第二百九十一話 終焉の舞台(後編)
-----三人称視点---
最前線で暴れるマリーダとガーラ。
死を覚悟したマリーダの戦いぶりは、
まさに獅子奮迅の働きであった。
ひたすら最前線で、
攻撃魔法を唱え続けるマリーダ。
連合軍も猫族兵を中心として、
対魔結界と障壁を張り続けたが、
マリーダは、退くことなく、果敢に戦い続けた。
そしてマリーダは、
舞台女優のように声高らかにリーファを挑発した。
「私は漆黒の戦女マリーダである!
アスカンテレスの戦乙女に告ぐ。
貴君に勇気があるならば、
私との一騎打ちに応じよ!
私は逃げも隠れもしない!!!」
最初は連合軍の兵士もマリーダの言葉を無視していたが、
何度も何度も彼女が同じ事を云いながら、
魔法攻撃、また時には漆黒の軍馬に乗り、
漆黒の魔剣を縦横に振るい、
次々と連合軍の兵士を斬り捨てる光景を見て、
正直、この女とは戦いたくない。
と、次第に思うようになった。
鬼気迫るマリーダの表情には、
多くの者が恐れ慄いた。
こうなるとリーファとしても、
黙っていられなかった。
だがリーファも何も前準備なしに、
マリーダとの再戦を受ける気にはなれなかった。
とりあえずラミネス王太子に――
「スキル一覧表を見ながら、
スキルポイントを割り振りたいので、
少しお時間をください」
と、上申した。
それに対して、ラミネス王太子は笑顔で応じた。
「勿論、それくらいの時間の猶予は与えるさ。
君も悔いが残らないように、
下準備をするが良いさ」
「はいっ!」
そしてリーファとその盟友は、
警備兵に案内されて、
近くの空いている野営テントに案内された。
案内されたテントはそれなりに広く、
テントの端にランタンがぶら下がっていた。
テントの中央には円卓があり、
上座と下座に木製の椅子があった。
「ここで話し合いしましょう。
皆の意見も是非聞かせて頂戴」
「「「はい」」」「はいだわさ」
とりあえずリーファが上座の椅子に座り、
残りの四人は、立ったまま、
円卓の上に置かれたリーファの冒険者の証。
それと戦乙女のスキル一覧表に視線を向けた。
「お嬢様、今レベルはいくつになりました?」
「アストロス、え~と……レベル60になったわ」
「レベル60!? 凄いだワン。
それでスキルポイントは、いくつあるの?」
「ジェイン、丁度50ポイントあるわね。
さて、どの項目に振りましょうか……」
「リーファさんは、どの能力を上げたいのですか?」
「エイシル、そうねえ。
基本能力の底上げがしたいかも?
念動魔法に振って、
サイコキネシスとか、テレパシーを使えれば、
小技も増えて、戦い方の幅も広がるわ」
「それは良い考えだわさ。
念動魔法は、汎用性が高いのも魅力よ」
と、ロミーナ。
「でしょ? 投剣しても手元に剣を戻せるし、
剣を床や地面に落としても、
すぐに元に戻せる、とか地味に役立つのよね」
「じゃあ念動魔力に20ポイント振りましょう。
20ポイント振れば、
サイコキネシスとテレパシーとアポートを習得出来ます」
エイシルの助言にリーファが「そうね」と頷く。
そしてリーファは、
自分の冒険者の証を指で触りながら、
スキルポイント20を『念動魔法』の項目に割り振る。
すると『サイコキネシス』、『テレパシー』、『アポート』を習得。
初級の念動魔法だが、
使い道は多いので、覚えていて損はなかった。
残るスキルポイントは30ポイント。
どの項目に振るか。
リーファ達はあれこれ相談を始めた。
「スキルを振るとすれば、
剣術スキルか、勇気の項目にすべきですね。
対マリーダ戦を考えたら、
少しでも戦闘力を上げておくべきでしょう」
「オイラもアストロスくんと同じ意見だワン。
30ポイント振ったら、
新たな剣術スキルか、職業能力を覚えるかな?」
「ジェイン、ちょっと待ってね。
ええ~と……」
リーファはそう答えながら、
素早く戦乙女のスキル一覧表に目を通す。
どうやら剣術スキルは、新スキルを覚えないようだ。
だがパッシブ・スキル「勇気」に振れば、
新しい職業能力・「女神の黄昏」を覚える模様。
「剣術スキルだと、新スキルを覚えないけど、
「勇気」に振れば、新しい職業能力・「女神の黄昏」を覚えるみたいね。
