表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

313/380

第三百十話 楽しい誕生日会(後編)


-----主人公視点---


 会場は立食形式で、

 食堂と大広間もそれなりに広いので、

 誕生日会の参加者もゆったりとしながら、

 各テーブルに置かれた料理に手をつけ始めたわ。


 疲れた時を想定て、

 部屋の端の方に椅子も用意しておいた。


 お肉は牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉。

 と一通り備えておいたわ。

 ジェインがせわしくなく牛肉と鶏肉を食べていた。

 ジェインは相変わらずの食いしん坊ね。


 後はビーフシチューやスープ。

 パスタ料理や緑の野菜も一通り用意して、

 お酒も赤葡萄酒、白葡萄酒、火酒。

 蜂蜜酒、エール、スコッチやブランデーとそれなりに用意したわ。


 でも殆どの参加者がお酒に手をつけてないわね。

 まあ獣人のジェインやロミーナがお酒を飲まないのは、

 分かるけど、お酒を飲んでいるのはシュバルツ元帥だけね。


 ちなみに元帥は、

 赤葡萄酒の入ったワイングラスを右手に持ち、

 左手でハムなどを摘まんで、口の中に入れていた。


 でも最低限のマナーは心得ているようね。

 元帥もかつては帝国の重鎮。

 だからこういうパーティでの自分の立ち位置を理解してるようね。


「リーファさん、今日はわざわざご招待して頂き、

 誠にありがとうございます」


「本当ね、今日の料理はとても美味しいだわさ」


「エイシル、ロミーナ。

 貴方達は私の盟友。 だからこの場に呼ぶのも当然の出来事よ」


「ボクはリーファさんのそういうところが好きです」


「あたしもだわさ」


 うふふ、エイシルとロミーナも楽しんでくれてるようね。

 こういう風に喜ばれると、主催者としても嬉しいわ。


「あ、エイシルちゃんにロミーナちゃん。

 お久しぶりだワン」


「エイシル、ロミーナ。 お久しぶり」


「ジェインにアストロスくん、お久しぶりです」


「二人とも元気そうね~」


 エイシルとロミーナがそれぞれ挨拶を交わした。


「シュバルツ元帥もこっちに来なよ?」


「いやジェイン、俺はいいよ」


「そうよ、元帥。 恥ずかしがる事はないわ。

 ただ普通に言葉を交わすだけで良いのよ?」


 私がそう言うと、元帥は「嗚呼」と頷いて、

 こちらに寄って来た。

 この人、意外とシャイなのかしら?


「二人とも久しぶりだな」


「ええ、元帥もお元気そうで何よりです」


「そうね、元帥は相変わらずダンディね」


 エイシルとロミーナの言葉に、

 元帥が少し困ったような表情を浮かべる。

 こういうところは少し可愛いわね。


 でもこの五人が揃うのは、

 約半年ぶりくらいね。


 そう思うと結構時間が経った気もするけど、

 皆、特に変わってなくて、少し安心したわ。


 そして私達は、

 料理を乗せたお皿を左手に持って、

 右手のフォークやスプーンで料理を口の中まで運んだ。


 ……。

 ウン、主催者の私が云うのもアレだけど、

 このローストチキン、かなり美味しいわね。


「おや、おや、皆で楽しそうだね」


 そう言って、ラミネス王太子がアイリーン様と腕を組んで、

 こちらに向かって、歩いてきた。

 とりあえず私達は、綺麗なお辞儀をした。


 するとラミネス王太子は、

 左手を軽く上げて、その青い瞳でこちらをジッと見据えた。


 これは品定め?

 あるいはこちらを観察してるようね。

 あ、視線が合ったわ。

 すると王太子殿下は、白い歯を見せて笑った。


「皆、元気そうで何よりだ。

 でもリーファ嬢は、最近、夜会や舞踏会に参加しないな。

 お気楽な貴族、領主生活にも少し飽きたんじゃないかな?」


「いえ……」


 ……。

 ここは曖昧に答えておくべきね。

 こういう時の王太子殿下は、何か企んでいる可能性が高いわ。


「せっかくかつての盟友も集まったところだし、

 少し場所を変えて、話してみないか?

 アイリーン、悪いが君は席を外してくれ」


「はい」


 阿吽の呼吸で、アイリーン様は一礼してこの場から去った。

 ……やはり何かの任務でも依頼するつもりのようね。

 でもここで断ると、角が立つ。


「では大広間から庭のテラスへ出ますか?

