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第八十三話 装備の新調


---三人称視点---



 リーファ達は冒険者区の武器庫を目指して歩き始めた。

 この冒険者区には冒険者及び傭兵と思われる

 様々の種族が入り交じっていた。


 ヒューマン、エルフ族に加えて、

 犬族ワンマン猫族ニャーマン兎人ワーラビット

 色んな種族、人種の者達の姿が視界に入る。


 そして五分ほど歩いて、冒険者区のメインストリートに到着。

 メインストリートの周囲はやはり賑わっており、

 その近くを歩く通行人や冒険者の身なりも整っていた。

 それから更に三分ほど歩くと目的地に到着した。


「ここですね」


 アストロスがそう言って眼前の建物を見上げる。

 元は何処かの商会の持ち物と思われる大きめな倉庫だ。

 その倉庫の前に連合軍の兵士と思われる中年男性のヒューマンが陣取っていた。


「すみません、少し宜しいかしら?」


「……何だ?」


 リーファは愛想良く話掛けるが、

 声をかけられた兵士は横柄な態度で対応する。


「私達、連合軍の一員なのですが、

 宜しければ倉庫の中の武具を見せて頂けませんか?」


「何? 連合軍の一員だと?」


 すると眼前の兵士は無遠慮にリーファ達をジロジロと凝視した。

 

「見たところかなり若いな。

 大方、新人の冒険者一行といったところか?

 ここの武器庫は連合軍の主力部隊を優先している。

 お前等のようなひよっこは自前で武器を揃えるんだな」


「……」


 本当にこういう奴って何処でも居るわよね。

 でも一々口論するのも面倒くさい。

 リーファはそう思いながら、

 左手で腰のポーチから自分の冒険者の証を取り出した。


「……これでも私達には武器を頂く権利はないかしら?」


「ああ~、ったくお前等みたいな小娘や小僧は……えっ!?」


 眼前の兵士はリーファの冒険者を見るなり、大きく目を見開いた。

 そしてリーファの顔と冒険者の証を何度も交互に見る。

 すると眼前の兵士の顔色が急速に青くなっていく。


「も、も、もしかして戦乙女ヴァルキュリア……殿ですか?」


「そうよ」


 リーファはそう答えて、軽く嘆息する。

 すると眼前の兵士は大袈裟に頭を下げて、謝罪の言葉を述べた。


「も、も、申し訳ありませんでしたぁっ!!

 ま、ま、まさか戦乙女ヴァルキュリア殿とその一行とは……」


「……じゃあ私達にも武器や防具を受け取る資格はあるわよね?」


「も、も、勿論です! どうぞ、中へお入りください」


「ではそうさせてもらうわ」


 そしてリーファ達は武器庫の中へと入った。

 武器庫の中はなかなか広さだ。

 所々に置かれた木箱の中に様々な武器や防具が入っていた。


「防具の方は少し前に高級仕立屋オートクチュールで新調したし、

 ここで揃える必要はないわね」


「はい、でも胸当てが欲しいです」


「あ、オイラも欲しいワン」


 エイシルとジェインがそう主張する。

 ちなみに今の彼等の格好は――


 アストロスは白いベストに黒のスラックス。

 その上から黒いコートを羽織っている。


 エイシルは半袖の青いインナースーツの上から

 淡い水色のローブを羽織るという格好。


 ジェインは半袖の黒いインナースーツ。

 その上から黄緑色のコートとズボンいうスタイル。


 彼等が着る衣服の素材は耐魔性も高く、防刃性だ。

 だがエイシルとジェインの胸部を強化するのも悪くない案だ。

 リーファは周囲を見渡して、

 近くに居た女性ヒューマンの兵士に声を掛けた。


「そこの女性兵士さん、少し宜しいかしら?」


「はい、何でしょうか!」


 女性兵士は愛想良く答えて、リーファに近づいた。


「ここにある商品を頂いて良いかしら?」


「え~とそれは……」


 女性兵士が言いよどんでいると、

 彼女に近くに居た先程の中肉中背の中年ヒューマンが――


「彼女等は戦乙女ヴァルキュリアとその御盟友だ。

 故にここにある者はご自由に使ってもらうが良い。

 そういう訳で君が戦乙女ヴァルキュリア殿のお相手をしたまえ!」


「は、はい!」


 中肉中背の中年ヒューマンは、

 体よく部下に仕事を押しつけて、この場から去った。

 すると女性兵士は凜とした声と態度で――


「自分はアスカンテレス王国の王国騎士団の騎士アイリです。

 ここにある物はご自由にお使いください。

 また何かあれば自分にお声かけください」


「騎士アイリさん、そんなに緊張なさらなくていいわよ。

 ところでここの武器庫には、

 どんな種類の武器や防具があるのかしら?]


