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第八十九話 大同団結(中編)


---主人公視点---



 王宮から王城の二階に到着。

 そして私達は王城の一階の階段を登り、二階へと向かった。

 すると二階の至る所で顔馴染みの人物達の姿が見えた。


「ラミネス王太子殿下、それに戦乙女ヴァルキュリア殿」


 そう言って近づいてきたのは、

 犬族ワンマンのダルメシアン――シャーバット公子だった。

 

「「公子殿下、お久しぶりです」」


 私とラミネス王太子は声を揃えて返事する。

 するとシャーバット公子は口を開いて舌を出し、

 「ハッ、ハッ」と呼吸を繰り返した。

 所謂パンティングね。


「この王都に各国、各種族の首脳陣が集結したワン。

 あそこにはニャールマン司令官とジュリアス将軍。

 向こうにはオルセニア将軍と教会騎士団の一行が居るワン」


 と、シャーバット公子が前方を指差した。

 するとニャールマン司令官やジュリアス将軍。

 それとオルセニア将軍、更にはあの女性騎士レイラ……さんの姿も見えた。


 よく見るとアルピエール枢機卿も居るわ。

 どうしよう、私あの人の事が少し苦手なのよね。

 まあ向こうから声を掛けてくるまでは知らないふりをしましょう。


 そしてそこから少し離れた場所にエルフ族の一団が居た。

 第二王女グレイス王女殿下を取り囲むように、

 騎士団長エルネスを初めてとした騎士らしき者達が立っていた。


「あれは確かエストラーダ王国の第二王女のグレイス王女だな?」


「うむ、そうだワン。 噂ではかなりのお転婆姫らしいワン」


「……私はラミネス王太子殿下の部屋に向かう途中で、

 あのグレイス王女殿下とお会いしましたわ」


「ほう、それは興味深い話だな。

 それで彼女は、王女殿下は君に何と言ったのかな?」


「確か「アナタとは仲良くしたい」と申されてました。

 王女殿下は何故か私に興味を持たれたようです」


「成る程、だが好意を持たれるのは悪い事じゃない。

 それがエルフ族の第二王女となれば歓迎すべき事態だ」


「ラミネス王太子の言うとおりだワン。

 ここに来て急遽、王女殿下が現場に介入してきたけど、

 彼女は王族という身分だけではなく、

 冒険者としても名を知られた存在だワン。

 確か彼女の職業ジョブ勇者ブレイバーだったと思う」


「へえ、あの伝説の職業ジョブ勇者ブレイバーですか?

 それは凄いですわね」


 私は思わず驚きの声を上げた。

 勇者ブレイバー上級職ハイクラスの中でも最上位の位置に、

 君臨する名実ともに最強の職業ジョブの一つだわ。


 勇者ブレイバーになる条件は非常に厳しくて、

 複数の職業ジョブをある一定まで上げる必要もあり、

 更には高い能力値ステータスも求められる。


 その上で非常に過酷な試練を乗り越えて、

 ようやく到達出来る言わば「伝説の職業ジョブ」である。

 ……彼女とは仲良くしていた方が良さそうね。


「そういうリーファ嬢も戦乙女ヴァルキュリアじゃないか。

 我が軍には戦乙女ヴァルキュリア勇者ブレイバーが揃っている。

 これも女神サーラの恩恵おんけいなのかもしれんな」


「いずれにせよ、心強いワン」


「……恐縮ですわ」


「だが中には歓迎できん連中も居る。

 例えばあそこに居る連中とかだ」


 王太子殿下はそう言って、前方のヒューマンの集団を指さした。

 派手な白銀の鎧と外套マントを着た騎士らしき集団ね。

 その中央に陣取っている壮年の男が不敵な笑みを浮かべていた。


「アレが神聖サーラ帝国の連中だ。

 あの中央に居るのがセットレル将軍だ。

 見たまえ。あの表情を、まるで開戦当初から居るような

 不敵な笑みを浮かべている。 この土壇場で参戦してきたのに、

 図々しいにも程がある」


「ああ~、神聖サーラ帝国の一団かぁ~。

 確かに私も彼等の事はあまり好かんワン。

 今更しゃしゃり出てきて、戦勝利権だけ主張されても困るワン」


「おや? 公子殿下もあの連中がお嫌いですか?

 ならばここが我等が協力して、

 あの連中を主戦場から遠ざける事にしますか?」


「まあ正直言って好きじゃないワン。

 でも王太子殿下、そのような事が可能なのかね?」


「ええ、私にお任せください。

 ちゃんと手は考えております。

 ですので会談の場で公子殿下は私に同意して頂きたい」


「うむ、ならばこの件は王太子殿下に任せてみましょう」


「はい、任されましょう」


 ……。

 流石、王太子殿下ね。

 やる事に抜かりがないわ。


 そう思っていたら、向こうの方から神聖サーラ帝国の一団が近づいてきたわ。

 その中央を灰色の髪をオールバックにした壮年の男が自信満々な表情で歩いている。

 でもどことなく人を見下したような雰囲気を放っているわ。


「これはこれは、ラミネス王太子殿下にシャーバット公子殿下では

 ありませんか? 私は神聖サーラ帝国から派遣されたクインシー・セットレル将軍です。

 以後お見知りおきを……」


「……どうも」「……よろしくワン」


 王太子殿下と公子殿下が無表情で礼を返す。

 とりあえず私も綺麗な姿勢でお辞儀を返した。


「ん? そちらの女性は?」


 セットレル……将軍が興味ありげにこちらを一瞥する。

 すると王太子殿下が端的に答えた。


「彼女は戦乙女ヴァルキュリアのリーファ・フォルナイゼン嬢です」


「おお、貴方が噂の戦乙女ヴァルキュリアですか?

 これは驚いた、こんな美少女とは思いもしませんでした」


「……いえそんな事はありません」


「その謙虚さも素敵ですな。

 それはさておき、我が神聖サーラ帝国もこの戦いに参戦するにあたって、

 数万の兵を用意しました。 なので共に協力して打倒帝国を目指しましょう」


「……ええ」「そうですな」


 王太子殿下と公子殿下も適当に相槌を打つ。

 するとセットレル将軍は再び不敵な笑みを浮かべた。

 何というか勘違い系の男特有の雰囲気を漂わせてるわ。

 と、両者の間に微妙な空気が流れたところで――


「各国、各種族の代表も集まったようなので、

 ただ今より今後の戦いについて、会談を開きたいと思います。

 それでは各代表の皆様は会議室へ移動してください」


 と、黒い礼服を着たヒューマンの中年男性がそう語りかけてきた。

 ああ、彼は確かファーランドの宰相ね。 

 名前は確かラステバンだった……筈。


「では我々は行くとするか。 総参謀長、君もついて来たまえ」


「はっ!!」


 そう云ってセットレル将軍はこの場から去った。

 ……恐らく彼等がこの会談を荒らす事になるでしょう。

 でも舌先三寸で丸め込まれる王太子殿下と公子殿下じゃないわ。


「リーファ嬢、では我々も会議室へ行こう」


「はい」


 とりあえず今は会談に向けて集中しましょう。

 そして私は王太子殿下の後に続いて、会議室へ向かった。


次回の更新は2023年7月8日(土)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 セットレル将軍、かなり嫌われていますね... でも「人を見下したような」などあるので嫌われるのも納得いくような気がしますが。 恋愛ゲームだと、主人公の幼馴染を奪おうと…
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