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第三百九話 楽しい誕生日会(前編)


-----三人称視点---



 5月も終わり、6月3日を迎えた。

 今月の16日は、リーファの誕生日である。

 なのでささやかだが誕生会を開く事となった。


 誕生日会の参加者は、基本的に身内だが、

 一部の者には招待状を送る事にした。


 その一人目は、アスカンテレス王国のラミネス王太子。

 そのきさきと護衛数名。


 なんだかんだでラミネス王太子には、世話になった。

 だから形式的だけでも招待状を送るべき。

 リーファと盟友、

 そして執事とメイドと話し合った結果、こうなった。


 次の招待者は、エイシルとロミーナ。

 これに関しては、純粋に彼女等と再会したい。

 という理由で誰も異議を唱えなかった。


 今は離ればなれになったが、

 あの帝国との戦争――ガースノイド戦役せんえきを戦った戦友。

 実際に来て貰えるかは、分からないが、

 彼女等に招待状を出すのは、当然の礼儀といえた。


 そして三人目がエルフ族の国――エストラーダ王国の第二王女。

 グレイス・エストラーダ。


 彼女とも共に戦場で戦った仲。

 だが相手は仮にも王国の第二王女。

 だから彼女が来てくれなくても文句を言う気はない。


 ただ久しぶりに彼女に会いたい。

 という理由から招待状を送る事にした。


 もしこの全員が参加すれば、

 従者や護衛を含めたら三十人くらいになるであろう。


 だから招待者には、

 誕生日である6月16日の一週間前までに、

 参加か、不参加かを書状で伝えて欲しい。

 という事を予め招待状にしるしていた。


「私としては、誕生日会は些細なもので、

 一向に構わないけど、一国の王子や王女を呼ぶとなると、

 話は別だわ、だから誕生日会の準備は進めつつ、

 ラミネス王太子とグレイス王女の参加か、不参加で、

 誕生日会の規模も変えようと思うわ」


「はい、それが無難な判断と思います」


「ウン、オイラもアストロスくんと同じ意見だワン。

 でも出来れば、久しぶりエイシルちゃんやロミーナちゃんに会いたいね」


「俺も基本的にどちらでも構わん。

 正直、誕生日会というものが合うガラじゃないしな」


 と、シュバルツ元帥。


「まあ私自身そんなに乗り気じゃないわ。

 でも一応は開催しておこうという感じよ」


「お嬢様は今や王国の英雄。

 更には領主でもあるので、

 最低限の催し事は、開くべきでしょう」


「ウン、ウン、アストロスくんの言う通り」


「俺は周囲の決定に従うまでだ」


「そうね、とりあえず招待客の参加状況次第という事で」


 そしてリーファの誕生日一週間前の6月9日。

 ラミネス王太子からは参加の通知。

 エイシルとロミーナからも参加の通知。


 だがグレイス王女からは、不参加の通知が届いた。

 どうやら彼女も国事で色々と忙しいようだ。


「まあグレイス王女も忙しい身でしょうから、

 これも仕方ないわね。 でも王太子殿下とそのお妃様も

 ご参加するなら、パーティの規模もそれなりにすべきね」


「ええ、それが礼儀でしょう」


 と、アストロス。


「ウン、まあオイラは特に何もしないけどね」


「ふふっ、俺もジェインと同じだ」


「ではそういう方向で行きましょう」


 それから一週間は、

 誕生日会の準備に明け暮れる事となった。

 基本はリーファが仕切り、

 アストロスやメイドのミランダ、執事のリックスが

 陣頭指揮を執って、誕生日会の準備を整えた。


 そして迎えた聖歴せいれき1758年6月16日。

 リーファは、19歳の誕生日を迎える事となった。


 パーティ会場は、フォルナイゼンていの一階の食堂と大広間。

 参加者が具合を悪くした、あるいは小休止したい時には、

 二階の客間で休んでもらう事にした。


 そしてラミネス王太子が妃と従者と護衛を連れて、颯爽と現れた。

 王太子は上下共に黒の礼服姿。

 妃であるアイリーンは、白いドレス姿であった。


 リーファは王太子妃おうたいしひアイリーンとは、

 初対面であったが、すぐに彼女に好印象を抱いた。


 アイリーンは身長162センチ(約162センチ)。

 品よくハーフアップに結った艶やかな栗色の髪。

 手足は程よい長さだが、身体に凹凸があり、

 リーファほどではないが、良いプロポーションをしていた。


「リーファ嬢、久しぶりだな。

 こちらが私の妻である王太子妃おうたいしひアイリーンだ」


「初めまして! 王太子の妻であるアイリーンです。

 リーファ様の勇名はかねがね伺っています」


 王太子妃おうたいしひアイリーンは、そう言って、

 両手で白いスカートの裾を摘まんで、上品かつ慎ましやかに一礼した。

 一点の曇りもない見事な淑女の礼(カーテシー)であった。


「初めまして! 王太子妃おうたいしひアイリーン様。

 私がリーファ・フォルナイゼンでございます。

 以後、お見知りおきくださいませ」


「ええ、リーファ……さんとお呼びしていかしら?」


「はい、勿論でございます」


「リーファさん、どうかわたくしとも仲良くしてくださいませ」


「はいっ!」


 リーファの両手には白い手袋、靴は踵の高くない白い靴を履いていた。

 そしてリーファは、今日の為に用意した光沢のある青いドレスのスカートの裾を

 両手で摘まんで、上品かつ華麗に一礼する。

 こちらも完璧な淑女の礼(カーテシー)であった。


「「リーファさん」」


 聞き覚えのある声で呼ばれて、

 リーファは後ろへ振り返る。

 するとそこにはドレス姿のエイシルとロミーナが立っていた。


 エイシルは光沢のある黒いドレス。

 ロミーナはパステルピンクのドレス姿であった。


「ああ、二人ともお久しぶり!

 今日はわざわざ私の誕生日に来てくれてありがとう」


「いえいえ、ボクも久しぶりにリーファさんにあえて嬉しいです」


「あたしもだわさ。 元気そうで何よりね」


 こうして直に会うのは、

 約半年ぶりであったので、

 リーファもこの再会を心から喜んだ。


「お嬢様、参加者も集まりましたので、

 主賓としてご挨拶の準備を」


「アストロス、分かったわ」


 良いタイミングでアストロスが声を掛けて、

 リーファは、優雅な足取りで、

 壇上の中央に向かっていく。

 周囲の視線が自然とリーファに集まる中、

 リーファは凜とした声で、御礼の言葉を述べた。


「本日はお忙しい中、わざわざお集まり頂き、

 誠にありがとうございます。

 本日はわたくしの19回目の誕生日でございますが、

 わたくしに気を使わず、気楽に楽しんでください。

 料理やお酒、ジュースの類いも一通り揃えてます。

 また僭越ながら、

 わたくし自身が乾杯の音頭を取らせて頂きますので、

 お手元にグラスのご用意をお願い致します」


 するとミランダやリックスが素早くグラスやコップを

 誕生日会の参加者に手渡した。

 そして全員の手にグラスやコップが行き渡ると、

 リーファは乾杯の音頭を取り、頭上にグラスを掲げた。


「――乾杯っ!!!」


 参加者はリーファの乾杯を満足そうに聞いた後、

 元気良く復唱して同じようにグラスとコップを頭上に掲げる。


 こうしてリーファの19回目の誕生日会が開始された。


次回の更新は2025年3月8日(土)の予定です。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 リーファのお誕生日、おめでとうございます。 中々リーファに年が追いつきませんね。作中も現実も時間の流れが大体同じだから一生追いつけません... かと言って連載終了するとかなって…
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