第三百四十七話 シュバルツ元帥対十番隊組長(前編)
---三人称視点---
シュバルツ元帥と神剣組十番隊の組長が対峙する。
シュバルツ元帥は190セレチ(約190センチ)を超える巨体。
対する十番隊組長の原口左之助は170セレチ(170センチ)前後。
体格の面ではシュバルツ元帥が上回っているが、
元帥は油断する事無く、まずは守護聖獣を召喚した。
「――我が守護聖獣ドラーガよ。
我の元に顕現せよっ!!」
シュバルツ元帥がそう叫ぶと、
彼の左肩にポンという音を立てて、
守護聖獣の漆黒の小竜ドラーガが現れた。
「ガアオオンッ!」
ドラーガの体長は七十セレチ(約七十センチ)前後。
シュバルツ元帥の近くで、
両翼をパタパタと動かし宙に浮いていた。
「ほう、竜の守護聖獣か。
ならば俺の守護聖獣もお見せしよう。
――我が守護聖獣の貉よ。
我の元に顕現せよっ!!」
すると原口の足下に可愛らしい狸が現れた
頭胴長は60セレチ前後。
目の周りと足から肩にかけて黒色で、
他は灰褐色という毛並みだ。
見た目は日本の各地に居る狸とほぼ同じだ。
だが豪胆な原口の守護聖獣が狸なのは少し不釣り合いであった。
「何だ、アライグマか?
見かけによらず可愛い守護聖獣を連れてるな」
「おい、お前! 今、俺を馬鹿にしたろ?」
言葉は通じないが、
何となく雰囲気で察した原口は眉間に皺を寄せた。
彼自身はこの守護成獣――貉をとても気に入っていたからだ。
だがシュバルツ元帥は、原口を無視して、
『ソウル・リンク』を発動する。
「ドラーガ、『ソウル・リンク』を開始せよッ!!」
「了解、リンク・スタートォッ!!」
するとシュバルツ元帥と守護聖獣の魔力が混ざり合い、
シュバルツ元帥の能力値と魔力も急激に跳ね上がった。
「チッ、シカトかよ。 まあいい、貉!
行くぞ! 魂連結ッ!!」
「了解だポン、魂連結」
原口も『魂連結』を発動させた。
そして原口と貉の魔力が混ざり合い、
原口の能力値と魔力が急激に跳ね上がる。
お互いに「ソウル・リンク」を発動。
次に行うのは相手の分析だ。
この辺は日ノ本の一騎打ちでも基本戦術であった。
そしてシュバルツ元帥と十番隊の組長は、
守護聖獣に相手の能力値の分析を命じる。
「ドラーガ、分析だ!」
「了解。 ――分析開始っ!」
「貉、お前も分析するんだ!」
「ポンポコポン! 分析するポンッ!」
ここは定石通りにお互いに分析を開始する。
ちなみにシュバルツ元帥はレベル57の竜騎士。
一方の原口はレベル47の槍使いであった。
槍使いは剣士と同じく普通の一般職であったが、
レベル47くらいならば、下手な上級職より強い。
だが今回の相手はシュバルツ元帥であった。
「原口の大将、分析を終えたよ~ん」
次の瞬間、原口と守護聖獣・貉の意識が共有化された。
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名前:アレクシス・シュバルツ
種族:竜人族♂
職業:竜騎士レベル57
能力値
力 :2435/10000
耐久力 :2365/10000
器用さ :1400/10000
敏捷 :2400/10000
知力 :1705/10000
魔力 :2190/10000
攻撃魔力:2100/10000
回復魔力:1700/10000
※「ソウル・リンク」で能力値強化中
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「なっ……何だ、この数値は!?
オレだけでなく、沖田組長や聖副長より高い数値だぞっ!」
予想外の数値に驚く原口。
神剣組は紛れもない剣客集団。
ただ彼等は自分の流派や戦闘法に固執している部分が強い。
単純な一騎打ちの能力は高いが、
リーファ達のように大きな戦争経験や実戦経験もなく、
魔物や魔獣を狩る事もそれ程多くなかった。
「分析完了」
「ドラーガ、ご苦労」
そしてシュバルツ元帥とドラーガの意識が共有化されて、
原口の能力値の数値も露わになった。
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名前:原口左之助
種族:ヒューマン♂
職業:槍使いレベル47
能力値
力 :1315/10000
耐久力 :1850/10000
器用さ :1055/10000
敏捷 :1475/10000
知力 :920/10000
魔力 :1745/10000
攻撃魔力:355/10000
回復魔力:285/10000
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「ほう、思っていた以上の数値ではあるな。
だがハッキリ云おう、オレの敵じゃないな」
「うん、殆どの数値で元帥が上だね」
と、ドラーガ。
「嗚呼、所詮は寄せ集めのごろつき集団か。
まあでも手は抜かない。
万が一という事もあるからな」
「おいっ! 何だ、その見下した感じの表情は!」
シュバルツ元帥の勝ち誇った表情を見て、
原口は怒りを露わにするが、元帥は軽く受け流した。
「これ以上、口論するのも無駄だ。
ここは一気に叩いて、力の差を見せてくれよう。
行くぞ! ――龍の咆吼っ!」
シュバルツ元帥は、勝負を決めるべく職業能力を発動。
これによってシュバルツ元帥の力と耐久力と敏捷性。
更には攻撃力と魔法防御力が一時的に増加された。
それに加えて五分間限定で、
魔力と闘気の消費量は零となった。
但し蓄積時間は約三十分なので、
この一騎打ちで二度目を発動する機会はなさそうだ。
「原口さん! 敵の力が一気に跳ね上がりましたよ。
アナタも強化系のスキルか、能力をお使いなさいっ!」
「沖田組長、了解したっ! ――不撓不屈っ!」
原口も負けじと職業能力・不撓不屈を発動させた。
これで原口の力と敏捷性が増したが、
代わりに耐久力と器用さの数値は低下した。
それに加えて魔法防御力も大幅に向上していた。
尚、蓄積時間は約三十分。
シュバルツ元帥と同様に二度使う機会はなさそうだ。
「ほう、結構、結構。 力が増したようだな。
これぐらいでなきゃ面白くない」
「その見下した笑いを消してくれよう」
お互いに自己強化を終えて、
シュバルツ元帥と原口は手にした戦斧と十文字槍を構えながら、ゆっくりと腰を落とした。
槍使いと槍使いによる一騎打ちがこうして始まった。
次回の更新は2025年7月23日(水)の予定です。
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