その効果は……あら、地味に凄いわ」
「どんな能力なんですか?」
と、エイシル。
「この能力を使えば、
五分間の間、剣技、魔法。
そしてスキルや能力の蓄積時間がなくなるみたいよ。
つまり五分間は、色んなスキルや魔法が使いたい放題。
尚、この能力自体の蓄積時間は六十分ね」
「ワオン! それは凄い能力だワン!」
「そうね、魔力の消費量には注意が必要だけど、
一騎打ちでは、とても使える能力だわさ」
興奮するジェインと冷静な意見を言うロミーナ。
「私も覚えるべきだと思います」
「ボクもアストロスさんと同じ意見です」
アストロスとエイシルも賛同の意を示した。
リーファ自身もここは「勇気」に振る事に納得したようだ。
「私も皆と同意見よ。
ではここはパッシブ・スキル「勇気」に30ポイント使うわ」
「「はい」」「ウン」「そうね」
リーファは、自分の冒険者の証を指で再び触りながら、
スキルポイント30を戦乙女のパッシブ・スキル『勇気』の項目に割り振った。
すると『常時・力+50』、『常時・敏捷+50』を習得。
更に神帝級の職業能力・『女神の黄昏』を習得した。
「全部、割り振ったわ。
無事に職業能力も覚えたわ」
「じゃあ全ステータスとスキル表を確認しましょう」
「エイシル、そうしましょう」
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名前:リーファ・フォルナイゼン
種族:ヒューマン♀
職業:戦乙女レベル60
能力値
力 :2255/10000
耐久力 :2700/10000
器用さ :1435/10000
敏捷 :2215/10000
知力 :2650/10000
魔力 :4400/10000
攻撃魔力:2675/10000
回復魔力:2885/10000
※他職のパッシブ・スキル込み
魔法 :ヒール、ハイヒール、ディバイン・ヒール
キュア、キュアライト、ホーリーキュア
プロテクト、クイック、アクセル、フライ
フレイムボルト、ファイアバースト、フレアバスター、炎殺
ライトボール、スターライト、
ライトニングバスター、シャイニング・ティアラ
サイコキネシス、テレパシー、アポートetc
スキル :結界、対魔結界、封印結界、戦乙女の陣
戦乙女の波動、戦乙女の祝福、速射
武器スキル:イーグル・ストライク、ヴォーパル・ドライバー
ダブル・ストライク、トリプル・ドライバー
ハイ・カウンター、グランドクロス、
ライトニング・スティンガー、
ダブル・デルタスラッシュ、
ライトニング・ブレイク、シールド・ストライク
正拳突き、ローリング・ソバット、掌底打ち
能力 :予測眼 分析眼 魔力探査 能力覚醒、
魔力覚醒、メディカル・リムーバー、
ゾディアック・フォース、
零の鼓動、神の肉体、女神の黄昏
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「おお、かなり成長したね」
「ええ、これならマリーダ相手でも負ける事はないでしょう」
「でも油断は禁物だわさ。
追い詰められた敵は、窮鼠と化す可能性もあるしね」
ジェイン、アストロス。
ロミーナがそれぞれの感想を述べた。
リーファ自身もかなりの手応えを感じていた。
だがロミーナの言うように、
マリーダが窮鼠と化す可能性も否定出来ない。
だから次の戦いでも絶対に気を抜かわないわ。
と、リーファは心に深く刻み込んだ。
こうしている中にも、
マリーダは最前線で暴れ続けて、
リーファの名前を呼び続けた。
こうなるとリーファとしても、
彼女の呼びかけを無視し続ける訳にはいかなかった。
「準備は整ったわ。 良いでしょう。
あの女との最後の戦いに挑むわ」
リーファは、右手に戦乙女の剣。
左手に「幻魔の盾」を構えながら、最前線に躍り出た。
こうしてリーファとマリーダの四度目の戦い。
そしてマリーダの終焉の舞台は整った。
既に帝国と皇帝の敗北は、決まっていたが、
そんな中でもマリーダの闘志は、
全く揺らいでいなかった。
次回の更新は2025年1月1日(水)の予定です。
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