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第二百九十五話 一意奮闘(前編)


-----三人称視点---


「一気に決める! ――デス・ブラッドォォォッ!」


 マリーダは、ここで独創的技オリジナル・スキル・「デス・ブラッド」を発動。

 まずは先ほどの様に、高速の袈裟斬りを放つ。


「――ヴォーパル・ドライバーッ!」


 リーファも剣技ソード・スキルで応戦。

 だが負傷した状態だったので、

 マリーダの袈裟斬りを完全に斬り払う事は出来ず、

 斬撃の衝撃で後ろに数歩よろめいた。

 そしてマリーダは、その隙を逃さなかった。


 マリーダは、漆黒の魔剣を逆手に持って、

 炎の闘気オーラを宿らせた下から上へ切り上げる逆袈裟を放った。


「き、き、きゃあああっ!!」


 リーファの悲鳴と共に、

 リーファの身体に剣傷が再び刻まれて、

 傷口から赤い鮮血が周囲に飛散する。


 だがリーファも精神力をフル動員して、

 まずは魔力を振り絞って、

 無詠唱で上級回復魔法を使い、

 己の傷に応急処置をする。


 それと同時にマリーダが踏み込んで来た。

 傷口はある程度癒えたが、

 失った血液は戻らず、急性の貧血状態に陥るリーファ。


 しかし彼女は耐えた。

 この危機的状況で精神力で耐えた。


 マリーダが零距離で魔法攻撃を放つ前に、

 飛行魔法「フライ」を無詠唱で発動させて、

 真後ろに下がる形で地面すれすれを滑空した。


 これで二人の距離は、十メーレル(約十メートル)程保たれた。

 そして再び左手で剣傷を押さえて――


「ディバイン・ヒールッ!」


 上級魔法で再び傷を癒やす。

 だが傷を完治するまでには至らない。


 重度の貧血状態で、

 リーファの魔力も定まらず、

 魔法が上手く発動出来ないようだ。


 ――このままじゃマズい。


 リーファはそう思いながら、

 左手を腰のポーチの中に入れて、

 万能薬エリクサーが入った瓶を取り出す。

 そして左手で瓶の栓を抜いて、

 その中身を一気に飲み干した。


「……」


 万能薬エリクサーを飲んだが、

 頭痛と貧血状態は完全には治らなかった。

 だが体力と魔力は、充分に補充出来た。

 

 マリーダは本気だ。

 自分の命を擲って、挑んできている。

 これはこちらもそれ相応の覚悟を決める必要があるわ。


 リーファはそう心の中で念じながら、

 聖剣を一度鞘に収めて、腰を深く落とした。


「ふんっ、なかなかしぶといですわね」


「……」


「だんまりですか?