[基本的に各武器と防具に対応した形で、

 上からミスリル、白金プラチナ、ゴールド、シルバー、アイアン。

 といったランクに分けられております」


「へえ、ミスリル製の物もあるのね。

 良かったらミスリル製の胸当てを見せてもらえるかしら?」


「はい、すぐにお持ちします!!」


 騎士アイリはキビキビとした動きで、

 周囲の木箱の中から翠玉色すいぎょくいろの胸当てを取り出した。


「あ、一人はエルフ族。 もう一つは犬族ワンマン用でお願い!」


「了解です!!」


 リーファに言われるまま、

 騎士アイリは素早い動作で通常サイズのミスリル製の胸当て。

 獣人サイズのミスリル製の胸当てを両手に持って、

 軽くお辞儀してから、リーファに両手を差し出す。


「ありがとう、ジェイン。 一人でつけられるかしら?」


「う~ん、出来れば手伝って欲しいワン」


「仕方ないわね……」


 リーファは床に片膝をつけて、

 ジェインにミスリル製の胸当てを装着させた。

 同様にエイシルも自分で翠玉色すいぎょくいろの胸当てを装備する。


「わーい、お姉ちゃん。 ありがとう!」


「ううん、気にしないで!

 これで防具は終わりね。 皆、欲しい武器はあるかしら?」


「そうですね、私はミスリル製の長剣が欲しいです」


「オイラもミスリル製の手斧が欲しいワン!」


「じゃあボクもミスリル製の両手杖が欲しいです」


「了解、騎士アイリさん。 注文通りの武器を持って来てくださる?」


「……少々お待ちください」


 騎士アイリは再び周囲の木箱の中から、

 リーファ達が注文した装備を探し始めた。

 そして待つこと、三分余り。

 騎士アイリは注文通りの品物を持って来た。


「こちらがミスリル製の長剣と手斧、両手杖です」


「……ありがとうございます、少し手に取ってみてもいいですか?」


「はい、ご自由にどうぞ!」


「では!」


 そしてアストロスはミスリル製の長剣――ミスリルソードを右手に持った。

 重量は想像していた以上に軽い。

 剣身もまずまずの長さだ。

 軽く魔力を篭めると、翠玉色すいぎょくいろの刃がうっすらと輝きだした。


「うん、良い感じです。

 ではこちらのミスリル製の長剣を頂きます」


「はい」


 アストロスはそう言葉を交わして、

 剣帯の左右につるした二本の剣を黒鞘に収めた。


「オイラもアストロスくんと同じように、

 二つの手斧を腰帯に吊るすだワン。

 今まで使ったシルバーアックスは投擲用。

 ミスリルアックスは接近戦用に使うよ」


 ジェインはそう言ってアストロスと同様に、

 腰帯の左右にそれぞれの手斧を吊した。


「このミスリルの杖も良いですね。

 程よい軽さで魔力の伝達率もかなり高いです。

 ……本当に無料で頂いて宜しいのでしょうか?」


 エイシルはそう言って、ちらりと騎士アイリを見た。

 すると騎士アイリは微笑を浮かべて、「はい」と頷く。


「……ありがとうございます。

 それでは遠慮なく使わせて頂きます。

 後、ボクが今まで使用していた銀の両手杖を

 この場で進呈させて頂きます。

 手入れは充分しているので、

 他の方でも使いやすいと思いますよ」


「そうですか、ならば有り難く受け取らせて頂きます」


 騎士アイリはそう言って、

 エイシルから銀色の両手杖を受け取った。


「良し、全員の防具と武器も新調出来たわね」


「お姉ちゃんは装備変えないの?」


「ん~、私は女神サーラから頂いた戦乙女ヴァルキュリアの剣(ソード)

 幻魔の盾があるから、特に必要ないと思うわ」


「でもお嬢様、その軽鎧ライト・アーマーは銀製ですよね?

 せっかくですから白金プラチナ製か、

 ミスリル製の軽鎧ライト・アーマーを新調なさっては?」


「そうね、じゃあ騎士アイリさん。

 私に合う白金プラチナ製の軽鎧ライト・アーマーをご用意して頂けるかしら?」


「……少々お待ちください」


 三分後。

 騎士アイリはリーファに合う白金プラチナ製の軽鎧ライト・アーマーを持ってきた。


 そしてリーファは銀製の軽鎧ライト・アーマーを外して、

 長袖の黒のインナースーツの上に白金プラチナ製の軽鎧ライト・アーマーを装着する。

 銀製よりかは少し重いが、問題のない誤差だ。


「……どう? 似合うかしら?」


 そう言ってリーファは仲間の意見を求めた。


「ええ、とてもお似合いですよ」


「うん、うん。格好いいよ!」


「ボクも似合ってると思います」


「そう、ありがとう。

 それじゃ騎士アイリさん、私達はそろそろおいとまするわ」


「はい、お疲れ様でした」


 用事が済んだリーファ達は、

 エラール宮殿がある居住区へと向かった。

 歩くこと、十分余り。


 無事にエラール宮殿に到着。

 すると宮殿の正門の前で白兎と黒兎の兎人ワーラビットが立っていた。

 その二匹はリーファの顔を見るなり、歩み寄って来た。


「あ、戦乙女ヴァルキュリア殿。

 ジュリアス将軍が貴方をお呼びしております。

 宜しければ彼とお会いして頂けますか?」


「……ジュリアス将軍が?」


 一体何の用であろうか。

 だがジュリアス将軍自体は嫌いじゃない。

 とりあえず話くらいは聞いておくか。


「はい、今から将軍のお部屋へご案内するので、

 私達の後について来てください」


「……分かったわ。

 じゃあ皆も私について来て!」


「「はい」」「うん」


 そしてリーファ達が正門から宮殿内に入り、

 案内役の兎人ワーラビットの後を追った。


次回の更新は2023年6月24日(土)の予定です。


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