第九十五話 一意専心(中編)
---三人称視点---
「リーファさん、馬から降りるわよ。
そして白兵戦で敵を蹴散らすわよ」
「王女陛下、了解致しました。
周囲の皆様も馬から降りてください」
「了解です」
女勇者グレイス王女の言葉と共に、
リーファ達は馬から降りて、武器を構えて戦闘態勢に入った。
「あの女だぁっ! あの女が戦乙女だ!
あの女を倒せば、一兵卒でも将軍にしてくれるそうだ。
お前等、出世のチャンスだぞ!」
「よし、あの女の首を跳ねて将軍になってやる!」
「リーファさん、敵に好かれてるわね」
「王女陛下、どうやらそのようですね」
「まあいいわ、さあ皆、白兵戦で挑むわよ!
この私――勇者グレイスの後に続きなさいっ!!」
そして帝国領とファーランドの国境線で、激しい激戦が繰り広げられた。
連合軍、帝国軍の国旗が戦場で翻り、
絶鳴と耳障りな金属音が響き、切断された血管から血が吹き出す。
帝国軍の兵士達は、「帝国ばんざい!」と叫びながら、
戦斧と剣を縦横に振り、リーファとグレイスが先頭に立ち、
両者が競うように次々と手にした剣を敵の急所に叩きこむ。
長剣と戦斧が激突して火花が飛散して、
斬り裂く、突き刺す、叩きつける、蹴り倒す、叩き潰す、
といった一連の原始的な闘争は、リーファ達に軍配が上がった。
敵味方が入り交じった死体と血を踏んで、
リーファとグレイスの護衛部隊が前進を続ける。
リーファの戦乙女の剣が白い閃光のように敵兵と空気を切断した。
血が噴き上がり、悲鳴と怒号が戦場に反響する。
それに勝るとも劣らず勢いで、
女勇者グレイスも閃光のような速さの斬撃を繰り返し、
帝国兵を黄泉の国へ送る。
血と血がほとばしり、斬撃が反響して、更なる殺戮と死を呼ぶ。
勇者グレイスに負け時とリーファも聖剣を振るい、
敵兵の死体の山を築き上げた。
アストロスがミスリル製の長剣で空と人体を裂き、
赤い血液で剣の刃先を赤く塗装する。
ジェインが素早く手斧を振るって、着実に敵を戦闘不能にさせた。
ロミーナも素早く動きながら、聖弓で敵を狙い撃つ。
そしてラミネス王太子と騎士団長エルネス率いる第三軍と第四軍が増援にかけつけると、戦局は更に苛烈に過激さを増した。帝国とファーランドの国境線を越えて、アルネンブルク高原まで怒涛の進撃を繰り返す。
勇者グレイスは敵が後退するのに、
倍した速度で突進し、縦横に手にした聖剣レミザーブを振るう。
次から次へと血しぶきがほとばしり、
帝国軍の防御陣がくずれかける。
勢いに乗る連合軍は「悪しき帝国を倒せ!」と叫びながら進軍する。
怒号を上げながら素早く前へ進みながら次々と、
網膜に映る敵兵と斬撃の応酬を繰り広げる。
勢いは一時完全に連合軍側に傾く。
だがそれを見越したように帝国軍側は一気に兵を引き始めた。
その隙を逃さないと連合軍の第三軍と第四軍は進撃を試みたが、
防御を固めた帝国鉄騎兵団の重歩兵が大盾を持って殿を務める。
それを打ち破らんと連合軍の第三軍と第四軍も一度、二度と突撃を繰り返したが、重厚な防御陣崩すまでには至らなかった。
「力押しじゃ無理のようね。
ならば私が突破口を開くわ。
リーファさんとそのお仲間の皆さん!
私のフォローをお願いします!」
「了解です、王女殿下!」
グレイスは頭上に左手をかざし、掌を大きく開いた。
それから右手で印を結んで早口に詠唱を開始した。
「我は汝、汝は我。 母なる大地ハイルローガンよ!
我は大地に祈りを捧げる。 母なる大地よ、我が願いを叶えたまえ!」
グレイスがそう呪文を紡ぐなり、
グレイスの左腕に強力な魔力を帯びた雷光が生じる。
そしてグレイスは呪文を更に唱えた。
「そして天の覇者、雷帝よ! 我が身を雷帝に捧ぐ!
偉大なる雷帝よ。 我に力を与えたまえ!」
そこでグレイスは左腕を力強く引き絞った。
攻撃する座標地点は、前方の敵部隊の中心部に狙いを定めた。
そしてグレイスは左手を前方に突き出して、大声で砲声する。
「――稲妻!!」
次の瞬間、グレイスの左手の平から雷光が迸った。
それはまるで自然現象の雷と全く同じように見えた。
「な、なんだぁっ!? ぎゃあああああ……あああっ!?」
「もしかして、水と風の合成魔法の稲妻かっ!?
