表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(8)レヴィアスの拠点造り おかえり!令嬢のカラダ 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/278

竜の解体


ノエルたちが近づくと、レインハルトは一瞬手を止め、手を振った。


「ノエル様! もう起きられるんですか」


「おう! ばっちりだぜ! お前は何してるんだ? レイン」


ノエルは不思議そうに尋ねた。

レインハルトは肩をすくめて答えた。


「このジャバウォックの素材は非常に貴重なんですよ。希少金属ってやつです。鱗は防具や武器の素材になるし、骨は建材や薬の材料にもなる。村の発展には欠かせないでしょう」


ノエルは再びレインハルトの無駄の無い作業の様子に目を向けた。

みるみるうちに硬い殻や鱗が剥がされ、肉とその他の部分に分けられていく。


「さすがに竜を食べたことはありませんが……肉は捨てるしかありませんかね」


砂地にぽいっとレインハルトが肉を放る。

気付けば、山羊の住民が作業を手伝っていた。

ノエルはルーナの腕を軽く叩いて下ろしてもらう。

少しふらつくが、歩けないほどではない。


「この人は……」

「獣人のヤックさんですよ。仕分けをするのを手伝ってくれてる」


ヤックはぺこりと頭を下げた。


「あの……あの竜……には……俺……俺の家……めちゃくちゃにされた……倒してくれて……ありがとう……」


「いえいえ」

ノエルはにっこりと笑いかけた。

山羊のヤックは照れ屋のようで、頬を紅くしてどもりながらも、一所懸命にノエルへ話しかけてくれた。


モルフェはレインハルトにあれこれ指図されながら、魔法で解体作業に参加し始めている。なんやかんや言いながらも、手伝うところは仲間意識が出てきたということだろうか。


「ノ、ノエルさん」

「うん? どーした?」

「あ、あ、あ……あの……肉は、もしかしたら……餌になるかも……」

と、小さな声でヤックが言った。

「泉……小さな動物……いっぱいいる……お腹、すいてるみたい……」


「あ! そうだ、カワウソたち!」


ノエルが泉を見やると、カワウソたちは恨めしそうにこちらを見ていた。

「キュワワ……」

「ごめんごめん! 忘れてたわけじゃないよ。というか、魚をたくさん増やしただろ?」

「キュワッキュワッ!」


山羊の獣人のモックが泉にしゃがみこんで、うんうんと頷いた。


「この子たち……言ってる……この竜……食べる……」

「えっ、まさか、言葉が分かるのか? すごいな!」

「一部の……獣人は……分かる……カワウソ……わくわくしてる……まだ……食べたことの無い……ごちそう……」


確かに、ドラゴンも仲間分けをしてみれば、は虫類の仲間のようではある。


(あいつらの中では、竜も虫とか……そういうくくりなのか?)




縦横無尽に剣を振るっているレインハルトの横で、ノエルは無造作にドラゴンの肉片を泉に放り込んだ。


ノエルは黒竜の肉片を泉に放り込んだ。

肉片が水面に触れると、どす黒い血の色と紅い肉色、そして独特の乾いた香辛料のような香りが辺りに広がった。

中のカワウソたちは一瞬にしてその匂いに引き寄せられ、競うようにして肉を食べ始める。

泉の水が揺れ、波紋が広がる。


「ノエルさん、カワウソさんたちが……!」

ルーナが驚いて声をあげた。

カワウソたちの体が徐々に変わり始めた。


最初に変化が現れたのは体の大きさだった。

小さくて可愛らしかったカワウソたちが、見る間に巨大化していく。筋肉が隆起し、毛並みが光沢を増し、まるで鋼鉄のように強靭なボディになっていく。眼は鋭く輝き、まるで違う生き物のようだ。


次に、以前のカワウソのしなやかさはそのままに、動きに一層の速さと力強さが加わる。泉の中で泳ぎ回る姿はまるで水中の覇者のようだ。彼らは互いに鳴き声を上げ、その声は以前のカワウソの可愛らしいものとは異なり、深く低く、まるで古代の獣の咆哮のようだった。


「えっ……」

ノエルは戸惑ったが、どうしようもなかった。


もはや進化である。

カワウソたちは、泉の周囲を見回し、ノエルに目を向けた。その目には、ただの動物の目ではなく、計算と理解の光が宿っていた。

リーダー格と思われる最も大きなカワウソが近づき、手のひらにそっと鼻を寄せる。その仕草には信頼と敬意が込められている。


(知能が高まっている……!?)


彼らは今やただの愛玩動物ではなく、マールの村の忠実な仲間だった。


ノエルは知性を宿したカワウソたちを見やりながら、またレインハルトがうだうだ言うだろうなと想像した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やったねノエルちゃん!無駄飯ぐ…… 家族が増えるよ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