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第三百二十一話 長い旅路(中編)



-----主人公視点-----



 唐突に眠りから醒めるような感覚と共に私の意識が戻った。

 即座に周囲を見渡すが、少し暗いわね。 

 予定通りちゃんと転移できたのかしら?

 とりあえず私は、ロザリーさんの姿を探した。


「ロザリーさん、居るかしら?」


「大丈夫、ちゃんと近くに居るよ」


 ロザリーさんの声だわ。

 どうやら二人とも無事に転移出来たようね。


 そこで私は、背中に背負ったバックパックから、

 魔法のランタンを再び取り出した。


 そしてランタンに魔力を篭めて周囲が照らされると、

 先程の遺跡の地下通路と同じく薄茶色の壁面と天井が視界に入って来た。

 どうやら何処の遺跡の地下通路も似通っているようね。


 私は祭壇の上にある中規模の転移魔法陣の上に乗っていた。

 とりあえず魔法陣から出て、前を進むが途中でビリッとした感触で何かに弾かれる。

 目を凝らしてみると、薄い透明な結界がドーム状に周囲に張られていた。


「リーファちゃん、駄目よ。 

 先程の転移魔法陣と同様にここにも結界が張られているよ」


「そうですか、すみません」


「いいよ、皆が来るまで暇だし、

 今すぐ結界を解除するよ」


「お願いします」


 そしてロザリーさんは、

 先程同様に祭壇の近くにある黒い石碑に近づいた。

 そして黒い石碑の上にメモを乗せて、

 結界を破る詠唱呪文をゆっくりと唱えた。


「我らがハイルローガンに君臨する女神サーラよ。

 我は貴方を敬う、故に貴方も我の願いを叶えたまえ!

 我が望みは結界の解除である。 女神の叡智を持ってその結界を今うち破りたまえ!」


 先程と全く一緒の呪文ね。

 そしてロザリーさん左腕から、石碑へ魔力が吸収された。

 半瞬後、石碑の前にある結界が歪んで失せた。


「結界の解除成功。 皆が無事到着したら、

 転移魔法陣の力を一時的に封印するね」


「その辺はお任せします」


 その後、私の盟友やメイドのミランダ。

 そしてラビンソンきょうも無事にこの場に転移して来た。


「ピョン、やはり転移魔法陣は便利だね」


「ラビンソン卿は、転移魔法陣を過去に使ってたのですか?」


 と、アストロス。


「ピョン、ボクは大魔導師だよ?

 当然それくらい経験してるさ!」


「……そうですか」


 アストロスが控えめにそう言った。

 まあラビンソン卿も何だかんだで大魔導師。

 だから転移魔法陣を過去に使ってても驚かないわ。


「よーし、皆、揃ったね?

 じゃあ、これから転移魔法陣の力を一時的に封印するから、

 皆は転移魔法陣から、離れて頂戴」


 ロザリーさんの一言で、

 周囲の盟友達も素早く転移魔法陣から離れた。


「我らに叡智えいちを与えたもうた女神サーラよ。

 我は貴方を敬う、我が望みは魔力の封印である。 

 女神の叡智を持って、我が望みを叶えたまえ!」


 ロザリーさんが呪文を紡ぐなり、

 祭壇の上の転移魔法陣が光を失った。

 誰かが再び呪文を詠唱しない限り、

 転移魔法陣は作動しないのであろう。


「じゃあ、皆でこの地下通路から出よう。

 地上に出たら、近くの街で宿をとろう。

 安全を考慮して、転移は一日一度にしよう」


 まあそれが無難よね。

 正直、一日何度も長距離を転移するのは怖いわ。


「んじゃ出口を探して外に出よう」


 私達は魔法のランタンの灯りで周囲を灯しながら、前へ前へと進んだ。

 しばらく進むと目の前には一直線の通路があり、今までとは違う景色が見えた。

 通路の壁面や床にも苔が生えている。 


 更に進むと天井に届いた長い梯子があった。

 あの梯子を上った先に出入り口がありそうね。


「あーしがあの梯子を登ってみるよ。 

 皆はそこで様子を見てて頂戴」


 ロザリーさんの言葉に、私達は小さく頷いた。

 ロザリーさんは自分のランタンを背中のバックパックに戻して、

 眼前の長い梯子を登っていく。


 ……。

 ロザリーさん、見かけによらず体力と力があるわね。

 あの長い梯子をするすると登っているわ。

 三分程かけて梯子の頂上に到達。 


「天井の一部に魔力紋が刻まれている。

 多分、魔力を送れば開くタイプのヤツ。

 今から魔力を送るよ!」


 ロザリーさんはそう言って、

 右手を伸ばして、その魔力紋の中心に手の平を押しあて、魔力を流した。

 すると音もなく天井が開いて、

 突き刺すような光が地上から差し込んできた。


「じゃあ、皆もちゃっちゃっと登って頂戴」


「はい」


 私はロザリーさんに言われるまま、

 長い梯子を丁寧に登って行く。

 結構な高さね。

 

 落ちたら大怪我するわ。

 これを全員が登るには、結構時間がかかりそうね。


 約三分後。

 私も地下遺跡から地上に出る事に成功。


 天を見上げれば、太陽が燦々と輝いている。 

 時間的には昼過ぎくらいね。

 周囲を見渡すと石造りの大きな遺跡が目に入る。 

 多分これがさっきまで居た遺跡でしょう。


「とりあえず無事に出れたわ。

 残りの人も上がって来て頂戴」


 するとエイシル、ジェイン、アストロス達は、

 普通に梯子を登らす、飛行魔法「フライ」で、

 地上まで浮上して来たわ。


「あっ、最初のロザリーさんは、

 ともかく二番目以降は、

 普通にこうして飛んできたら良かったのね」


「ええ、まあこれはジェインちゃんのアイデアですが」


 と、エイシル。


「えへへ、お姉ちゃん! オイラ、賢いでしょ?」


「ええ、こういう機転が効く人は好きよ」


「ワン、ワンッ! もっと褒めてワンッ!」


「盛り上がっているところ、悪いけど、

 今から近くの中堅都市アブザールへ向かうわ。

 安全を考慮して、転移魔法陣の使用は一日一回。

 多分、リンド帝国へ行くまで、後三回は転移する必要があるわ」


「了解です、さあ皆でロザリーさんの後を追いましょう」


 そして私達は、中堅都市アブサールまで、

 歩いて冒険者区の中級の宿屋に泊まった。


 現時点でルエズ運河の半分を過ぎたところだわ。

 ここから後、三回も転移するのか。

 結構疲れそうだし、宿に泊まる間は、

 良く食べて、飲んで、寝る事にするわ。


次回の更新は2025年4月19日(土)の予定です。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 転移魔法を使うのにも色々と魔法を使わなくちゃいけないので面倒ですね。 まぁ、国家間の移動なので厳重になるのも分かりますが。 さて、中堅都市アブサールはどんなところでしょうか。楽…
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