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第六十五話 王都を攻めろ、護れ(中編)


---三人称視点---



「エイシル殿、君の意見を聞かせて欲しいワン」


「はい、公子殿下。 目には目を、歯に歯を、

 空戦には空戦で、幸いな事にこちらには犬族ワンマン

 はじめとした獣人が多いです」


「うむ、それで?」


「端的に言います。 飛行魔法「フライ」を使える魔導師が

 両肩に獣人の魔導師を乗せて、空を飛ぶのです。

 そして獣人の魔導師が魔法攻撃で敵の空戦部隊に反撃。

 これを繰り返せば、敵の空戦部隊を減らす事も可能となるでしょう」


「おおっ! それは名案だワン」


 シャーバット公子はそう言って、両手をパンと鳴らした。


「ジェインちゃん!」


 と、エイシル。


「何?」


「キミの守護聖獣を召喚して頂戴。

 そしてボクの両肩の上に乗るんだ。

 そこからボクは「フライ」で上昇する!

 キミは敵に目掛けて魔法攻撃を仕掛けて!

 但し中級から上級魔法に限定してね。

 あまり強力な魔法だと支える方も大変だから!」


「ウン、分かったワン!

 我が守護聖獣カーシンよ。 我の元に顕現せよっ!!」


 ジェインがそう言うなり、

 彼の足元に魔法陣が現れて、眩い光を放った。

 白、赤、青、黄色、緑と魔法陣の色が次々と変わり、強い魔力が生じる。


「ワオオオォンッ!」


 雄叫びと共に全身に長い緑色の毛を生やして、

 丸まった長い尾を持つ妖精カーシーが現れた。


「よし、俺達も同じ事をするぞ!」


「おおっ!!」


 エイシルの後に続くように、

 周囲の魔導師達が守護聖獣を次々と召喚する。

 だがそんな中、リーファは一人その場で佇んでいた。


 戦乙女ヴァルキュリアと組むことを躊躇いを覚える。

 多くの獣人魔導師はそう思っていたようだが、

 そんな彼女の許に一人の兎人ワーラビットが歩み寄った。


 毛の色は白。 体長は五十セレチ(約五十センチ)前後。

 品種はレッキス。毛が短く髭が縮れているのが特徴である。

 

 上下共にピンク色のチュニックとズボンという格好。

 どうやらめす兎人ワーラビットのようだ。

 そしてその背中には獣人サイズの黄金の弓と矢筒を背負っていた。


戦乙女ヴァルキュリアさん、アタシと組みませんか?」


「ええ、いいわよ」


「アタシの名はロミーナ。 上級職ハイクラス聖弓兵ホーリーアーチャーよ。

 こう見えて弓の達人よ、射程距離三百メーレル(約三百メートル)圏内なら

 どんな標的でも撃ち抜けるわ!」


「そう、それは心強いわ!」


「じゃあ守護聖獣を召喚しちゃうわね!

 我が守護聖獣ラビータよ。 

 我の元に顕現けんげんせよっ!!」


 ロミーナがそう叫ぶなり、彼女の足元に魔法陣が突如現れた。

 すると魔法陣がチカチカと明滅しながら、激しく光った。


「ウサアアアァァァッ!」


 すると魔法陣の中から体長三十セレチ(約三十センチ)くらいの黒ウサギが現れた。

 これがロミーナの守護聖獣である黒ウサギのラビータだ。

 守護聖獣にしてはやや小さいが、

 全身から強い闘気オーラと魔力を発していた。


「行くわよっ、ラビータ! 『ソウル・リンク』ッ!!」


「了解だ、リンク・スタートォッ!!」


 ロミーナとラビータの魔力が混ざり合い、

 ロミーナの能力値ステータスと魔力が急激に跳ね上がる。

 そしてラビータはジャンプして、リーファの両肩の上に乗った。


「じゃあ戦乙女ヴァルキュリアさん、飛んで頂戴」


「ええ、――フライッ!!」


 そしてリーファとロミーナは飛行魔法で上空に飛んだ。

 その後に続くようにエイシルとジェイン。

 その他の魔導師達もフライを唱えて、上空に飛び立った。


 連合軍の上空部隊は地上から十メーレル(約十メートル)の地点に留まった。

 これより上空を飛ぶのは少し危険であった。


 対する帝国軍の空騎士スカイナイト部隊は、

 地上から十から十五メーレル(約十五メートル)くらいの地点で待機している。

 そして連合軍の上空部隊は、彼等に対して一斉攻撃を開始する。


「――サイキック・ウェーブ!」


「――アイス・バルカンッ!」


「――フレイムボルトォッ!!」


「――フレイムアローッ!!」


 獣人部隊の魔導師達は、

 エイシルの言いつけ通り中級から上級魔法に限定して魔法攻撃を放った。

 だが「ソウル・リンク」の効果も相まって、

 中級や上級魔法でも充分な威力を保っていた。


「ぐ、ぐあああァっっ!!」


「ぎゃあああァァッ!!」


 狙い撃ちされて次々と地面に落下する空騎士スカイナイト部隊。

 連合軍の獣人部隊の魔導師達は、

 ここから騎乗者ライダーではなく、

 彼等が乗る魔獣、魔物に狙いを変えた。


「――サイキック・ウェーブ!」


「――ウインドカッターッ!」


「――フレイムボルトォッ!!」


 そしてこの狙いは功をそうした。

 次々と撃墜されていく空騎士スカイナイト部隊。

 更に止めを刺すべく、

 リーファの両肩に乗る雌兎人めすワーラビットが新たな手を打った。


 聖弓兵ホーリーアーチャーのロミーナは、

 手にした黄金の弓を天向けて掲げて、小声で何やら呟いた。 

 それから彼女が魔力を篭めると、弓と弦の間に、光のような輝きが生じた。


「――メテオ・フラッシュッ!!」


 ロミーナは弓の弦を力強く引いて、その光の塊を天に目掛けて放った。 

 弓から放たれた光の塊が空高く舞い上がり、眩く光り輝いた。 

 そして光の塊は流星のごとく急降下して、

 前方の空騎士スカイナイト部隊に次々と命中。


 その光を受けた空騎士スカイナイト部隊は激しい痙攣を起こして、

 次々と魔獣や魔物から落下して、地面に衝突した。


「ロミーナ、凄いじゃないっ!」


「これぐらい朝飯前だわさ!」


「よし、この調子でドンドン倒すわよ!」


「了解だわさ!」


 三十分後。

 帝国軍の空騎士スカイナイト部隊は短時間で完全に崩壊した。

 これによって空からの攻撃に心配する必要はなくなった。


 任務を終えたリーファ達は、

 地上に降りて再び連合軍の地上部隊に加わった。

 これによって戦場は空戦から再び地上戦へ移り変わろうとしていた。



 空の戦いが続いている間に、

 連合軍の地上部隊は、

 工作兵や魔導師部隊の働きによって第一障害物を取り除くことに成功。

 すると総司令官シャーバット公子は、

 騎兵隊を中心として、前列に地上部隊を押し出した。

 対する帝国軍もレイ将軍が率いる帝国騎兵隊で連合軍を迎え撃った。


 お互いに負けられない一戦。

 そしてお互いに勝利を掴むべく、

 相手に向かって行き、

 王都を攻めるべく、護る為に激しい接近戦を開始された。


 

次回の更新は2023年5月13日(土)の予定です。


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黄昏のウェルガリア
― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れさまです。 目には目をだけど、肩に乗せるとは... そして、守護聖獣であるラビータのテンションが高い。 守護聖獣にも色々な個性があっていいですね。
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