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第三百八話 武陵桃源(後編)


-----三人称視点---


「グルガァァァオオオンッ!」


 双頭の龍が大口を開き、

 威嚇するように鎌首をもたげる。


 双頭の龍が一呼吸すると、

 真っ赤な火炎ブレスがその大きな口から、

 勢いよく吐き出され、リーファとシュバルツ元帥を襲う。


「せいっ!」


 リーファは左手に持った「幻魔の盾」に魔力を篭めて、

 迫り来る火炎ブレスを綺麗に吸収した。

 シュバルツ元帥は、ステップワークを駆使して、

 火炎ブレスをギリギリのところで躱した。


「リーファ殿、左側の頭部を見てみろ!」


「えっ? 分かったわ、って……!?」


 元帥の指摘通り、左側の頭部を見ると、

 眉間、そして喉笛からシュウシュウと白い煙が沸いていた。

 よく見ると傷口が塞がりつつあった。


「もしかして自動再生能力があるの?」


「そう思った方が良いな」


 と、シュバルツ元帥。


「くっ……流石はドラゴンの上位種。

 並のモンスターとは違うわね」


「長期戦は避けた方が良いな。

 ここは一気に攻め立てよう!」


「元帥、了解したわっ!!

 ……本気を出すわ! 『かみ肉体にくたい』っ!!」


 リーファは、職業能力ジョブ・アビリティ「神の肉体」を発動させた。

 次の瞬間、リーファの全身が燃えるような熱さに包まれる。


「く、く、ぐっ……」


 リーファの全身から物凄い力と魔力が溢れてくるが、

 それと同時に激しい頭痛が起こった。


 だがリーファは耐えた。

 歯を食い縛って、その痛みに耐えた。

 そして声を振り絞って叫んだ。


「――ライトニング・スティンガー!!」


 リーファの神帝級しんていきゅう剣技ソード・スキル

 技名コールと共にリーファの聖剣の切っ先から、

 目映いビーム状の光線を放出されて

 前方の双頭の龍に高速で差し迫った。


 ビーム状の光線は、鋭く横回転しながら、

 神速の速さで大気と地を切り裂いた。


 そしてビーム状の光線は、暴力的に渦巻きながら、

 双頭の龍の腹部を物の見事に貫いた。


「グ、グ、グアアアァァ……アァァァッ!!!」


 ビーム状の光線は、

 双頭の龍の腹部を貫通して、

 地を削りながら、双頭の龍の後方の壁面に命中。


 そのまま壁面を削って行くが、

 途中で勢いを失い、光線はいつの間にか消え失せた。


「アァァァ……アァァァ」


 双頭の龍は、腹部に穴が空いた状態で、

 じりじりと後ろに後ずさった。

 この好機を逃すまいと、次の手を打つリーファ。


「――ゾディアック・フォースッ!!」


 リーファはここで職業能力ジョブ・アビリティ『ゾディアック・フォース』を発動させた。

 彼女の右手の聖剣に全体の六割の魔力が宿った。

 

「これで終わりよっ!

