表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(9)西レヴィアス 反逆の兆し

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

119/278

仲間になろうよ

ノエルたちと騎士団長の狼の獣人セシリオは、ノレモルーナ城の会議室で対面していた。円卓にはセシリオと、微笑みを浮かべたノエル。そして、ココナッツスープにより不機嫌になったモルフェと、そしらぬ顔のレインハルトと、甘いスープをわりと気に入ったルーナとが一同に会していた。


城の部屋の中には、古びた絵画や歴史を物語る装飾が並び、重厚な雰囲気が漂っている。セシリオは辺りを見渡して、ため息をついた。屋敷に残していった絵画だ。立派になった壁にかかっている絵は、芸術品であることを思いだしたかのように堂々とした風格が漂っている。


セシリオはノエルの目をまっすぐに見て口を開いた。

「まずは、我々を迎え入れてくれたことに心から礼を言う。ありがとう」


ノエルは花のように可憐な唇をほころばせた。

「いやいや。もともとこっちに来てくれって言ったのは俺たちだしな! どうだよ新しいマールは。俺たち頑張って作ったんだぜ。びっくりしただろ?」


鈴の音のような声が鳴り響くと思っていたセシリオは驚いた。

たしかに声は可愛らしかったが、話し方は少女とは思えない。

それは、どちらかというと、壮年の男性のような――。


「俺……?」

ぼそりとセシリオは呟いた。


ぎくりとノエルが固まる。

「アッ」

セシリオは言った。

「女性……なのですか?」


レインハルトが横から冷静に助け船を出した。

「ノエル様は……聖女なので。その身に魂を宿されているのです」

「なんと」


(初耳だぞ!?)

ノエルは目を白黒させて聴いていたが、余計なことを言わずにレインハルトに任せたほうが良さそうだ。


「ええ。ちょうどそこに絵がありますね。建国の祖、レグルスの」

「まさか」

セシリオはハッと息をのんだ。

ノエルはげんなりとして細くため息をついた。


(こいつ偽計の才能ありまくりだろ……詐欺師の資質があるんじゃないか……)


レインハルトは息を吐くように本当らしいことを言う。


「このレヴィアスに来たときから、どうも様子がおかしかったのですが……伯爵令嬢だったノエル様があの絵を見たときから、壮年の男性のような振る舞いや言動をされるようになったのです。陽の光を好み、瑞々しい果実を愛し、夜の月を愛するように……」


(いや、後半は生きとし生けるものは誰だってそうだろ! それっぽく言ってるだけ! いい加減な星占いのコメントみたいだな!?)

とノエルは内心突っ込みを入れていた。


しかし、素直なセシリオの感性は大いに揺るがされたらしい。

「レグルス様の魂がその身に宿っていると……」

「はい。ノエル様は、偉大なそのご自身の御力と、獣人レグルスの祝福をもってこのマールを復興させたのです」

「なんという……そのような奇跡が」

セシリオは感動で目を潤ませた。


ルーナとモルフェは顔を見合わせていた。

テレパシーも使っていないが、通じ合っている。

つまりは、


(アイツヤベェな。詐欺師かよ)

(初対面からアレでしたけど……もう、結婚詐欺師みたいです)


という思いが行き交っていた。


そんな裏事情はつゆ知らず、セシリオは険しい表情で口を開いた。

「これからの我々獣人たちの待遇について、具体的な条件を確認したい」

「ああ。勿論だ」


セシリオは真剣だった。

「昨日、疲労困憊でたどり着いたときには驚いた。村に灯りがついて……壊れた家屋も全て撤去されていた。暗くてあまり見えなかったけれど、村には今までに無かった設備が増えていて……山ができて、湖までできていた」

「いや、そうなんだよな。山はともかく、最近は風の影響か雨まで降るんだよ」

「雨!? 砂漠に!?」

「っていってもサアーッと降るくらいなんだけどな。魔法の力ってすげー」

「到着した我々は当然野宿のつもりだったのに、貴殿は我々をここに迎え入れてくれた」

「ああ。ここなあ、アーロンに百人を超えるくらいって聞いてたからさ、増築して……二百人くらいは入れるようにしといたんだ。風呂もトイレも完備! いやあ、これな、モルフェと考えたんだけど、天才だと思った。まさか魔力をあんなふうに使うなんて……」

「ノエル様。脱線しています」

「そうだった。ごめん」


ノエルはぽかんとしているセシリオに微笑んだ。


「セシリオ。俺たちはここのマールを拠点にして、西レヴィアスと『対話』をしようと思っている」

「というのは……」

「ざっくり言うと、東と西とをちゃんと同じ国らしくするってことだな。交易もして、盛り上げられたらいいなって思ってるんだけど……」


レインハルトがあとを引き継いだ。

「ノエル様は憂慮しておられるのだ。貴方たちもこの新生マールを見ただろう。点在するオアシスも。もうすぐ西はそれらに気付く。そして、降ってわいた恵みを己のものにするために手を広げるだろう。そうすれば迫害の歴史の繰り返しだ」

「確かに。西の人間たちは我々の尊厳など握りつぶす」

「だからだ。ノエル様はオアシスに旗を差してまわった。Lの字の旗は『新生レヴィアス』の象徴の旗だ。オアシスは西の占有物では無いというノエル様の意志の表れだ」

「そんな意味が込められていたのか……」


モルフェとルーナは、ゼガルドの玩具やで売られている猿の玩具のような顔になっていた。


(あ、あ、あれって……あれってモルフェさんが泉作ったときにふざけて立てたやつですよね……)

(ヤベェ……アイツなんで知ってんだ……)

(最初は赤い旗だけ差す予定だったのに、レインさんが来れないからって、「れいんはると」って旗に落書きしようとしたら間違えて「RAIN」って書かなきゃいけないのに「LAIN」になって、「ダセェ!」って言って後半破り捨てたら「L」だけ格好良くなったからって棒つけて差したやつですよね? ノリで乱立して爆笑してたやつですよね?)

(ノエルか!? ノエルがチクったのか!?)

(新生レヴィアスとかそんな立派な意味が)

(意味なんてあるわけねぇだろ……こえーよ……アイツ……)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