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第六十四話 王都を攻めろ、護れ(前編)


---三人称視点---



 聖歴せいれき1755年9月4日。

 連合軍は街道沿いの平原地帯に、

 ここに本陣である第一軍と第二軍を置いて、

 王都エルシャインを目指して北上を開始。


 それからシェパード部隊や偵察部隊を先行させて、

 帝国軍の動きと陣形を偵察させた。

 三十分後、偵察を終えた偵察隊が本陣に戻る。


「平原の北東に森がありますね。

 敵が隠れ潜んでいる可能性が高いです。

 それと我が軍の侵攻ルートに土魔法で生成したと思われる

 岩壁や木柵が張り巡らされてますね」


 街道沿いの平原の北東にある森。

 その森と連合軍の前方に設置された木柵は繋がっている。

 敵がその森に伏兵を忍ばせている可能性は高い。

 

「成る程、偵察お疲れ様だワン。

 おかげで有益な情報が得られたワン。

 さてここはどう動くべきか……」


 シャーバット公子は、

 本陣の円卓に地図を乗せて、

 偵察情報に基づいて駒を置いて行く。


「作戦遂行の便宜上、

 前方の岩壁や木柵を第一障害物と呼ぶことにするワン」


 そして公子は顎に右手をやり、双眸を細めて地図を見据える。


「で殿下はどう軍を動かすおつもりですか?」


 チワワの副官エーデルバインがそう問うた。

 するとシャーバット公子が右手で地図を指した。


「そうだな、まずは工作兵や魔導師部隊を動かし、

 侵攻ルートの第一障害物を取り払う。

 その間に敵が攻撃してくるのであれば、

 戦士や騎士ナイト、魔法剣士などの職業ジョブ防御役タンクする」


「ふむ、それが妥当でしょうな」


「嗚呼、その際に北東の森から、

 敵軍は連合軍の側面を突いてくるだろう。

 その対処には戦乙女ヴァルキュリア殿とその盟友に対処してもらう。

 その際に多少なら魔法攻撃で、森ごと燃やしても構わんと伝えるワン」


「……宜しいのでしょうか?」


「うむ、森を燃やした後に消火活動をすれば問題ないワン。

 そして第一障害物の取り払いに成功させたら、

 第一軍と第二軍を全速力で北上させるワン。

 その間にジュリアス将軍率いる侵攻部隊は、

 西部の森に進軍、特に罠がないのであれば、

 森を越えて敵軍の側面から援護攻撃をしてもらうだワン」


「ふむ、ふむ、悪くはない戦術ですね」


「では早速作戦を実行させよ!」


「はっ!」


 そして『耳錠の魔道具(イヤリング・デバイス)』で指示を受けるリーファ。

 

「ランディ、北東の森を中心に魔力探索マナ・サーチして頂戴」


 するといつものように「ポン」と音を立てて、

 ジャガランディのランディが現れた。


「了解だ! 魔力探索マナ・サーチ、開始っ!」


 そしてランディの身体が目映い光に包まれる。

 それから待つこと、三十秒。

 

探索サーチ完了。 距離は約二キール(約二キロ)先!

 方角は二時方向、魔力反応の数は百から百五十だぁ」


「百五十か、それならば力押しで行けそうね!

 エイシル、私と貴方で北東の森を燃やすわよ!」


「了解です!」


「エイシル、まずは貴方が光属性の攻撃魔法を放って!

 その後に私が炎属性で攻撃するわ。

 攻撃座標は森の中心部を狙って!

 じゃあフライで宙に浮くわよ! ――フライッ!」


「はい。 ――フライッ!」


 二人は飛行魔法「フライ」を唱えて、空中に飛び上がった。

 そしてエイシルは左手を頭上にかざして、呪文を唱え始めた。


「我は汝、汝は我。 母なる大地ハイルローガンよ!

 我は大地に祈りを捧げる。 母なる大地よ、我が願いを叶えたまえ!」 


 エイシルはゆっくりと呪文を読み上げる。

 するとエイシルの左腕に強力な魔力を帯びた光の波動が生じた。 

 そしてエイシルは全身から凄まじい魔力を放ちながら、呪文を更に唱える。

 

「そして天の覇者、光帝よ! 我が身を光帝に捧ぐ! 

 偉大なる光帝よ。 我に力を与えたまえ!」


 次の瞬間、エイシルは左腕を力強く引き絞った。

 攻撃する座標地点は、森の中心部に狙いを定める。

 そしてエイシルは右手で素早く印を結んで、大声で砲声する。


「光よ、敵を貫きたまえっ! ――ライトニングバスターッ!!」


 次の瞬間、エイシルの左手から迸った光のビームが放たれて、

 半瞬程、間を置いてから、敵部隊の中心部に着弾。 

 神帝級しんていきゅうの光属性の攻撃魔法。

 

 着弾した光のビームはドーム状に膨れ上がって、

 鼓膜に響く爆音と爆風と共に、

 森の木々を乱暴に揺らした。

 すると今度はリーファが左手を頭上にかざして、呪文を唱えた。


「我は汝、汝は我。 母なる大地ハイルローガンよ!

