第二百八十四話 英姿颯爽(中編)
-----三人称視点---
お互いに強化能力を使用した状態で、
リーファが更に新たな強化能力を発動させた。
「女神サーラよ、我に祝福を与えたまえ!
――「戦乙女の祝福」っ!!」
リーファがそう呪文を紡ぐなり、
目映い光がリーファの身体に降り注がれた。
これによってリーファの力と耐久力、敏捷性の能力値が強化された。
更に『自動再生』の効果も発動した。
「――速射っ!!」
今度は技・「速射」を発動。
これによってリーファは大きなアドバンテージを得た。
対するシュバルツ元帥は、
自己強化をするか、一瞬悩んだが、
結局のところは現状維持を選んだ。
その理由の大半が先程の水の聖龍戦で、
激しい寒暖差によって、
シュバルツ元帥の体調のバランスが崩されていたからだ。
強化技や強化能力は、
その効力が強い反面、副作用もそれなりにある。
だからシュバルツ元帥は、
万全を期して、それらの技や能力の使用を思いとどまった。
この時点で両者の能力値に、
大きな開きがあったが、
能力差が必ずしも有利になる訳でもなかった。
「――疾走」
先に仕掛けたのは、シュバルツ元帥。
まず走力を強化して、
両手で魔槍レオルバーシュの柄をしっかり握り、
両足で地を蹴って、間合いを詰める。
シュバルツ元帥は両手に持った漆黒の斧槍を勢いよく振り上げた。
そして漆黒の斧槍に闇属性の闘気を宿らせて、力強くに振った。
次の瞬間には、漆黒の斧槍から闇色の波動が放たれた。
魔剣や魔槍は魔力や闘気を注ぐことによって、
魔槍に宿る強力な魔力を自由に変換させて、
標的に向かって放つことが可能であった。
しかしこの戦法は以前の戦いでも使用されていたので、
リーファは慌てる事無く、光属性の対魔結界を張った。
「――ライト・ウォール」
半瞬後、闇色の波動が光の壁に着弾。
爆音と共に光の壁が揺れ動く。
この一撃だけなら完全に防ぎきれた。
だがそんな事はシュバルツ元帥も百も承知。
そしてシュバルツ元帥は、
何度も何度も魔槍から様々な属性の波動を放つ。
「リーファ殿、敵は強引に攻めてくている。
後、さりげなく単独連携も狙っている。
通常の対魔結界だと、とても防ぎきれないぞ!」
「ランディ、そんな事は分かっているわ」
慌てるランディに対して、
リーファはあくまで冷静であった。
シュバルツ元帥の放った様々な属性の魔力の波動が光の壁に命中。
三、四発目までは耐えられたが、
五発目の攻撃で光の壁に罅が入り、綺麗に打ち砕かれた。
それと同時にリーファは、
左手に持った「幻魔の盾」を前へ突き出した。
そして眉間に力を入れて、
「幻魔の盾」に魔力を流し込んだ。
それと同時に「幻魔の盾」が目映く光り、
前方から迫る魔力の波動を次々と呑み込んだ。
「……やはり小細工が通じる相手ではないか。
良かろう、ならば今度は接近戦だ!」
シュバルツ元帥は、そう叫びながら、
両足に風の闘気を纏い、全力で地を駆けた。
リーファとしては、
魔法で応戦したいところであったが、
今は剣と盾で両手が塞がれた状態。
なのでこの場はリーファも剣で応戦する事を選択した。
「――ヴォーパル・スラストッ!」
「――ヴォーパル・ドライバーッ!」
聖剣と魔槍による突きが放たれた。
聖剣と魔槍は激しく衝突して、
周囲に火花を散らした。
今の一撃でリーファの右手も痺れた。
一撃の重さが段違いであった。
パワーに関しては、あのマリーダより上であろう。
流石は竜人族の元帥。
その実力はあのマリーダと比較しても遜色がなかった。
「――ダブル・スラストッ!」
「――ダブル・ストライクッ!」
今度は突きの二連撃を放ってきた。
リーファも同じく二連撃で応戦するが、
突きを受け止めるだけで、
手だけでなく腕にまで衝撃が響いた。
これはパワー勝負では分が悪い。
それを一瞬で悟ったリーファは、戦い方を変えた。
「この俺の突きに耐えるとはな。
戦乙女の肩書きは伊達じゃないな」
「……それはどうも」
「だが体格差では、こちらが大きく上回っている。
いくらお前と言えど、
俺の攻撃に何度も耐えれそうにはないな。
ならばこちらとしては、攻め続けるまでだ!」
「……」
「これならばどうだぁっ!!
――ミリオン・スラストォッ!!」
シュバルツ元帥はそう叫ぶんで、
両手で持った漆黒の魔槍で高速の突きの連打を繰り出した。
帝王級の槍術スキル。
シュバルツは無心で、ひたすらに突きを放った。
突き、突き、突き、ひらすら突きの連打。
それに対してリーファは、
切払いや突き、受け流し。
また左手に持った「幻魔の盾」で、
放たれる突きの連打を何とか防御する。
しかしシュバルツ元帥も焦る事なく、
眼前のリーファを視界に捉えたまま、
両手に持った漆黒の魔槍で突きを繰り出し続ける。
通常ならば、この辺で少しは疲れるtころだ。
その際にカウンターで反撃する。
というのがリーファの狙いであったが、
眼前の竜人族の元帥は、疲れる気配を見せなかった。
どうやらパワーだけでなく、
スタミナも無尽蔵のようだ。
「うっ……」
何度も何度も突きを受けて、
リーファは流石に気押されて一瞬身体のバランスを崩した。
そしてシュバルツ元帥は、その隙を逃さなかった。
「――ブラッディ・スイングッ!!」
「き、きゃあああっ!!」
漆黒の魔槍が大きく振り払われた。
そして魔槍の穂先がリーファの身体を切り裂いた。
左肩から右脇腹に切り傷が刻まれる。
「――疾走」
それと同時にリーファは、「疾走」を発動。
そして後方に大きく跳躍して、
間合いを取って、素早く上級回復魔法を唱えた。
「――ディバイン・ヒールッ!」
それによって刻まれた切り傷が癒えていくが、
完全に治癒する事はなかった。
「――悪くない判断だ。
だが今、この魔槍には強い呪詛が付与されている。
傷を受けたら、直ぐには完全に治癒する事は出来ぬ。
少なくとも戦闘が終わるまで、傷が完全に癒える事はない」
勝ち誇った表情でそう言うシュバルツ元帥。
どうやら相手もこの最終決戦に向けて、
下準備をしてきたようだ。
傷が完全に癒えないのは、誤算であった。
このまま傷を負い続けたら、
いずれこちらの方が先に動けなくなる。
その前に決着をつけねば!
リーファはそう胸に刻みながら、
左手に盾、右手に聖剣を構えながら、腰を落とした。
次回の更新は2024年12月7日(土)の予定です。
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