 まあ良いわ、ではもう一度行きますわよ!」


「――ゾディアック・フォース!」


 マリーダが踏み込むと同時に、

 リーファは職業能力ジョブ・アビリティ「ゾディアック・フォース」を発動。

 そして右腕に全魔力の四割程度の魔力を注いだ光の闘気オーラを宿らせる。


「こ、これは……マズいわ!」


「もう遅いわ! ――神速殺しんそくさつっ!!」


 リーファは腰を落とした状態から、

 剣帯の鞘から聖剣を素早く抜剣して、

 全神経を集中させて、渾身の斬撃を繰り出した。


「ハアァア……アァァァ……!!!」


 マリーダは咄嗟に後方に跳躍して、

 回避を試みたが、

 リーファの居合い斬りを完全に回避するには至らない。


 気が付けば、腹の皮を深く切り裂かれて、

 腹部から大量の血液が流れ落ちていた。


「が、がはぁっ……!!」


 マリーダは呻き声を上げながらも、

 無詠唱で「アーク・ヒール」を発動。

 すると彼女の腹部の傷もたちまち綺麗に塞がった。


 だが一度、流れ出た血液は戻らず、

 彼女もリーファ同様に貧血状態となった。


「リーファ殿、今のうちに攻めるんだ!」


「ランディ、分かっているわ」


 守護聖獣の言葉と共に、

 リーファは前へ強く踏み込んだ。


「――ダブル・デルタスラッシュッ!!」


 リーファは躊躇いなく、聖王級せいおうきゅう剣技ソード・スキルを発動。

 まずは袈裟斬りを放ち、

 マリーダの右肩口を切り裂いた。


「あ、あああっ……あああっ!!」


 喘ぐマリーダ。

 対するリーファは覚悟を決めた表情で、

 逆袈裟斬りを放っていくが――


 マリーダは先程のリーファと同じように、

 飛行魔法「フライ」無詠唱で発動させて、

 真後ろに下がる形で、

 すれすれの状態で地面を滑空した。


「――アーク・ヒールッ!」


 今度は短縮ながらも、通常詠唱で回復魔法を唱えた。

 そのおかげもあって、

 右肩口の切り傷は、完全に癒やされた。


 だがまたしても血を失った。

 そしてマリーダの視界がグラグラと揺れた。

 どうやら貧血状態が更に悪化したようだ。


 こうなると長期戦は厳しい。

 勿論、それはリーファとて同じ事であった。

 

 ――後、耐えれて二、三撃ってところね。

 ――それ以上は、回復魔法で治しても

 ――頭や身体が持たないでしょうね。


 ――ならばここは捨て身で覚悟を決めるわ。

 ――私は勝つ、絶対に勝つ!

 ――絶対にこの女に勝つ!


 マリーダは呪詛のように、

 心の中で何度も同じ言葉を反芻はんすうさせた。


「せいっ!」


 マリーダが右手で漆黒の魔剣の柄を握りながら、

 全力で地を蹴り、リーファに迫った。


「――漆黒の波動っ!!」


「なっ!?」


 ここでマリーダは、職業能力ジョブ・アビリティ「漆黒の波動」を発動。

 それと同時にマリーダの左手から闇色の波動が放出された。

 闇色の波動がリーファの全身に注がれて、

 リーファの強化能力きょうかアビリティや守護聖獣とのリンクが強制的に解除された。


 通常ならばこれでマリーダが圧倒的に優位になる筈だが、

 リーファは慌てる事なく、攻勢に転じた。


 両肩の力を抜いたまま、

 腰を深く落とした受胎で、「神速殺」を繰り出した。


「――神速殺っ!」


「耐えて見せる!」


 マリーダは左腕を曲げた状態で、

 リーファの放った居合り斬りを受け止めた。


 「ソウル・リンク」や強化能力きょうかアビリティがかかった状態では、

 この一撃でマリーダの左腕は両断されていただろう。

 だが今の状態では、左腕の神経が裂かれる程度で終わった。


「あ、あ、あ……あぁぁぁ……!!!」


 獣のような悲鳴を上げながらも、

 マリーダは地面を蹴って、リーファに迫る。


 一方のリーファも冷静であった。

 大丈夫、まだ何とかなるわ。

 でもここはあえてマリーダに攻めさせて、

 不意を突いて、反撃に転じるわ。


 だけどその為には一手もミスれない。

 ……落ち着くのよ、リーファ。

 大丈夫、これがもう最後の戦い。


 ここさえ乗り越えたら、

 後は楽なものよ、だから今だけ頑張るのよ!


 リーファはそう心に刻み、覚悟を決めた。


次回の更新は2025年1月15日(水)の予定です。


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― 新着の感想 ―
お互い追い詰められていきますね。どっちが勝ってもおかしくないです。  どちらも勝つことしか頭になく、血みどろな戦いを繰り広げていますね。迫力があります。  回復薬は傷を癒しても頭痛や貧血までは治らな…
戦いはますます分からなくなりました。必ず乗り越えて欲しいです!
更新お疲れ様です。 白熱する2人の戦い。 本当にどっちが勝つかわからないですね。 マリーダが勝つ可能性も一応見据えて、この戦いを見ているのでドキドキです。 やはり、強者同士の戦いは見ていて正しいです…
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