表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(13)レヴィアスの日常とゼガルドの裏事情 ヴェテルとリゲル登場

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

162/278

ソフィのところへ来た人物

「どうして……」


なんでこうなってしまったのだろう。


ソフィはゼガルドの牢獄で抜け殻のようになっていた。


同じ階からは、奴隷たちの騒ぐ声が聞こえてくる。

ここは城下の、戦闘奴隷たちの棲家だ。


「どうして、あたしが、なんで。嘘だ、こんなのおかしい、今ごろだったらあたしは王族で、エリック様と……そうだわ、エリック様は」



誰も助けてくれない。


叫んでも、暴れても、ここには一日に一度、食料を届けに来る兵士しか来ない。


「なんでエリック様が来ないのよ!」


頭がどうにかなってしまいそうだ。


ソフィを拘束した兵士たちは淡々と牢獄に連行し、ほとんど説明をしなかった。

分かったのは、ソフィが罪を犯したということだった。


「ノエル・ブリザーグを殺したから……?」


何も疑っていなかった一つ一つの出来事が、こうして囚われの身になって考えてみると、不思議に思えてくるようになった。


一度も姿を見せなかった男爵がいきなり引き取りに来たこと。


すぐに学院への編入が、試験もなしに決まったこと。


ひとりぼっちだった自分に、第二王子が話しかけてきたこと。


可愛いと褒めてくれたこと。


伯爵令嬢なんかより、魅力的なソフィと婚約したいと言ってくれた。


それなのに。


「なんで、エリック様」


ソフィはぶつぶつ呟いた。

こうして連れ去られてしまったのに、恋人であるはずのエリックは一度も会いにこない。


「あ、わかった。これは陰謀なのよ。王宮の誰かが、あたしとエリック様を引き裂こうとしてるんだわ。いったい誰? あの王妃かしら? あたしのこと、邪魔者みたいに見てた」


きっとたぶん、そうに違いない。

王妃だか何か知らないけれど、汚い手を使うものだ。


そのとき、フードを目深にかぶった全身真っ黒な男が現れた。


「エリック様!」


ソフィは弾かれたように顔をあげた。


しかし、そこにいたのはエリックではなかった。



「ヒッ!」


ソフィは小さく悲鳴をあげた。



金と白の混じった髪に、赤い瞳。

整った鼻梁は、美しいというよりもむしろ、生命感が薄くてぞっとする。



まるで死神のようだ。



赤い目の男は、透けるように白い手を口元にあてた。


「エリックは来ないよ」


「なんなのよ! あんた誰!? そんなこと、あんたに分かるわけないでしょ」


「分かるのさ」


「ふざけないでよ、あたしに何の用だっていうの!?」


「少し静かにしてくれ。僕が君のところに来ているとあまり知られたくない」


「何なのよ! どこの誰とも知らないあんたに指図なんかされる覚えはないのよ!」


「シッ……静かにしてくれ。殺されたいのか?」


「こ……」


ソフィはさすがに絶句した。


殺す?

誰を?

何で?



赤目の男は、フッと息を吐いた。



「そうだ。大人しくしてくれ。エリックは君を売ったんだ」


「な……何、そんな、嘘よ」


「嘘なんかじゃない。父上とエリックは君を使ったんだ。レヴィアスを手に入れるために」


「は……」


「逃がした伯爵令嬢のせいで、失敗に終わったけどね。それで、君はその後始末で、十日もしたら処刑されるってことだ」


「なっ、処刑!? あたしが!?」


「そうだよ。魔石でジャバウォックドラゴンの封印を解いた罪。封印の塚の隣には、戦闘奴隷が一人死んでいた。誰かが奴隷の命を使って封印を解いた。それを君がやったと、エリックが父上に奏上したんだ」


「嘘よ! あたしはそんなことしてやしない」


「彼らにとっては『嘘』ではなく『事実』なんだ。だから今君はこんなところに入れられている。父上は、エリックの言葉を聞き入れるだろう。エリックがやっていることを黙認していたのは父上だからね。君がどう動くかも予想して、あの二人は君を捨て駒に使ったんだ」


「ねぇ、父上って? ってことは、あなたまさか」


赤目の男は唇に指をあてて、真っ直ぐソフィを見据えた。

エリックとどこか似た形をした丸い耳の形を、ソフィはぼんやりと目の端に捉えた。


「僕と少し話をしよう。幸いにも時間はたくさんある。おおよそ、君にどんなことがあったのか、僕にも見当はついているから、すぐに終わるさ。君がヒステリックにならなければね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 哀れソフィ、それ以外に言葉がない 彼女にはおっさん令嬢とのパイプがないしね~もしあればレインハルトあたりが救助に表れているころなんだが…ほんととことん哀れ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