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おっさん令嬢 ~元おっさん刑事のTS伯爵令嬢は第2王子に婚約破棄と国外追放されたので、天下を治めて大陸の覇王となる~  作者: 丹空 舞
(8)レヴィアスの拠点造り おかえり!令嬢のカラダ 

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ジャバウォック来襲(2)

モルフェには魔力がある。

一緒に旅をするようになってから、ノエルは思っていた。


モルフェの戦闘力は凄まじい。


魔力量ではノエルが勝っていたとしても、それを上回る技術と圧倒的な実践経験、そして天性の戦いのセンスがモルフェにはあった。


無詠唱の呪文のない魔力の発動は、モルフェの十八番だ。

しかし、今回だけはモルフェは詠唱した。


「シールド!」

その呪文は、イメージを具現化するためじゃない。

仲間に今何が起こっているのか、聞かせるための合図だ。


モルフェの詠唱と共に、卵形の厚い透明な膜のように防御魔法がジャバウォック・ドラゴンを取り囲む。


モルフェが歯を食いしばった。

無詠唱だから分かりにくいが、追加で何度もシールドを発動している。

伸ばしっぱなしの波打つ黒髪の端から、汗がしたたり落ちている。


「グアアアアアア!」

不気味な黒い竜は卵の中に自分の光線と熱波を充満させて呻いた。


それを機にノエルは茂みから飛び出した。

シールドの膜ごしだというのに、凄まじい熱を感じる。

これを一手に担えるのはモルフェしかいない。

過ぎた圧に肉体が耐えかねているのか、モルフェの鼻からは血が出ている。

しかし、モルフェは歯を食いしばりながらも、対象を不敵ににらみつけていた。


死を怖れない境地に達せる武人は数少ない。

モルフェはその少ない人間の内の一人なのだとノエルは悟った。


味方になれば、なんと頼もしいことだろう。


ノエルは息を吸い込んだ。


(俺はまだ死が怖い)


モルフェとは違う。

死の覚悟も、経験も、何にも足りない。

だけど、何の罪も無い無辜な者たちを屠る、この災いを止めたい。


(今はそれだけじゃ駄目だろうか)


ノエルはみぞおちに力を込めた。

はあ、はあという自分の息づかいが近い。

風の音がうるさいはずなのに、心臓はやけにはっきりと拍動を伝える。


ノエルは誰にともなく祈った。


(どうか、俺の力が集まって、この砂漠に大きく、大きく膨らみますように)


胸にあたたかな流れが溜まっていく。


「うらああぁぁぁぁぁ!!」


誰のために、何のために、そんな理由はどうだっていい。

モルフェと、ルーナと、レインハルトと、そして目の前の強大な敵が、今の全てだ。


ノエルは全身全霊を込めて、詠唱した。



「フローラ・豆のビーンスターク!」



オアシスに生えていた大きな豆の木が、ノエルの全力の魔力に包まれる。

薄い黄色の霧が消えないように、ノエルはかじかむ手をあたためるように、魔力を流し込み続けた。


シュルルルルル……


豆の木がジャバウォックに向かって、凄まじい速さで伸び始めた。

それはあたかも、緑の長い蛇のようだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ジャ(バウォ)ックと豆の木…だと…
[一言] いつもは優しい女の子のノエルも戦闘になったら内なる男魂で打つかっていくね~
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