ、何と言っていたんだ」

「えー……言いにくいのですが」


レインハルトは目を泳がせたが、最終的にはノエルの圧力に屈した。


「えー……要約すると『ティリオンの尻が柔らかい』と……喜んでいますね……」

「ええええええぇぇ」


幻滅はなはだしい。


「だから尻に止まってるのか? というか精霊ってそんなに俗っぽくていいのか?」

「さあ……」


そのとき、傍観していたモルフェがやってきた。

「おい、このまま一筋縄ではいかないだろ。地下の構造が分からねぇなら進みようがない」


確かに、地下の構造を理解しないまま突入するのは危険だ。

どこに敵が潜んでいるか分からない。


「まあ、聞いてや」


リーヴィンザールは懐から古い地図を引っ張り出した。

茶色く、端の方が劣化しているが、何者かの手書きのようだ。


その地図によれば、地下は迷宮のように入り組んでおり、最奥に到達するには複数のルートが存在することがわかった。


リーヴィンザールがのんびりと言った。

「最も安全で、効率的な道を選ぶ必要があるなあ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 小説UPデートお疲れ様です 魔法を使うねずみか!やっかいやね~
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