 皆も時間は良いかしら?」


 私の提案にかつての盟友達も一応は頷いてみせた。

 

「うむ、ではリーファ嬢とそのご友人の方々。

 庭のテラスで少し話し合おうじゃないか」


「では、王太子殿下。

 私の後へついて来てください」


 そして私はこの場に居る全員を大広間から、

 庭のテラスに案内した。


 庭のテラスの芝は短く刈り上げられており、

 その庭の中心部に大きな池があり、

 程よい場所に白いガーデンチェアが幾つか置かれていた。


「立ち話も何だし、君達は椅子に座りたまえっ」


「いえ、私は立ったままで良いです」


「じゃあオイラは座らせてもらうよ」


「アタシも少し疲れたので、休ませてもらうだわさ」


 ジェインとロミーナがそう言って椅子に腰掛けた。

 だがエイシル、アストロス、元帥は、

 立ったまま、視線を王太子殿下に向けていた。

 すると王太子殿下が芝居がかった口調で語り出した。


「端的に問おう。 君達は今の生活に満足しているかね?

 もし退屈しているようであれば、

 君達、そして我がアスカンテレス王国にとって、

 大いなる恵みをもたらす特務を受けてみないか?」


「……特務ですか」


「嗚呼」


 ……。

 特務と来たか。

 ここは迂闊な事は云えないわね。


 正直、今の生活にも飽きてきたけど、

 かといって困難な特務を安易に受ける気にはなれないわ。

 だからここは様子見しましょう。


「リーファ嬢、そんなに固くなる必要はないよ。

 大丈夫だよ、先のガースノイド戦役せんえきのような

 過酷なミッションを君達に無理矢理受けさせるつもりはないさ。

 ただこの特務を果たせば、

 私、そしてアスカンテレス王国。

 また君達にも大きな見返りがある話さ」


「……それはどのようなお話でしょうか?」


「端的に云えば、君達に他大陸へ行ってもらいたい。

 先の戦いでエレムダール大陸の各国は、

 長い戦争の疲れを癒やしている時期だが、

 それだけでは国はうるおわん。

 多くの国が他大陸の各国に進出している」


「それは私も存じておりますわ。

 要するに私達に他大陸侵攻の先兵せんぺいになれ。

 というお話でしょうか?」


「ふふふ、君は相変わらず理解が早い。

 だがその国には既に我が国の使者が派遣されており、

 その国の政府にも通じている状態だ。

 だから君達は、その使者や特使に従い、

 色々とミッションをこなしてもらう事になるだろう」


「王太子殿下こそ相変わらず手回しが良いですわね。

 それで何処の大陸へ行く形になるのですか?

 アーメリア共和国? アレニア大陸でしょうか?」


「違うよ」


 私の言葉に王太子殿下が首を左右に振る。

 そして私に目線を合わせながら、

 王太子殿下の凛とした声が辺りに響いた。


「その国は遙か東方にある東洋の小さき島国。

 我々はジャパングと呼んでいるが、

 最近ではこう呼ばれている。

 「黄金の国(エルドラド)」とね」


 「黄金の国(エルドラド)」。

 この東洋の小さき島国で、

 私は今後、様々な体験をする事になるが、

 それが私にとって良かったかは分からない。


 だがこの「黄金の国(エルドラド)」での冒険。

 そして戦いは、私にとって忘れがたい思い出の日々となるのであった。


 その中でもこの小さき島で出会う剣客集団は、

 私やその盟友達にとっても、

 忘れがたい印象を強く脳裏に刻み込んだ。


 でもこの時の私達は、

 「黄金の国(エルドラド)」と聞かされても、

 特に深い関心を示さず、

 注意を払いながら、王太子殿下の言葉に耳を傾けていた。



次回の更新は2025年3月12日(水)の予定です。


ブックマーク、感想や評価はとても励みになるので、

お気に召したらポチっとお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

宜しければこちらの作品も読んでください!

黄昏のウェルガリア
― 新着の感想 ―
 ここからジャパングにいくのですね。もちろんラミネス王子にも腹に一物がありそうですが。  リーファたちがどう動くか楽しみですね。ではまた。
更新お疲れ様です。 これで、第二部タイトルの「黄金の国」に繋がるわけですか。 リーファ自身あまり興味が無さそうだったのでどう繋げるのかと思いましたが、かなり上手く繋がったと思います。 移動も緻密に…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