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第七十一話 リーファ対野蛮人(中編)


---主人公視点---



 とりあえず撃てるところまで魔法攻撃を仕掛けるわ。

 その為にもスキル・『速射そくしゃ』を発動させる!


「――『速射』っ!!」


 私は躊躇いなく『速射そくしゃ』を発動させた。

 このスキルの効果時間は約五分。

 蓄積時間チャージ・タイムは約十分。

 故にここから五分間の戦いが重要となるわ。

 ならばこの五分間を攻めて、攻めて、攻め尽すわ。


「――ライトボールッ!!」


 私はまずは初級光属性魔法で攻め立てた。

 効力を考えたら、炎属性の方が強いけど、

 この封印結界の中で炎属性の魔法を連発するのは、少々危険だわ。

 だから最初は徹底して初級光属性魔法で攻めるわ!


「ライトボール、ライトボール、ライトボールゥッ!!」


 私は左手を前に突き出して、ひたすら初級光属性魔法を放つ。

 私の左掌から放出された光の球がラングに迫る。


「ふんっ、小細工など俺には通じぬわっ!!」


 ラングはそう叫んで、

 身体を上下左右に動かして、迫りに来る光の球を見事に回避する。

 ……巨体なのに随分柔らかい身のこなしね。

 どうやら只の筋力任せの野蛮人ではないようね。


 ……感心している場合じゃないわね。

 ならばこちらもそれ相応の策を打たせてもらうわ!


「ライトボール超連射フルバーストッ!!」


 私はそう叫んで、左手を前後に突き出し続けた。

 撃つ、撃つ、撃つ、とにかく撃ちまくった。

 だがラングもステップを駆使して光の球を避け続ける。


 でもそれはこちらも計算済み。

 そこで私は眉間に皺を寄せて、魔力を発した。

 すると私の放った光の玉が急遽、

 垂直に落下して大橋の床板に着弾。

 それと同時に光の玉が弾けて、目映い光を周囲に放った。


「ぬ、ぬうっ!?」


 よし、狙い通りだわ。

 そして目映い光で目を眩ませたラングに次々と光の玉が命中する。


「ぬ、ぬ、ぬう……おおおっ!!」


 効いている、効いている、効いてるわ。

 よし、ここはもう少し強い魔法で攻めるべきね。


「我は汝、汝は我! 聖なる大地ハイルローガンよ。 

 我に力を与えたまえ! 『スターライト』ッ!!」


 私は腹から声を出して、左手から眩く輝いた光の波動を前方に向けて放射した。

 上級の光属性攻撃魔法。

 「ソウル・リンク」や能力の重ね掛けで強化された一撃。

 そしてその光の波動がラングを捉えた。


「ぐ、ぐっく……あああぁぁっ!?」


 よし、次はここから炎属性で攻めるわ。


「――フレイムボルト、フレイムボルト、フレイムボルトォッ!!」


 今度は初級火炎属性魔法を連発する。

 私の左手から炎雷が次々と放射されて、ラングに迫る。

 これが決まれば魔力反応「核熱」が生じる。

 と思った矢先に、異変が起きた。


「――マジック・フィールドォォォッ!!」


 ラングの叫び声と共に放射された炎雷が次々と弾かれていく。

 どうやら対魔結界に該当するスキル及び能力アビリティを発動させたようね。

 ……これだと中距離から遠距離の魔法攻撃は効きそうにないわね。


 そして爆風が収まるなり、

 白煙の中からラングがゆっくりと歩きながら姿を現す。

 漆黒の甲冑の至るところから、白い煙を吐き出して、

 その黒髪の一部が灰で白くなっているけど、その目は死んでないわ。


「……随分な目に合わせてくれたな。

 だが小細工では俺は倒せん、それを身を持って教えてくれよう」


 ラングはそう言って両手で漆黒の戦斧の柄を握る。

 ……こうなったら遠距離の魔法攻撃は通じないわ。

 となると中間距離で魔法攻撃しながら、

 敵が接近戦を挑んできたら、防御ガードして

 ヒット&アウェイ作戦で戦うのがベストね。


 いいわ。

 私も覚悟を決めるわ。


「……戦乙女ヴァルキュリアよ、帝国の猛将ラングの力を見せてくれよう」


「……」


 私はラングの言葉に応じる事なく、

 右手に持った戦乙女ヴァルキュリアの剣(ソード)を構えながら、腰を深く落とした。

 さあ、ここからが本番よ。

 ここからは一瞬の判断ミスが命取りになるわ。


 でも大丈夫。

 私ならきっと上手くやれるわ。

 私は自分にそう言い聞かせて、相手の出方を伺った。



---ラング視点---


 

