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第二百八十話 起死回生(前編)


-----三人称視点---



 まともに魔法攻撃を受けた聖龍と竜の群れ。

 聖龍以外の竜の群れは、

 この一撃で半数近くが死傷したが、

 攻守の要である聖龍。

 

 その契約者マスターであるシュバルツ元帥は、何とか生き延びていた。

 聖龍エレライムは、両翼で身体を防御ガードして、

 何とか魔法攻撃に耐えていたが、

 いくら聖龍と言えど、無傷では居られなかった。


 両翼、そして身体の至るところから、

 黒煙を吐き出して、その体皮は激しく傷ついていた。

 それを見るなり、シュバルツ元帥が的確に指示を飛ばす。


「良し、何とか耐えたな。 だがエレライムも深い傷を負った!

 周囲の魔導師部隊よ、エレライムに回復魔法と治療魔法をかけろっ!」


「了解しました! 我は汝、汝は我。 

 母なる大地ハイルローガンの加護のもとに! ――アーク・ヒール!!」


「――ディバイン・ヒール」


「――ホーリーキュアァッ!」


「――キュアライト」


 周囲の魔導師部隊が聖龍エレライムに、

 回復及び治療魔法をかけた。

 目映い光が聖龍エレライムの身体を覆って、

 それが聖龍の全身に広がり、

 身体中にある傷を癒やしていった。


「エレライム、どうだ?」


 と、シュバルツ元帥。


「ええ、八割くらいは傷も疲労も回復したわ」


「そうか、ならこの後に突撃出来るか?」


「ええ、でも恐らく死ぬ事になるでしょうね。

 だけどそれでも構わないわ。

 惨めな敗走なんてまっぴらごめんよ。

 そんな真似するくらいなら、

 一人でも多く敵兵を道連れにするわ」


「良い返事だ、良かろう。 私も付き合おう。

 周囲の竜騎士ドラグーン、また帝国兵の諸君。

 私とこの聖龍は今から敵陣に突撃をかける。

 私は諸君に同行を強制させないが、

 付き合いたい者は、私と聖龍について来るが良い」


「……」


 唐突なシュバルツ元帥の言葉に、

 周囲の帝国兵達も思わず押し黙った。

 しかし彼等にも拒否権はある。


 そして七割近くの者は同行を拒否したが、

 残り三割の者は、シュバルツ元帥に最後まで付き合う。

 と、強い意志を持って答えた。


 その言葉を聞いたシュバルツ元帥は――


「世の中、案外馬鹿が多いな……」


 とだけ漏らして、

 愛竜ガルアームに乗って、

 聖龍エレライムの背後に回って――


「良し、では行くぞっ!

 だが途中で気が変わった者は離脱及び逃亡しても構わん。

 どのみちこの戦いは、負け戦だ。

 だが帝国軍人としての意地を見せたいのであれば、

 私と聖龍の後に続くが良いっ!」


「おおっ!!!」


契約者マスターシュバルツ!

 アナタ達の覚悟は、良く伝わったわ。

 ならばわらわもこの身体が動く限り戦うわ」


 聖龍エレライムはそう言って、

 両翼を広げて羽ばたいた。

 そして空高く舞い上がり、敵陣目掛けて突撃を開始!


「良し、我々も後に続くぞっ!」


「はいっ!」


 そして聖龍とシュバルツ元帥による決死の突撃が仕掛けられた。


---------



「ニャー、聖龍が突撃して来たニャ!」


「ニャールマン司令官、どうしますニャ?」


 色めきだつ猫族兵ニャーマンへい

 だがニャールマン司令官は落ち着いていた。


「敵も決死の覚悟での突撃だろう。

 我々としても応戦したいが、

 我等と聖龍では体格差が違いすぎる。

 近づかられては一溜まりもない。

 だから我等は距離を取って、

 戦乙女ヴァルキュリア殿やその護衛部隊を支援する!」


「り、了解ニャン」


 ニャールマン司令官のこの判断はある意味正しかった。

 聖龍と猫族ニャーマンでは、

 象と子猫以上の体格差がある。


 そんな相手に接近戦を挑むのは愚行の極み。

 だからこの場は、

 必然的にリーファ達が聖龍を迎え撃つ形となった。


「ラビンソンきょう、聖龍と竜の群れが突撃して来たわ。

 これはどのように対処しますか?」


 流石のリーファも少し慌てていたが、

 小さな黒兎の獣人は、予想以上に落ち着いていた。


「恐らく連中は玉砕覚悟であろう。

 捨て身の敵ほど恐ろしいものはないピョン。

 だがここはあえて相手を迎え撃つピョン。

 というかここでボクらが逃げたら、

 周囲の味方兵は全滅させられかねん。

 とりあえず皆は馬から降りて、

 飛行魔法や移動魔法を駆使して聖龍と戦うピョン」


「了解しました、パーティの役割分担はどうしますか?」


「そうだなあ、リーファくんはそこのイケメン剣士。

 それとエルフのかわい子ちゃんと組め。

 残りの者は獣人同士で組んで、

 遠くから狙撃、魔法攻撃。

 それとリーファくん達を支援せよ!

 ボクはリーファくん達と組むよ!」


「り、了解です」


 ラビンソンの判断は的確であった。

 このような場合は、

 同じ体格の者同士が組んだ方が何かと動きやすい。


 こうしてリーファ、アストロス、エイシル。

 その三人組にラビンソンが加わった四人一組。


 残るメンバーはジェイン、ロミーナ。

 そしてジョンソンとシリルで四匹一組となった。


「それじゃ皆の武運を祈るピョン。

 リーファくん達は、飛行魔法フライで飛ぶピョン」


「「「は、はいっ!!!」」」


 そしてラビンソン、

 リーファ達は飛行魔法フライで空に浮遊した。

 それとほぼ同時に水の聖龍が迫ってきた。


「良し、エレライム!!

 精々、派手にぶっ放してやれっ!!」


「了解よ。 まずは「凍てつく息吹(コールド・ブレス)」っ!!」


「う、うわあああっ! せ、聖龍がこんな近くに!」


「だ、誰かアイツを食い止め……ぎゃあああっ!」


 聖龍エレライムは、口から凍てつく息吹を吐いた。

 その息吹を浴びた連合軍の兵士達は、

 絶叫と共に綺麗に身体が凍りついた。


 その光景を見てバウアー将軍の部隊。

 また遠目に陣取る猫族軍ニャーマンぐんも激しくおののいた。

 そんな彼等を尻目に、聖龍エレライムは宣戦布告を告げた。


わらわは水の聖龍エレライム。

 連合軍の兵士達よ。

 妾は逃げも隠れもしない。

 妾も命ある限り戦うから、

 貴様等も勇気を持って妾に挑むが良い」


 エレライムの凜とした声が周囲に響き渡るが、

 連合軍の兵士達は、

 この事態に混乱して、素早く動く事は出来なかった。


 こうして聖龍とシュバルツ元帥による起死回生の反撃が開始された。


次回の更新は2024年11月23日(土)の予定です。


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― 新着の感想 ―
エレライムの降臨で大ピンチに。果たしてどうなるのか心配になりました……
更新お疲れ様です。 エレライムは、なんだか聞き分けがいいですね。 もっと聖龍はオラオラ系だったような気がしますが、シュバルツ元帥が懐柔させるのが上手なのか、それとも元よりそんな性格なのか。 そして、…
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