表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

315/382

第三百十二話 王太子の甘言(中編)



-----主人公視点-----


 6月23日の午後13時過ぎ。

 私達は男性ヒューマン執事に案内されて、

 アスラ王宮の一階の会議室に着いた。


 会議室の中は、

 部屋の中央に配置された白大理石の長テーブルに、

 黒革張りの樫木の椅子があり、

 壁を背にしてラミネス王太子が上座に座り、

 その右隣に先の戦争で、

 王太子殿下の副官を務めたレオ・ブラッカー氏が座る。 


 長テーブルの右側に、

 グレイス王女とエルネス団長、水色のローブ姿のエイシルが座っていた。


 ジェルミナ共和国のジュリアス将軍と第一統領レーガー。

 そして青いケープマントを羽織ったラッピー・ラビンソン卿。

 ピンクのドレス姿のロミーナの姿も見えた。


「リーファ嬢とその盟友の方は、

 左側の席に座るが良い」


「はい」


 私は王太子殿下の言葉に、

 大きく頷いて、

 私、シュバルツ元帥。アストロス、ジェイン。

 という順番で左側の椅子に座った。


 全員合わせて13人か~。

 グレイス王女やエルネス団長。

 そしてジュリアス将軍とレーガー統領が居るのは予想外だったわ。


「やっほー、リーファさん。 お久しぶり」


「グレイス王女殿下、お久しぶりです。

 王女殿下もお元気のようで何よりです」


 相変わらずこのエルフ族のお姫様は乗りが良いわね。


「しかし意外と凄い面子が揃ったわね。

 まるでガースノイド戦役せんえき時のようだわ」


「グレイス王女殿下、今日は平和な話し合いの場です。

 ですのでお気楽な気持ちで、会議に参加してください」


「そう願いたいところね」


 ラミネス王太子の言葉にそう返すグレイス王女。

 少し含みのある言い方ね。


 どうやらこの場に呼ばれた事に、

 グレイス王女も少し不満があるようね。

 こういう場合は様子を見るべきね。


 だがホストであるラミネス王太子は、

 非常に落ち着いている、この辺は流石ね。

 そして場の空をほぐすように、彼は語り出した。


「では、早速だが会議を始めたいと思います。

 会議の議題は、東洋の島国「ジャパング」に関しての事です。

 既に皆様もご存じでしょうが、

 我がアスカンテレス王国は、

 東洋の島国「ジャパング」に多くの使者や特使を送っております。

 ですが「ジャパング」の政府。

 そして反政府の首領は予想外に優秀で、

 我々がの国の支配権を確立するまでには至っておりません」


 ラミネス王太子は、ここで一度言葉を区切って、

 周囲の会議の参加者達に視線を向けた。

 誰も彼もがポーカーフェイスで、口を閉ざしていた。


「ですのでエストラーダ王国。

 そしてジェルミナ共和国にも協力を仰ぎたく存じます」


「協力って具体的に何をすれば良いのかしら?」


「グレイス王女殿下。

 まずはリーファ殿の盟友に彼女と同行して、

 「ジャパング」へ長期遠征して頂きたく存じます」


「ふうん、つまりエイシルにまたリーファさんと一緒に、

 行動するようにしろ、という訳かしら?」


「王女殿下、その通りでございます」


「ふうん、でも確約は出来ないわね。

 エイシルにも彼女の生活があるし、

 ……エイシル、貴方的にどうなの?」


「い、いえ……急に話を振られて困惑してます。

 正直、どう答えていいか、悩んでおります」


 エイシルの反応は正常ね。

 こんな話をいきなり振られたらそりゃ戸惑うわ。

 でもここから甘言を弄するのが我等の王太子なのよね。


「まあ確かにいきなりは決断を出来ないでしょう。

 但しこの任務を受けてただけら、

 前金として戦乙女ヴァルキュリアの盟友には、

 5000万ローム(約5000万円)を支払わせて頂きます」


「5000万ローム(約5000万円)っ!?

 それはマジだピョンか!」


「ら、ラビンソン卿、声が大きいですぞ?」


 5000万の大金に釣られたのは、ラビンソン卿。

 ジュリアス将軍が彼を窘めるが、

 当の本人は鼻息を荒くして瞳を輝かせていた。


「尚、月々の給金として300万ロームも支払います。

 任務の成功具合によっては、

 成功報酬の方にも色をつけたいと思います」


「いいね、いいね。 良し、ボクは参加するピョン」


 決断、早っ!

 ある意味、彼のこういう所は凄いと思うわ。

 でもマズい流れね。

 勝手に私が遠征に参加する方向で話が進んでない?


「ラビンソン卿、貴方の派遣は、

 この統領である私が決める。

 それで王太子殿下、ラビンソン卿個人の報酬は、

 理解しましたが、我が国に対してのメリットをお聞かせください」


 レーガー統領がストレートにそう問う。


「そうですね、私の主目的は、

 「ジャパング」における金鉱山の採掘権を得る事です。

 の地には、まだまだ黄金が眠ってます。

 また「ジャパング」は、ほんの数年前までは、

 鎖国状態だったので、海外事情に疎く、

 我々が金の代わりに銀を取り引き材料に使って、

 彼等から多くのきんを搾取している、というのが現状です」


「ほう」


「へえ」


 あっ、レーガー統領とグレイス王女の目の色が変わった。

 成る程、この話が本当ならば、

 エルフ族と兎人ワーラビットとしても、

 この巨大利権を無視する事はないでしょう。


 それを最初から見越した上で、

 このように話を切り出している。

 やはりこの王太子、並の王族、男ではないわね。


「エストラーダ王国とジェルミナ共和国。

 この両国の協力を得れたら、まさに虎に翼。

 そしてその恩に報いるべく、

 それ相応の報酬と対価を支払わせて頂きます」


「悪くない話ね。

 とりあえず話だけでも聞かせて頂くわ」


「私も同じ意見です。

 但し妙な駆け引きは止めて頂きたい。

 お互いに腹を割って、話し合いましょう」


「ふふっ、勿論ですよ」


 ……。

 あのう、私の意思は無視ですか~?


 まあここで「ノー」と強く言うのはまだ早いわ。

 そして私も少しだけ興味が出てきたわ。

 「黄金の国(エルドラド)」かあ~。


 どんな国かは知らないけど、

 この国に眠る金は、良くも悪くも興味深いわね。

 

 ……。

 でも最近、お金周りも良いし、

 ここで無理する必要もないよねえ。


 だけど今の生活に退屈しているのも事実。

 とりあえず話だけでも聞いてみましょうかね……。



次回の更新は2025年3月19日(水)の予定です。


ブックマーク、感想や評価はとても励みになるので、

お気に召したらポチっとお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

宜しければこちらの作品も読んでください!

黄昏のウェルガリア
― 新着の感想 ―
ラミネス王子はどうしてもリーファにジャパングへ向かわせたいようだ。  だが彼女が金で動くとは思えないし、何か代わりのものを餌にする気がする。  リーファは戦闘には強いけど、政治的な駆け引きはうまくない…
更新お疲れ様です。 お金に簡単に釣られるのはラビンソンですね。 そして、第二部でも彼の活躍があるというのは嬉しいです。 それにしても、ラミネス王太子もかなり大盤振る舞いな気もしますね。 やはり金の…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