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おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(13)レヴィアスの日常とゼガルドの裏事情 ヴェテルとリゲル登場

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ヴェテルとリゲル

ソフィは夢見がちな顔をして言った。

愛らしかった頬は痩せて、目元は落ちくぼんでいたが、かつての面影はあった。


「あなたはあたしの味方なの? あたしのこと助けてくれるの?」


「君はノエル・ブリザーグを殺したんだろう? それはあまりにも都合がいいんじゃないか?」


「なんでよ……だって、あたしは……あたしはエリック様に選ばれて……そうだ……選ばれた側の人間なのよ……邪魔な者は消してもいいじゃない」


紅い眼の男はフードから鋭い視線をソフィに向けた。


「可哀相に。エリックに毒されたな」


「何、言ってるの? エリック様はあたしを愛してる。あの男はあたしを愛してる! 愛してる! 愛してるのよ! あたしだけを!」


ソフィは鉄格子を掴んだ。

太い格子はソフィの力では全く動かない。

しかし痩せた指には、爪先が白くなるまで力が入っていた。


「ねえ、なんでエリック様は来ないのよ! 誰かに止められてるのね!? 分かったわ、あの王妃でしょう! あなたが助けてよ! エリック様が来ないなんてないわ! だってあたしのこと、あたしだけを、愛してるって」


「もうやめろ。もう理解したほうがいい。エリックは自由だよ。今日は学院に行っているはずだ」


「嘘ね」


「いいや。本当だ。あいつは君が牢屋に繋がれた夜だって、いつも通りに食卓について、ビーフシチューを二皿も食べたと記録がある。そうでなくても、学院に行って普段通り授業を受けて、取り巻きの友人の何人かとチェスに興じているな。快活で笑顔も見られると報告書にある。君がいなくなって、気落ちしている様子はないと」


「もういいわ。あなたは嘘ばかり言うのね。あたしとエリック様を引き裂こうとしたって無駄よ」


「そうだな、今は君に何を言っても、無駄なようだ」


紅い眼の男は残念そうにため息をついた。


「だけど、僕は身内として、あの二人の間違いを正すと決めたんだ」


「間違い? 何の話をしているの? ねえ、それよりもエリック様に伝えておいて。結婚式のドレスを選びたいって。きっとあたしは、薄いピンク色が似合うと思うわ」


「正直に言って……一個人としての君への興味は全く無い。だけど、弟の悪事をそのままにしておけるほど、腐りきってはないつもりだよ。処刑が実行されないよう、どうにか考えてみるから」


「エリック様はいつ来るの?」


ソフィは純粋な瞳をして尋ねた。

紅い眼の男は、悲しそうに言った。


「……また、グレッドを届けに来る」


「あら、これ、下さるの? あなた、結構役に立つのね」


ソフィは鉄格子の間から差し入れられたグレッドを受け取り、その場で千切りもせずに食べ始めた。


紅い眼の男はきびすを返すと、暗い地下の廊下を歩いていった。






「ヴェテル様、あの女はもうダメです。狂っちまってる」


男の傍に、そっと影が寄り添った。

足音は立たない。

余りにも静かなので、まるで男が一人で歩いているようだった。



「リゲル。だからといって見捨てていい訳じゃないだろ」


「お言葉ですが。あの女は令嬢なんかじゃない、人殺しですよ。戦闘奴隷にまで手を出しやがった。モルフェという奴隷は死んだはずです。あの女のせいで」


ヴェテルと呼ばれた男は、クックッと喉の奥で声を立てた。


「お前がそれを言うんだな。こんな時代に人殺しも何も無いだろう?」


「俺みたいなオンと、貴族のご令嬢とは違う生き物でしょう。そもそも比べるのがおかしい」


「まあ、リゲルの言いたいことは分かるよ」


ヴェテルは認めた。

リゲルという男は背が高いのに、不思議とヴェテルの影に隠れるようにして歩く。


「あの女は、戦闘奴隷が一体減ったとしか思っていませんよ」


「武将に産まれていれば、目的のためには手段を選ばないで領土を広げていたかもしれないね」


「勘弁してくださいよ。ヤバイ奴はお父上とエリック様だけでもう十分です」


「こら、不敬だぞ」


「今更じゃないですか。正直、俺は今でもヴェテル様が継げばいいと思ってます。小説なんかにうつつを抜かしていないで」


「小説は良いものだよ。お前も少しは読んでくれればいいのに。というか、外に出られない王なんてお笑いぐさだろ」


「国を滅ぼす王ならいない方がましです」


「まあ、エリックが王になればこの国はどのみち滅ぶだろう。あいつは国政なんて知らない。ただの思いつきで領土を侵すだろう」


「腹違いとはいえ、弟というならばヴェテル様の十分の一でも賢くていいはずです。それなのに、なぜいつまでも、あのように愚かなのでしょう? 封印を解いてレヴィアスを滅ぼそうとするなど、言語道断。もし、万が一、このことをレヴィアスの獣人たちに知られたら。ゼガルドが意図的に竜を放ったなんて知られた暁には――」


「ほら、もうこの話は終わりだ、リゲル。戻って物語の続きでも書こう。僕の騎士道物語は結構、最近評判が良くてね……」


ヴェテルに言われ、リゲルはおとなしく口をつぐんだ。


男たちは誰にも気付かれることなく、そっと姿を消した。

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― 新着の感想 ―
前フリ無く性格変えすぎだから思いつきでやった感が酷い。 これは酷い。 せめて序盤を改稿しようよ。 あ、応援してまーす。
[一言] いまのソフィに近づくものは悪魔でしょうか! ほかの小説でよくあるソフィを魔改造してレヴィアスに送り込んで血の海にするとか?
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