表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

326/381

第三百二十三話 魔導船(前編)



---三人称視点---



 リーファ達の眼前に広がる銀色の魔導船「エルドラール号」。

 全長50メーレル(約50メートル)、重量200トル(約200トン)。

 航海と交易に特化した輸送船ではあるが、

 大砲や機銃といった武装も搭載されており、

 戦闘艦としての戦闘力もその辺の軍艦より遙かに高かった。


 基本的には、魔光炉まこうろと呼ばれる動力炉に、

 大量の魔石を投じて、それによって生じる魔力と魔法の力で、

 従来の船や戦艦より、速い速度で航行する事が可能である。


 船の構造としては、

 船体は輝かしい銀色。

 上甲板以上の構造物は、眩しいに純白に塗られている。

 シンプルだが、どこか気品を漂わせる配色と言えた。

 甲板上には、煙突と帆柱の他に特に目立つ突起物はない。


 ここ数十年で出来た蒸気船と似ている部分が多いが、

 航海の際に魔法の力を使用するので、

 蒸気船や帆船の船には出来ない事も可能とする。


 だが全ての航行に魔力や魔法の力を使う訳にもいかず、

 通常時は他の帆船と同様に、

 帆柱に帆を張って、帆走で海を行き交う事が多い。


 船の最大速度は、15ノット。

 最大乗組員550人越え。

 それでいて魔法で風の向きを変えたり、

 燃料である魔石から生じた魔力や魔法の力を使って、

 大砲の射程距離を伸ばす。

 あるいは船全体に対魔結界や障壁バリアを張る事も可能だ。


「想像以上に大きいですわね」


「うん、でもリーファちゃん。

 これでも魔導船では小さい方だよ。

 でもこのクラスの魔導船でも通常の帆船。

 あるいは蒸気船相手でもスペック面でも、

 戦闘面でも引けはとらないよ」


「この船は途中で乗り換えるのよね?

 やはりジャパング政府を無駄に刺激させない為に?」


「え~と……キミはジェインちゃんだよね?」


「そう、オイラはジェインだワン」


「答えは……イエスだよ。

 でもあーし等はこのクラスの魔導船に乗れるVIP。

 それをジャパングの為政者にも分からせれば、

 彼等もあーし等をぞんざいに扱えない。

 という狙いも含んでるよ」


「ほう、それは悪くない考えだ。

 ロザリー殿は、フランクに見えて、

 考えるところは、ちゃんと考えてるんだな」


 と、シュバルツ元帥。


「流石は大賢者ワイズマンですね。

 やることに無駄がありません」


 エイシルも感心しながら、そう言うが、

 当のロザリーは、両腕を横に広げて肩をすくめた。


「あーしを只のお気楽な言語マニアとでも思った?

