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第三百四十六話 対決! 神剣組(中編)



---三人称視点---



 沖田悟おきた さとるは左肩を引き、右足を前に出して、半身状態で、

 剣の刃を右の内側にする――平晴眼ひらせいげんの構えを取った。


 神剣組の古参隊士、局長の権藤ごんどうや副長の聖。

 そして一番隊組長である沖田の流派――天蓮理心流てんれんりしんりゅうの基本の構えであった。


 ――隙のない動きだ。


 目の前で刀を構える沖田を見て、

 バリュネ大尉は、目を瞬かせて硬直する。


 バリュネ大尉もレベル55の騎士ナイト

 幼い頃から幼年学校に通い、

 十代という大切な時期を陸軍士官学校、陸軍砲兵学校で過ごし、

 アスカンテレス王国内のエリート軍人の出世街道を歩んできた。


 単純な剣技ソード・スキルや戦闘技術もかなり高い方である。

 だがそんな彼だからこそ、

 目の前で刀を構える一番隊の組長の実力を読み取ったのだ。


「……来ないんですか?

 これじゃ面白くない、ならば私も動きましょう。

 ――心頭滅却しんとうめっきゃくっ!!!」


 沖田がそう叫ぶと、彼の身体に眩くて鋭い闘気オーラが纏われた。

 高レベルの剣士のみ使える職業能力ジョブ・アビリティ心頭滅却しんとうめっきゃくだ。


 これによって沖田悟おきた さとるの力と敏捷性。

 更には攻撃力と魔法防御力が一時的に増加された。


 それに加えて十分間の間なら、

 魔力と闘気オーラの消費量は零となる。


「なっ……」


 バリュネ大尉は思わず驚きの声を上げた。

 分析アナライズをするまでもないくらいに、

 沖田の能力値ステータスが急増した事を肌で感じ取った。


「……とんでもない魔力と闘気オーラね。

 下手すればあのマリーダより上かもしれないわ」


マスター、俺も同じ意見だ。

 こりゃ身を引くべきだ」


 と、シュバルツ元帥。


「そうもいかないでしょう。

 バリュネ大尉にも自尊心プライドというものがある」


 そうアストロスが正論を吐いた。

 本当の強者ならば体感で分かる力量差。


 リーファ達だけでなく、

 バリュネ大尉本人もそれに気付かない訳がない。

 だが彼は軍人であり、男であった。


 一度申し出た勝負を戦わずして降りる。

 という真似は彼にはとても出来なかった。


「逃げないのですか?

 その勇気は買いますが、相手が悪かったですね。

 でもご安心ください、とりあえずアナタは殺しません。

 殺しませんが……戦闘不能には追いやりますよ」


 そう言って沖田は素早く数歩、前へ進んだ。

 

「――諸手突きっ!」


「――ヴォーパル・ドライバーッ!」


 刀とサーベルによる突きが放たれた。

 沖田の愛刀――加州清光かしゅう きよみつ白金プラチナのサーベルが激しく衝突して、

 周囲に火花が飛び散った。


 お互いに繰り出された基本の刀術、剣術スキルだが、

 両者の力、そして長年培われた熟練度によって、

 その威力は通常の数倍に及ぶ威力となった。


「くっ……」


「意外とやりますね」


「――二連斬にれんぎりっ!」


「――ダブル・ストライクッ!」


 今度は互いに二連斬りを繰り出した。

 沖田の剣は速くて鋭いが、

 バリュネ大尉も鍛え抜いた連撃で何とか跳ね返した。


「ほう、二度目も防ぎましたか。

 この私の剣をここまで防げた相手は久しぶりですね。

 これは少し本気を出すべきかもしれませんね」


「……」


「だんまりですか、戦いに集中してるのでしょうか?

 まあ何でも良いですよ、どうせアナタは私に斬られる運命。

 我が天蓮理心流てんれんりしんりゅうをとくと受けるが良い!

 行きますよぉぉぉっ! ――五月雨突さみだれづきっ!!!」


 沖田は再度踏み込んで、高速で突きの連打を繰り出した。


「クッ! ――トリプル・ドライバーッ!!」


 沖田の五連斬りに対して、

 バリュネ大尉は突きの三連打を繰り出した。

 その剣は鋭くて重さも帯びていたが、

 沖田の放った突きは、それ以上に鋭くて速かった。


「ぐはぁぁぁっ!!」


 何とか突きの三連打で、

 沖田の突きを三度までは防げたが、

 残りの突き二発をまともに胸部と腹部に受けた。


 バリュネ大尉は、防具をあまり着けない軍服姿であったので、

 この二連突きは思っていた以上のダメージを受けた。


「……効いているようですね。

 今、楽にしてあげますよ。

 ハアアアアアァ……居合い斬りっ!!!」


 沖田が気勢を上げると同時に鞘に戻る刀の金属音が周囲に響き渡る。


「――ディバイン・シールドッ!」


 対するバリュネ大尉は、騎士ナイト職業能力ジョブ・アビリティ『ディバイン・シールド』を発動させた。

 すると彼の周囲に光り輝く障壁が張り巡らせられた。

 そして沖田の居合い斬りを真正面から防いだ。


「――ディバイン・ヒールッ!」


 沖田が僅かに硬直した隙を突いて、

 バリュネ大尉は上級回復魔法「ディバイン・ヒール」を発動。

 すると彼の胸部と腹部についた刺し傷が綺麗に治癒された。

 それと同時にバリュネ大尉は、後ろに大きく跳躍した。


 これで表向きには振り出しに戻った。

 だが実際はそうではなかった。


 目の前の沖田の雰囲気が明らかに変わった。

 その両眼を細めて、淡々とした口調で呟いた。


「……成る程、小細工は得意のようですね。

 でもそれでは私に勝つ事は出来ませんよ。

 それにアナタにこれ以上、時間を割くのも勿体ない。

 なので次は確実に倒してみせますよ」


 沖田はそう言って、

 剣先を下に向け、体側に沿わせる攻撃的な構え。

 相手の攻撃を受け流して、反撃を狙う構え――山陰やまかげの構えを取った。



次回の更新は2025年7月16日(水)の予定です。


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― 新着の感想 ―
 沖田はかなりの実力者ですね。バリュネは押されてます。  リーファたちはまだ挟むことができず、どう転ぶかわかりませんね。ではまた。
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