 ……。

 戦乙女ヴァルキュリアか。

 想像以上に強い相手だな。


 あんな小娘が俺相手にここまで戦えるのだ。

 その辺に関しては素直に敬意を示そう。

 とはいえ俺は帝国の将軍。

 それ故に相手が戦乙女ヴァルキュリアであろうが負ける事は許されない。


 だが相手も戦い方をわきまえている。

 この俺相手に接近戦をするという愚策は選んでない。

 今のように中間及び遠距離での魔法攻撃を

 続けられると、俺としても少々苦しい展開になる。


 だがこの俺もある程度は魔法を使えるのだ。

 使える魔法は主に念動属性の魔法だが、

 これは限界まで相手に知らせたくない。


 いわば俺の魔法は奥の手。

 だから決め手となるまでは、こちらも手の内を晒すつもりはない。

 ならばやはりこの場も接近戦で勝負を挑むべきであろう。


 とはいえもう一度「バイオレンス・マインド」を発動させるのは、

 少々危険だ。 あの能力アビリティを使用すると

 血圧と体温が上昇するからな、だから連続での使用は避けた方が良い。


 ならばこの場では違う能力アビリティを使うべきだ。

 そして俺はここで職業能力ジョブ・アビリティりゅう鼓動こどう』を発動させた。


「――行くぞっ!! 『龍の鼓動』っ!!」


 俺は大きな声でそう叫んだ。

 すると次の瞬間には、俺の身体が鋭く研磨された闘気オーラに覆われた。

 ……力が漲ってくる、溢れんばかりの力が俺を覆い尽くす。


 職業能力ジョブ・アビリティ『龍の鼓動』は、

 使用者の力と耐久力と敏捷性、そして魔法防御力を一時的に大幅に向上させる。 

 能力アビリティの発動時間は約五分。

 そして蓄積時間チャージ・タイムは約十分。


 これ以上、能力値ステータスを向上させると、

 魔力の暴走、あるいは精神の疲労で倒れかねない。

 それ故にこの五分間で勝負を決めたいところだ。


「……また能力値ステータスを向上させたようね。

 流石は上級職ハイクラス狂戦士ベルセルク

 攻撃力や身体能力を上げるすべが豊富ね」


「いやいや、伝説の戦乙女ヴァルキュリアの方が上手うわてさ。

 その高い魔法力に加えて、高い接近戦能力も備えている万能職。

 だがその方が戦い甲斐もあるというものだ。

 だから俺はこの手で貴様を倒してみせる!」


「そうはせないわ! ライトボール超連射フルバーストッ!!」


「ふんっ! 同じ手が何度も通じるかぁっ!!」


 眼前から光の球が次々と飛んでくる。

 しかし慌てる必要はない。

 俺は上下左右に動き、光の球を一個ずつ完璧に回避する。


 すると戦乙女ヴァルキュリアとの距離が狭まった。

 彼我の距離は百メーレル(約百メートル)といったところか。

 この距離ならば射程圏内だな、良しっ!!


「――雄叫び(ウォークライ)っ!!」


 俺はここでスキル・『雄叫び(ウォークライ)』を発動!

 俺の大音声だいおんじょうで周囲の大気が震えた。

 このスキルは敵の注目を自身に集めさせる上に、

 標的を驚かせるという二重の効果がある。 


「なっ!?」


 不意を突かれた戦乙女ヴァルキュリアも面食らったように硬直していた。

 良し、狙い通りだ。

 ここから一気に決めてくれるわぁっ!



次回の更新は2023年5月27日(土)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 戦いも佳境ですね。魔法の連発すらも凌ぐラング……さすが強いですね。
[一言] 更新お疲れ様です。 リーファが優勢に見えますが、最後の最後に一瞬の隙が。 今更気付いたのですが100メートルも差ができるほどの結界を作るとは...流石は戦乙女と言ったところでしょうか。 …
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