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第三百四十六話 対決! 神剣組(後編)



---三人称視点---



 沖田は剣先を下に向け、体側に沿わせた。

 相手の攻撃を受け流して、反撃を狙う構え――山陰やまかげの構えである。


 見た事のない構えで、

 対峙するバリュネ大尉は、腰を落として、

 両手で白金プラチナのサーベルを前方に突き出す構えを取る。


「……」


「……」


 お互いに無言の睨み合いが続く。

 沖田は表情を消して、その双眸で前方を見据える。

 対するバリュネ大尉も集中力を高めて、

 沖田がいつ仕掛けて来るか、じっくりと観察する。


 その時、沖田が摺り足で前へ進んだ。

 それと同時に下に向けた剣先をバリュネ大尉の足目掛けて、

 斬撃を繰り出すが、バリュネ大尉もサーベルを振るう。


 再び刀とサーベルが衝突して、

 力で押し切れなかったバリュネ大尉が後ろに数歩下がった。

 沖田はその隙を逃さなかった。


「――ヴォーパル・ドライバー!」


 苦し紛れに突きを放つバリュネ大尉。

 それに対して沖田悟おきた さとるは――


天蓮理心流てんれんりしんりゅう――龍尾剣りゅうびけん


 神剣組しんけんぐみの幹部のみで共有する独創的技オリジナル・スキルを放った。

 龍尾剣りゅうびけんは、龍が尾を振るって相手を倒す様に、刀を振るう返し技である。

 打ち込んできたバリュネ大尉の剣の切先をすんでの所で刀のつばで受け、

 摺り上げて上段から相手の胴を斬る、という技を見事に成功させた。


「が、が、がはああぁぁぁっ……あああぁぁぁっ!!!」


 流れるような返し技が決まり、

 バリュネ大尉の胴体から真っ赤な鮮血が噴水のように周囲に飛散した。

 しかしバリュネ大尉も生粋の軍人。


 胴体から多量の血を流しながらも、

 余力を振り絞って、後ろへ素早く下がった。

 そこで後ろで見物していたリーファに視線を送った。

 その視線を理解したリーファは、咄嗟に上級回復魔法を唱えた。


「――ディバイン・ヒールッ!」


 リーファの左手から放たれた眩い光がバリュネ大尉の身体を包み込み、

 数十秒もすると、斬られた胴体の傷を見事に治癒された。


「リーファさん、ありが……くはっ!?」


 思わず喘ぐバリュネ大尉。

 刀傷は見事に治癒されたが、

 回復魔法でも失われた血液を戻す事は出来ない。


 よってバリュネ大尉は酷い貧血状態になった。

 この辺りは先のガースノイド戦役せんえきでよく見た光景だ。


「……大尉、その状態ではもう戦えないでしょう。

 ここは大人しく後ろに下がってください」


「リーファさん、申し訳ありませんが、

 そうさせてもらいます……」


 そう言って、バリュネ大尉は後ろの方に引っ込んだ。

 すると沖田がまた数歩前へ出て、煽るように言葉を重ねた。


「宣言したように、そちらの御仁ごじんは殺さず、

 最低限、喋れる状態までいたぶりましたが、

 他の方はそうはいきませんよ。

 この加州清光かしゅう きよみつの刀の錆にしてくれましょう」


「……」


 言葉は通じずとも、

 相手の言わんとする事は何となく分かった。

 そこでリーファが一歩前へ出たところで、

 シュバルツ元帥が後ろから、右手でリーファの左肩を掴んだ。


「……元帥」


「まだマスターが出る必要はない。

 ここは下僕しもべである俺が先に出て相手の力量を測るよ。

 あの沖田という男、確かに強い。

 そしてエレムダール大陸では見た事のない剣の使い手だ。

 もう少し奴の技を引き出してみるよ」


「……分かったわ、元帥」


 そう言葉を交わして、

 シュバルツ元帥は前へ一歩出て、

 両手に漆黒の斧槍ハルバードを持って、身構えた。

 すると沖田がふふっと笑う。


「成る程、そちらの金髪のご令嬢がアナタ達の頭目とうもくのようですね。

 そこの褐色の肌の御仁は……所謂、「竜人族」という種族ですね。

 どういう経緯でこの場に乱入したかは分かりませんが、

 敵である以上、容赦はしま――」


「沖田組長っ!」


 そこで沖田の後方に居た十番隊の組長。

 原口左之助はらぐち さのすけが不意に沖田を呼び止めた。


「……原口さん、どうかされましたか?」


「その男は見たところ、槍使いのようだ。

 そしてこのオレも槍使い。

 ここはオレに任せてもらえませんか?」


「……良いでしょう。

 私一人で全て相手するのも少し疲れますからね」


「沖田組長、恩に着るっ!」


 原口はそう言って、

 大股で前へ数歩進んで、

 両手で槍身の両側に鎌状の刃が十字に付いた形状の槍――十文字槍じゅうもんじやりを構えた。

 原口は神剣組しんけんぐみの中でもかなりの槍の使い手だ。


 彼は幹部達が使う天蓮理心流てんれんりしんりゅうとは、

 違う流派だが、その実力は局長の権藤と副長の聖も認めていた。


「我が名は原口左之助はらぐち さのすけっ!!

 神剣組十番隊の組長、貴様に武人としての勇気があるならば

 いざ尋常に勝負せよ!」


 そう言って、原口は両手に持った十文字槍じゅうもんじやりをぐるぐると頭上で回した。

 身長はそれ程高くない、精々170セレチ(約170センチ)くらいだが、

 所々に筋肉がついており、全体から威圧感を放っていた。


 だがシュバルツ元帥も百戦錬磨の一癖も二癖もある英雄。

 原口の挑発に乗らず、堂々とした態度でこう言い放った。


「どうせ言葉は通じないだろうが、

 一応名乗り上げておこう。

 アレクシス・シュバルツ。 今からお前を倒す男の名前だ」


 そう名乗り上げて、シュバルツ元帥は、

 両手で漆黒の斧槍ハルバードを持って、どっしりと腰を落とした。



次回の更新は2025年7月19日(土)の予定です。


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