 ――ライトニング・ブレイクッ!!」


 リーファがそう叫ぶと同時に、

 右手に持った聖剣に雷光が宿る。

 ここは温存しない。

 そう胸に刻み込み、六割のパワーで技を発動。


「ハアァア、アアアァァァッ!!」


 リーファは気勢を上げて、

 雷光の宿った聖剣を前方に突き出した。

 そして間を置かずして、

 聖剣の切っ先から、鋭い稲妻の光が放たれた。


「グアアァァァ……アァァァ……ァァァッ!!」


 鋭い稲妻が双頭の龍の身体を焼き尽くした。

 直撃を受けた双頭の龍は、

 地獄の底から聞こえるような、断末魔をあげた。


 既にこの一撃で勝敗は喫していた。

 双頭の龍は、何とか立っているものも、

 殆ど意識を失いかけている状態。


 後、数十秒もすれば息絶えるであろう。

 リーファがそう思った矢先に、

 シュバルツ元帥が漆黒の魔槍を両手に持って前へ出た。


「――ミリオン・スラストォッ!!」


 シュバルツ元帥は、そう叫びながら、

 両手で持った漆黒の魔槍で高速の突きの連打を放つ。

 帝王級ていおうきゅう槍術そうじゅつスキル。


 突き、突き、突き、突き。

 その魔槍の穂先で何度も双頭の龍の身体を突き刺した。

 すると双頭の龍は、力なく背中から地面に倒れた。


 双頭の龍――ツインヘッド・ドラゴンの双頭は白眼を剥き、

 身体を何度か震わせたが、数十秒後に動かなくなった。


「ちょっと! 元帥っ!」


「悪いな、リーファ殿。

 俺もレベルは上げておきたいのでな。

 ハイエナ行為だが、ここは見逃してくれ」


「……まあ良いですわ。

 但しやる前に一声掛けて欲しいわ」


「悪い、悪い、以後気をつけるよ」


「元帥、パーティ内でのハイエナ行為は、

 一声掛けるのが礼儀だワン」


「ええ、この行為は少し関心しませんよ」


「ジェイン、アストロスくん。

 悪かったよ、ほんの出来心さ」


 元帥のハイエナ行為で、

 パーティの空気が少し悪くなったが、

 リーファ達もすぐに気を取り直した。


「とりあえず解体作業を行いましょう」


 アストロスがそう言って、

 腰のポーチから採取用の短剣を取り出して、

 ツインヘッド・ドラゴンの亡骸を解体し始めた。


 牙や鱗、爪。

 そして焼け焦げた体皮。

 死肉は殆ど焼け焦げていたが、

 一部、無傷な肉を綺麗に解体して、

 氷属性魔法で生成した大量の氷を

 中規模サイズの皮袋にさっと詰め込んだ。


「龍の肉なんて重要あるの?」


「ジェイン、一部の貴族や富豪には需要あるよ。

 まあ珍味の類いだけどね」


「ふうん、世の中ゲテモノ食いが居るワンね」


「とりあえず今日はこれで探索終了で!

 ツインヘッド・ドラゴン以外にも

 ハイ・オーガやフレイム・ガルムも倒したし、

 これはギルドの報酬が楽しみだわ」


「そうだな、今日はもうこれで上がろう」


 その後、全員で転移石を使い、

 迷宮の出入り口まで帰還を果たした。


 迷宮の近くで客を待っていた馬車の御者に声を掛けて、

 リーファとアストロス。

 シュバルツ元帥とジェインと二組に分かれて、

 二台の馬車に乗った。


 二時間後に王都アスカンブルグに到着。

 リーファは二台の馬車の御者にたっぷりと運賃を払い、

 それから冒険者ギルドへ向かい、

 ギルドの受付でドロップ・アイテムと魔石を係員に渡した。


 鑑定時間は四十分もかかったが、

 全てのドロップ・アイテムや魔石が綺麗に換金された。


 討伐依頼の報酬に加えて、

 ドロップ・アイテムや魔石の換金で総額2000万ローム(約2000万円)。

 それを四人で均等に割って、一人頭500万ロームを荒稼ぎ。

 一日の報酬としては破格であった。

 

「ワオーン! 一日で500万!!

 これは毎日ビーフジャーキーが食えるだワン」


「苦労した甲斐がありました」


 と、アストロス。


「ふう、流石は戦乙女ヴァルキュリアとその盟友。

 たかが討伐依頼でこの稼ぎよう。

 やはり君達は規格外だな」


「いえ、元帥――貴方も力も大きいわ」


「気にするな」


「とりあえず今夜は少し贅沢な食事にしましょう。

 せっかくですし、王都内のレストランをハシゴする。

 なんてのも悪くないね」


「ワオン、それはいいね!

 ……でお姉ちゃんの奢り?」


「ふふふ、ジェイン。 ええ、私の奢りよ。

 正直、お金は余ってるからね。

 だから今日一日くらい羽目を外しましょう」


「わーい、お姉ちゃん大好き!」


「お嬢様、お言葉に甘えます」


「うむ、俺もご厚意に甘えさせて頂こう」


 その後、リーファ達は王都の商業区で、

 高級レストランをハシゴしたが、

 ジェインとシュバルツ元帥が想像以上に飲み食い、

 たった数時間で200万近くの金を浪費したが、

 リーファは気にする事無く、

 上機嫌で鼻歌を歌いながら、仲間と共に帰路についた。


次回の更新は2025年3月5日(水)の予定です。


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― 新着の感想 ―
 リーファは冒険者生活を楽しんでいますが、マリーダとの戦いを超える出来事は皆無ですね。  今はまだいいですが、徐々に平和が苦痛になりかけていく気がする。  高級レストランのハシゴで浪費するのも、金銭感…
更新お疲れ様です。 「高級レストランをハシゴ」だなんて単語、この作品でしか聴かなさそうですね。 それにしても、元帥の株が揺蕩っています。 いいやつかと思えばハイエナ行為をするし、悪いやつかと思ったけ…
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