 我は大地に祈りを捧げる。 母なる大地よ、我が願いを叶えたまえ!」 


 リーファが呪文を紡ぐと、左掌の上に強力な魔力を帯びた緋色の炎が生じた。 

 そこからリーファは全身から魔力を放ちながら、呪文を更に唱える。

 

「そして天の覇者、炎帝えんていよ! 我が身を炎帝に捧ぐ! 

 偉大なる炎帝よ。 我に力を与えたまえ!」


 次の瞬間、リーファは左腕を力強く引き絞った。

 攻撃する座標地点は、

 先ほどエイシルが魔法を放った地点に狙いを定める。

 そしてリーファは右手で素早く印を結んで、声高らかに砲声する。


「炎よ、敵を焼き尽したまえっ! ――炎殺えんさつっ!!」


 次の瞬間、リーファの左手から緋色の炎が連続して発射される。

 緋色の炎は放物線を描いて、先ほどと同じ地点に着弾する。 

 リーファの神帝級しんていきゅうの炎属性の攻撃魔法。

 そして炎属性と光属性が交わり、魔力反応「核熱」が発生。


 どごおおおん、という爆発音を轟かせながら、

 放たれた緋色の炎が森の中心部から放射状に広がった。

 一瞬、球形に膨れ上がった炎が、たちまち激しい爆発を引き起こす。

 すると北東の森の木々が物凄い早さで燃え盛り始めた。


「リーファ殿、今の一撃で魔力反応が一気に三十以下まで減った。

 敵、あるいは敵が使役した魔物、魔獣の大半が焼け死んだ模様」


「そっか、ならばこれ以上、攻撃する必要はないわね。

 とりあえず公子殿下にこの事を伝えたら、

 私達も本隊に合流するわよ!」


「「はい」」「ウン!」


 そしてリーファ達は後退して、

 シャーバット公子が居る本陣と合流すべく、

 加速魔法「アクセル」をかけて、地を蹴った。


---------


 一方その頃、連合軍は街道を中央とし、

 その左右の平原に広がるように第一軍と第二軍を配置していた。

 正面には連合軍の北進を妨害するべく、

 東西に長く木柵が設置、岩壁が置かれていた。


「魔導師部隊、まずは風魔法で木柵と岩壁を破壊せよっ!!」


「ははっ!!」


 シャーバット公子に指示に従い、

 中列から飛び出して風魔法を詠唱する魔導師部隊。

 撃つのは初級から中級の風魔法。


 岩壁を破壊するのには時間を要したが、

 木柵に関しては比較的早く破壊する事に成功。


「よし、工作兵。 残った木柵を破壊及び除去せよっ!!」


「了解ですっ!」


 そして工作兵が前線に出て、

 ハンマーやバールを使って、木柵を破壊及び除去しようとしたが――


「どおおおんんん」


 という爆音と共に前線の工作兵達が吹っ飛んだ。


「なっ、何だワン! 何が起きた!?」


「公子殿下、上を見てくださいワン!」


「わ、分かったワン! あ、あれはっ!?」


 シャーバット公子はチワワの副官に言われるまま、頭上に視線を向けた。

 すると前方の空中にグリフォンやコカトリスの姿が見えた。

 よく見るとそれらの魔獣の上に騎乗する人影が見えた。


「あ、あれは空騎士スカイナイトか!!」


「只の空騎士スカイナイトじゃありません!

 よく見ると魔導師らしき者が相乗りしてますワン」


 大声で叫ぶチワワの副官。

 するとシャーバット公子は「ぐぬぬ」と歯軋りした。


「空からの攻撃か。

 これは少々厄介だワン!

 弓兵部隊きゅうへいぶたい、空に向かって矢を放て!」


「む、無理です。 距離がありすぎま……ぎゃあああぁっっ!」


「ぬおっ……ああっ!!」


 またしても空からの魔法による爆撃。

 それによって連合軍の部隊が狙い撃ちされた。

 若き公子も爆風によって、吹き飛ばされた。

 そして地面に転がった若き公子は右手で地面をドンドンと叩いた。


「クソッ、こちらも空騎士スカイナイトを用意しておくべきだった。

 だが何か手がある筈だ、何か……」


 シャーバット公子がそう呟く中、

 敵部隊による空からの爆撃は続いた。

 そんな中、リーファとその盟友が本隊に合流。

 そして状況を把握すると、

 エイシルがシャーバット公子に向かって一言告げた。


「ボクに一つ考えがあります!!」



次回の更新は2023年5月10日(水)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れさまです。 進行が始まり、空騎士が攻めてきたところで次回に持ち越し。 水曜日までが長く感じられますね。 エイシルの考え、なんでしょうか。あるかは知りませんが、魔法を反射させて攻…
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