うぎゃあああぁっ……あああぁぁっ!!」
放たれた雷光は一瞬で、前衛の敵部隊の周囲一帯を焼き尽くした。
雷の熱波が容赦なく敵の前衛部隊の肉体を溶かした。
そして黒焦げになって息絶えた敵兵が次々と地面に倒れていく。
その数軽く見積もっても、二百人以上であった。
この状況には敵だけでなく、味方も驚愕した。
瞬間で敵部隊を消し炭にしたグレイスの帝王級の電撃魔法。
「す、凄い!?」
思わず目を見開くリーファ。
「凄いなんてもんじゃないです! まさに勇者と呼ぶのに相応しい!」
「ま、全くです」
エイシルとアストロスも驚きの声を上げた。
彼女等が驚くのも無理はなかった。
勇者は攻防に優れた最強クラスの上級職。
それに加えて、グレイスのレベルは52。
エレムダール広しといえども、
上級職でこれ程、レベルが高い者はそうは居ない。
だが彼女は敵ではなく、味方なのだ。
それ故に味方に及ぼす影響力も絶大であった。
「リーファさん!」
「は、はい!」
「ぼさっとしてないで、アナタも攻撃魔法を放ってよ!」
「了解です、はあぁぁぁっ! 『魔力覚醒』」
リーファは職業能力『魔力覚醒』を発動。
するとリーファの魔力と攻撃魔力が一気に倍増して、
彼女の周囲が目映い光で覆われた。
そしてリーファが左手を頭上にかざして、呪文を唱えた。
リーファが呪文を紡ぐと、左掌の上に燃え盛る緋色の炎が生じた。
そこからリーファは全身から魔力を放ちながら、呪文を更に唱える。
「そして天の覇者、炎帝よ! 我が身を炎帝に捧ぐ!
偉大なる炎帝よ。 我に力を与えたまえ!」
次の瞬間、リーファは左腕を力強く引き絞った。
攻撃する座標地点は、
先ほどグレイスが魔法を放った周辺に狙いを定める。
そしてリーファは右手で印を結びながら、大声で砲声する。
「炎よ、敵を焼き尽したまえっ! ――炎殺っ!!」
次の瞬間、リーファの左手から緋色の炎が連続して発射される。
緋色の炎は放物線を描いて、狙い定めた地点に着弾する。
リーファの神帝級の炎属性の攻撃魔法。
そして炎属性と雷属性が交わり、魔力反応「炎雷」が発生。
物凄い爆発音を轟かせながら、
放たれた緋色の炎が攻撃座標地点から放射状に広がった。
一瞬、球形に膨れ上がった炎が、たちまち激しい爆発を引き起こす。
「う、うわあぁぁっ!!」
「も、燃える! 身体が燃えるぅっ!!」
燃え盛った炎が帝国兵を焼き尽くし、
たちまち阿鼻叫喚の地獄と化した。
「やるじゃない、流石は戦乙女ね!」
「……いえいえ」
「さあここからが本番よっ!
皆、この勇者グレイスについて来なさい!
全員で協力して帝国軍を叩き潰すわよ!」
グレイスはそう言って、右手に持った聖剣レミザーブを頭上に掲げた。
周囲の兵士達はそれに呼応するように歓声をあげた。
戦乙女と女勇者。
その二人の存在が連合軍の兵士達の闘志を奮い立たたせ、
この戦いの流れを大きく変えようとしていた。
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名前:グレイス・エストラーダ
種族:エルフ♀
職業:勇者レベル52
能力値
力 :2123/10000
耐久力 :2431/10000
器用さ :1267/10000
敏捷 :2274/10000
知力 :2360/10000
魔力 :2316/10000
攻撃魔力:2415/10000
回復魔力:2392/10000
※他職のパッシブ・スキル込み
魔法 :ヒール、ハイヒール、ディバイン・ヒール
キュア、キュアライト、ホーリーキュア
プロテクト、クイック、
アクセル、アクセルドライブ、アクセルターン、
マックスターン、フライ、スーパーフライ、
ウォーター、アクア・スプラッシュ、アイスバルカン、
シューティング・ブリザード、大氷結、
ウインドカッター、ワールウインド、
アークテンペスト、サイクロン、
サイコキネシス、テレパシー、アポート、
サンダーボルト、トルトニス、エクレール、大雷撃
スキル :結界、対魔結界、封印結界、
ブレイブ・サークル、雷撃剣、速射、零の鼓動、
武器スキル:イーグル・ストライク、ヴォーパル・ドライバー
ダブル・ストライク、トリプル・ストライク
ハイ・カウンター、スローイング・ブレード、グランドクロス、
ライトニング・スティンガー、
ダブル・デルタスラッシュ、アルテマ・ストライク
正拳突き、ローリング・ソバット
能力 :分析眼、魔力探査、勇者の息吹、
魔力覚醒、勇者の戦陣、神の祝福、
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次回の更新は2023年7月19日(水)の予定です。
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