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おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(8)レヴィアスの拠点造り おかえり!令嬢のカラダ 

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目覚めたノエル

ノエルは目を覚まし、周囲を見渡した。

医務室の天井が視界に入った。

元々あったポーションやら薬草やらを並べた簡易的な医務室だったが、ノエルの体を癒やすのには役に立ったようだ。


体中の力が抜けているように感じ、まるで全てのエネルギーを使い果たしたようだった。実際、ノエルは一日丸ごと眠り続けていた。ふと、自分の腕を確認すると、火傷の怪我はすっかり消えていた。跡もなく、痛みも感じない。


(あれは夢だったのか?)


でも、竜との壮絶な戦いの恐怖が心の奥底に残っていた。

熱線と禍々しい光の生々しい感触。

いや、あれが幻想だったなんて、そんなはずはない。



その時、医務室の扉が勢いよく開いた。

入ってきたのはモルフェだった。


「あっ……モルフェ。俺、どれくらい寝てた?」


モルフェの顔には怒りの色が浮かんでいた。

早足でノエルが横たわるベッドの枕元に近付いてきて、枕の隣にダンッと拳を突き立てる。


「ヒエッ!?」

「怪我してんじゃねぇよ」

と、モルフェはノエルを責めるように言った。


あんな強大な化け物と戦ったのに、怪我なしでいられる訳がない。

それは無理だろと言いかけたノエルは、見下ろしてくるモルフェの痛切な表情に口をつぐんだ。


「……勝手に死んだら許さねぇからな」


(こんな顔をするんだな、モルフェでも)


ノエルは珍しいものを見た驚きで、ぱちぱちと瞬きをした。

簡単には本心を出さなかったあのモルフェが、素を見せてくれるようになったのが嬉しい。



その時、呆れたような高い声が部屋に響いた。

「そこは、死ななくてよかった、って素直に言えばいいんじゃないですか」

水をもって入ってきたルーナが言った。


ノエルをのぞき込んでいたモルフェが離れていく。

またウルセーと言い返すのかと思いきや、ルーナにはしないらしい。

言い返さず、おとなしくしているモルフェに疑問が残る。


(ん!? オッパイの差なのか!? 差別だぞモルフェ)

と、内心、少しばかり憤慨したノエルだった。


「ノエルさん、覚えてますか? 腕のところ、酷い火傷だったんですよ。あれから、レインさんと二人で意識の無い二人を担いで拠点ここに戻ってきて……すごく心配しました。モルフェさんはわりとすぐ目を覚ましたんですけど、隣に寝てたノエルさんにすぐ火傷の治癒魔法をかけたら、また魔力が尽きちゃったみたいでもう一度眠り込んでしまって。さっきようやく回復して、目が覚めたんです」


「そうだったのか。心配させてごめんな」


「ええ、もう本当に……すごく、すごく心配しましたよ!」



ルーナがぎゅうっと抱きついてくる。

ぴるぴるしている熊耳を撫でながら、ノエルは憮然としているモルフェの横顔に語りかけた。



「モルフェ、ありがとう」

「……どんくせぇ。ちゃんとバリアをはってれば、あんな熱傷にならなかったはずだ」

「うん、そうだな。俺が練習不足だったよ。心配させてごめん」

「ふん。お前が俺らのリーダーなんだからな。簡単にくたばられちゃ困るんだよ」


モルフェたちと話しをしながら、ノエルはふとレインハルトの姿が見当たらないことに気が付いた。

真っ先に嫌みを言ってきそうな奴なのに、いったいどこにいるんだろう。

ベッドに寝たまま、ノエルは疑問を口にした。


「レインはどこ?」


ルーナが少し困ったような笑顔を浮かべながら答えた。


「外でジャバウォックを切り刻んでます。」


「え?」

ノエルは驚いた表情を浮かべた。

「なんでそんなことを?」


モルフェが言った。

「見りゃ分かるさ」


ルーナが立ち上がった。

「私が担いでいきます!」


そう言いながら、既にノエルを腕で持っている。


(あああ! いわゆるお姫様だっこというやつだ! うわあ……)


今世でも前世でも初めてとなる横抱きを経験したノエルは感想を抱いた。


(こ、怖ぇ)


人に運ばれる不安感に、ときめきも何も無い。

世のお姫様たちはこんな恐怖の中で恋に落ちていたのかと思うと、肝が冷える

思いだ。

ノエルはみっともなくルーナの首に腕をまわして縋りながら、絶対に落とさないで欲しい、押しつぶさないで欲しいと心から願った。



外に出たノエルたちは外に出て、黒竜を迎え撃った砂漠に向かった。

オアシスの高台の隣。

砂地の中央には、先日の戦いで倒した巨大な黒竜の死骸が横たわっていた。


そして、その死骸の上に立つ一人の男、レインハルトが鋭い剣さばきで竜の肉を切り刻んでいた。彼は集中しながら、黒竜の鱗や骨を丁寧に分解していた。

まるで、マグロの解体ショーのようだ。

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