 伊達に数百年も生きてないよ。

 まあでもあーしの狙いどおりに行くとも限らないしね。

 それじゃ皆でタラップを上って、乗船するよ」


 そしてロザリーを先頭にして、

 リーファ達もタラップを上って、乗船した。


 魔導船の船内は、想像以上に広かったが、

 多くの水兵達が忙しそうに走り回っていた。


「船が大きい分、やる事が多いからね。

 だから彼等の邪魔にならないように、

 基本は自室で待機、出掛けるのは食事か、トイレ。

 まあトレーニング室や娯楽室で息抜きするぐらいにしておこうね」


 こんな大きな船を乗ったのも初めてなので、

 リーファ達も勝手が分からず、

 この場は大人しくロザリーに従う事にした。


 そして男性陣であるアストロス、ジェイン。

 シュバルツ元帥、ラビンソンは男部屋へ、

 女性陣であるリーファ、ロザリー、ミランダ。

 エイシル、ロミーナの五人は女部屋へと向かった。


 幸いにも彼女等に与えられた客室は豪華であった。

 広い船室、ハイセンスの家具や調度品。

 広いバルコニー、そしてシャワーボックスも完備だ。


「へえ、想像以上に良い部屋だわさ」


 と、ロミーナ。


「ええ、これなら長い航海でも優雅に暮らせそうですね」


「その間のお嬢様の世話は、私がします」


「そうね、ミランダ。 悪いけどお願いするわ。

 ところでロザリーさん、このリンド半島から、

 次の目的地である大湾島だいわんとうは、

 どれぐらいの日数で着きますか?」


「そうだねえ、通常なら二十五日以内で着くけど、

 海が荒れる恐れもあるからねえ~。

 だから気長な気持ちで待つと良いよ」


「……そうさせて頂きます」


 リーファ自身、このような長期航海は初めての経験。

 故に分からない事が多いから、

 ここは無難にロザリーさんに従おう。

 と、この場は経験者の言葉を素直に聞き入れた。


 その後、各自、荷物をそれぞれ置いて、

 ローブやコートを脱いで、ラフな格好になった。


 リーファに関しては、

 黒い半袖のインナースーツ。

 腰には用心の為に戦乙女ヴァルキュリアの剣(・ソード)を帯剣していた。


「航海中は暇だし、

 基本は食堂で食事、色んな器具が揃ったトレーニング室や娯楽室もあるから、

 そこで汗を流すなりすると良いよ」


「確かに食べて寝てばかりだと、

 後が色々と怖いですよね」


 エイシルがそう言って、

 左手で自分のお腹をゆっくりと摩った。


「でも今日はまだ何も食べてないし、

 これから皆で食堂に行きませんか?」


 リーファの提案にロザリーも「そうだね」と頷いた。

 そして女性五人が船内の食堂へ向かうと、

 既にシュバルツ元帥達が円卓に座って、食事を摂っていた。


「あ、お姉ちゃん、見て、見て!

 こんな鶏肉の串焼きもあるよ!

 食事も肉料理から魚料理、パスタ類。

 お米料理なんかも一通り揃っているよ」


 右手に鶏肉の串焼きを持ち、

 全力で尻尾を振るジェインがそう言った。


 食堂は思って居た以上に広い。

 いたる場所に円卓や椅子。

 長テーブルなどが置かれており、

 最大で五十人ぐらいが座れそうなスペースがあった。


「とりあえずビーフステーキとライス中盛り。

 それと赤ワインを頂けるかしら?」


「……畏まりました」


 注文を取りに来たエルフ族の男性ウェイターは、

 綺麗にお辞儀して、すぐに厨房へ向かった。


「ビフテキか、俺もそれを頼むか。

 あ、ライスは大盛りで野菜サラダもつけてくれ。

 飲み物は……氷水でいい」


 シュバルツ元帥も注文を伝えて、

 リーファの円卓の迎えの椅子に腰掛けた。


「わりと長い航海になりそうだが、

 トレーニング室や娯楽室もあるし、

 時間つぶしには困りそうにないな」


「元帥としては、実戦をしたいのでは?」


「リーファ殿、流石は我がマスター

 俺の性格をよく理解されている。

 まあ海賊相手に遊ぶのも悪くないかもな」


「貴方は良くても周囲が困るわ。

 どうせジャパングに着いたら、

 こき使われるでしょうから、

 今のうちにたっぷり遊んでおくべきね」


「……そうかもな」


「じゃあ皆も遠慮無く食べて頂戴。

 何でも好きな物を注文して!

 あ、但しお酒は飲み過ぎないように!」


 リーファがそう言った事によって、

 良い感じで緊張がほぐれ、

 盟友と同行者は、食べたい物、飲みたい物を注文して、

 皆でわいわいと言いながら、楽しい一時を過ごした。


次回の更新は2025年4月26日(土)の予定です。


ブックマーク、感想や評価はとても励みになるので、

お気に召したらポチっとお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

宜しければこちらの作品も読んでください!

黄昏のウェルガリア
― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 船はかなり豪華ですね。 これでも魔導船の方だと小さい方だとは、この世界最大の船を軍事利用した場合はかなり強そう。 さて、ここから1ヶ月くらい船旅になりそうですが、どうなるでしょう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