第三十話 リーファ対女将軍(中編)
---主人公視点---
とりあえずネイラールの能力値が知りたいわ。
ここはランディに分析してもらうわ。
「――ランディ! あの女の分析を頼むわ!」
「了解。 ――分析開始!」
するとランディの両眼が眩く光り、その身体も発光したように輝きだした。
だがネイラールも同様に守護聖獣に分析を命じた。
「――ブラックス、分析お願いっ!!」
「了解だコンッ、――分析開始!」
これでお互いに相手の能力値を知る事になるけど、
かえってその方が戦いやすくなりそうだわ。
この女もかなり強そうだけど、
多分私の方が能力値が高いと思うわ。
「……リーファ殿。 この女かなり強いぞ。 能力値も魔力もかなり高い。
だが総合力では君の方が上だ。 だからさっさと始末して、残りの敵を叩こう!」
分析を終えたランディが淡々とそう述べた。
そして私とランディの意識が共有化されて、
ネイラールの能力値の数値が露わになった。
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名前:ビアンカ・ネイラール
種族:ダークエルフ♀
職業:魔剣士 レベル46
能力値
力 :1164/10000
耐久力 :1590/10000
器用さ :773/10000
敏捷 :1294/10000
知力 :1171/10000
魔力 :2481/10000
攻撃魔力:1593/10000
回復魔力:1474/10000
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能力値はかなり高いわね。
でも総合的な数値では互角、いや私の方が上回っているわ。
だからここは強気で正面から戦うわ。
「『能力覚醒』っ!!」
私はここで職業能力・『能力覚醒』を発動させた。
これで五分間は私の能力値の数値が倍となった。
でも蓄積時間が十分あるから、
この五分間で勝負をつけるわ。
「行くわよ! 『ソウル・リンク』ッ!!」
「了解だ、リンク・スタートォッ!!」
そして私とランディの魔力が混ざり合い、
私の能力値と魔力が急激に跳ね上がる。
するとネイラールも同様に『ソウル・リンク』を発動させた。
「ブラックス、行くわよ! 『ソウル・リンク』ッ!!」
「了解だコン、リンク・スタートォッ!!」
これによってネイラールと漆黒の狐の魔力が混ざり合う。
そして私同様にネイラールの能力値と魔力も急激に跳ね上がった。
「っ!?」
凄い闘気だわ。
まるで鋭い刃のような刺々しい闘気。
流石は帝国の女将軍、一筋縄では行きそうにないわね。
「これでお互いに強化されたわね。
後は己の力と技能がモノを言うわ。
でも私は負けるつもりはない、ダークエルフの力を思い知るがいい!」
手にした大剣の柄を両手で握り締め、構えるネイラール。
私も同様に左手で盾を持ちながら、右手で戦乙女の剣を構えた。黒光りする大剣を手にしながら、ネイラールが摺り足で間合いを詰める。
「行くぞぉっ!!」
次の瞬間、一気に距離を零にして斬りかかるネイラール。
それに対して私は聖剣で薙ぎ払いを繰り出す。
聖剣と大剣が、火花を散らし、硬質な金属音が周囲に響き渡る。
「っ!?」
お、重い。
何という重い一撃なの!?
こんな重い斬撃は初めてだわ。
私はそう思いながら、眉間に皺を寄せた。
だが視線を前に向けると、ネイラールも驚いた表情をしていた。
……どうやら向こうも私の力に驚いているようね。
ならばここは攻めるわ!
「『トリプル・ドライバー』!」
私は猛然と地を蹴り、全身全霊の力を持って、怒濤の三連撃を放った。
だがネイラールも冷静に剣を捌く。
私の強引な攻めに歯軋りしながらも、
繰り出した剣戟を必死に払い、受け流し、受け止めて弾き返す。
やはりこの女は強い。
でも勝てない相手じゃないわ。
「ハアアアァァァッ! まだよっ!
まだまだこんなもんじゃないわっ!! ――ダブル・ストライク」
「――甘い。 プル・クラッシュゥッ!!」
私は再び連撃を放った。
だがネイラールも漆黒の大剣で斬り返す。
鋭く速い斬撃が眼前を通過し、一度防げば次には二度の剣閃が迫りくる。
正面で向き合いながら、私は金色の髪を翻し、
側面へ、死角へと回り込み怒涛の乱打を繰り広げた。
激しく打ち合う聖剣と黒刃の大剣。
この女ダークエルフの剣技は、少なく見ても英雄級以上の腕前だわ。
だがこちらは女神から授かった聖剣と盾があるのよ。
故に互角な攻防に見えて若干こちらが有利だ。
だからここは引かないわ、攻めるわ!
「――ハアアアァッッ!!」
「甘いわっ!!」
私達は真っ向から衝突して、力と速度の戦いを継続させる。
私とネイラールは幾度となく互いの位置を入れ替えた。
私は再び前進して、くるりと体を捻り、袈裟斬り、逆袈裟と神速の速さで剣技を放つ。
薙ぎ払われた漆黒の刃で弾かれたが、
防御した勢いで後方にやや吹っ飛ぶネイラール。
それと同時に大剣を地面に突いて転倒を防ぎ、踏みとどまり、即座に体勢を立て直した。
良い動きしてるわ、敵ながら見事だわ。
しかし流れはこちらにある。
だからここは更に攻め続けるわ!
「トリプル・ドライバーッ!!」
「くっ……!?」
再度、繰り出される三連撃。
その猛攻の前にネイラールも苦悶の表情を浮かべる。
私はそこから更に連撃を放ち続けた。
次第に私の聖剣がネイラールの漆黒の鎧を鋭利に切り刻んでいく。
肌を掠め、強引に振り抜かれる聖剣に対して、
ネイラールは咆哮とともに足元に大剣を振り下ろした。
凄まじい威力の一撃に地面が大きく抉れ、土煙が生じる。
私は咄嗟に後ろにジャンプするが、ネイラールもまた全力の跳躍で後方に下がった。
「我は汝、汝は我! 聖なる大地ハイルローガンよ。
我に力を与えたまえ! 食らえっ!! 『シャドウ・インパクト』」
「リーファ殿、この魔法はかなり強力だ。
これは回避出来ない、だからその盾であの漆黒の波動を吸収するんだっ!」
「――分かったわ、ふんっ!!」
ランディに言われて、私は左手に持った「幻魔の盾」を前へ突き出した。
そして私は眉間に力を篭めて、「幻魔の盾」に魔力を流した。
すると「幻魔の盾」が目映く光り、眼前の漆黒の波動を綺麗に呑み込んだ。
「なっ……吸収能力があるのっ!?」
ネイラールが驚くのも無理はない。
何故なら私自身も驚いていたからだ。
この盾、流石は女神サーラの恩恵だわ。
でもこのアドバンテージを生かさない手はない。
そして私は「幻魔の盾」を左手で構えながら、
右手で「戦乙女の剣」の柄を強く握り込んだ。
――ここから連続攻撃で一気に決めるっ!!
私はそう胸に刻み込み、地を蹴ってネイラールに迫った。
次回の更新は2023年2月25日(土)の予定です。
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