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第二百七十三話 聖龍との激闘(後編)


-----三人称視点---



 リーファは、興奮状態のまま神帝級しんていきゅう剣技ソード・スキルを放った。

 リーファの聖剣の切っ先から、

 目映いビーム状の光線を放出されて

 前方の風の聖龍に高速で差し迫る。


「なっ……何て凄い魔力だァッ!!!」


 両眼を見開き驚愕する聖龍オルパニーア。


「オルパニーア! 上空へ!

 それが無理なら障壁バリアか、対魔結界を!」


 オルパニーアの後方で、

 契約者マスターの一人である女性竜人族カトラが叫んだ。


「無理だわっ! アァァァ……アアアァッ!!」


 ビーム状の光線は、

 銃弾のように鋭く横回転しながら、

 神速の速さで大気と地を切り裂いた。


 そしてビーム状の光線は、暴力的に渦巻きながら、

 聖龍オルパニーアの腹部を貫いた。


「グ、グ、グルアアアァァ……アァァァッ!!!」


 ビーム状の光線は、

 聖龍オルパニーアの腹部を貫通して、

 地を削りながら、聖龍の後方に居た帝国兵達を容赦なく呑み込んだ。


「ぐ、ぐあああっ……あああっっ!」


「す、スコット! あああぁっ……あああぁぁぁっ!!」


 聖龍の後方に居た契約者マスタースコットとカトラも

 ビーム状の光線に呑み込まれて、

 その全身が焼き尽くされた。


 まともにビーム状の光線を浴びた為、

 契約者マスタースコットとカトラも即死した。

 貫通したビーム状の光線は、

 帝国兵や飛龍や地竜も巻き込んで、

 その進行方向を阻む物を容赦なく次々と焼き尽くしていった。


 地面を抉り、帝国兵や龍の群れを貫き、

 止まる事無く突き進んで行くビーム状の光線。

 そして天に昇るような軌道で、空に吸い込まれるように消えていった。


「ち、力が……魔力が……アァァァ…」


 聖龍オルパニーアは、

 腹部に空洞が生じた状態で、ゆっくり前を歩いていた。

 

 だが契約者マスター三人を同時に失い、

 魔力が突如枯渇して、聖龍は地面に倒れ込んだ。


 聖龍オルパニーアの顔から生気が抜け、

 両眼の輝きが急速に消えていった。


 聖龍オルパニーアは、数回ほど身体を震わせたが、

 十数秒後には完全に動かなくなった。


 今回、放ったリーファの神帝級しんていきゅう剣技ソード・スキルは、

 「能力覚醒」と「かみ肉体にくたい」で、

 約四倍化された渾身の一撃。


 だから聖龍と言えど、

 その強力な一撃をまともに喰らえば、

 一溜まりも無かったようだ。


「あっ!?」


 次の瞬間、リーファの全身に、急速に強い力が漲った。

 聖龍オルパニーアを倒した事によって、

 また膨大な経験値エクスペリエンスを得たようだ。


「……また美味しいところを持っていきました。

 グレイス王女殿下、ラビンソンきょう

 申し訳ありません」


「いえ、気になさらなくていいわ。

 どうせ誰かが倒す訳だしね」


「うん、リーファくんはこの後も各地の戦場へ

 駆り出されると思うから、

 君のレベルアップは、連合軍の強化でもあるピョン」


 グレイス王女もラビンソンも特に不満を漏らさなかったので、

 リーファとしても要らぬ心配を抱えずに済んだ。


「あ、ありがとうござ……うっ!」


 その時、リーファの意識が朦朧とした。

 どうやら大量の魔力消費。

 それと「かみ肉体にくたい」を使った代償で、

 身体と頭が激しく消耗して、ある種の過労状態となった。


「お、お嬢様! 『魔力マナパサー」っ!!」


 すかさず自分の魔力を受け渡すアストロス。

 だが魔力を受け取っても、

 リーファは過労状態は改善しなかった。


「うっ……気持ち悪い。

 アストロス、気持ちは有り難いけど、

 これ以上は魔力を受け渡さないで……。

 ある種の魔力酔い状態でもあるみたい」


「わ、分かりました」


 今まで激闘を繰り広げてきたリーファだが、

 ここまで肉体と頭脳が疲弊した状態はなかった。


 やはり戦乙女ヴァルキュリアと言えど、

 行動の限界点はあるようだ。


「どうやらリーファくんは、

 少し休んだ方が良いピョンね。

 ここはグレイス王女殿下達に任せよう」


「ええ……って!

 ラビンソンきょう、アナタは戦わないの?」


 グレイス王女の言葉に、

 眼前の兎人ワーラビットは「そうだピョン」と頷いた。


「ボクはラミネス王太子に雇われたのであって、

 連合軍の傘下に入った訳じゃないピョン。

 だからここでの事後処理は、

 グレイス王女殿下や他の司令官に任せるピョン」


「……成る程、そういう考えな訳ね。

 良くも悪くもビジネスライクね」


「ありがとうピョン」


「……別に褒めてないわ」


 不機嫌な声でそう言うグレイス王女。


「そういう訳だから、

 ボクはリーファくんとそのお仲間一行。

 そして護衛部隊を連れて、

 一度、ワールスリー地方へ戻るピョン」


「……好きにすればいいわ」


「ウン、そうするピョン。

 ちなみに王女殿下は、

 この後、聖龍討伐に参加する気はない?」


「……リーファさんの力にはなりたいけど、

 アナタとは手を組みたくないから、却下よ」


「それは残念ピョン。

 じゃあリーファくんを馬車で休ませて、

 ボクらはワールスリー地方へ戻るピョン」


「「え、ええ」」


 一方的に話を決めるラビンソンの強引さには、

 アストロスとエイシルも思わずたじろいたが、

 この場は彼の提案に従う事にした。


 だがリーファは身体がふらつく中、

 グレイス王女に歩み寄って、姿勢を正して――


「グレイス王女殿下の健闘を祈ります!

 王女陛下のお陰で、聖龍に勝つ事が出来ました」


「それは私も同じよ。

 それとリーファさん、くれぐれも無理しないように。

 あの守銭奴しゅせんどうさぎに乗せられては駄目よ」


「はい、お、お気遣いありがとうございます」


「じゃあ、また何処かで会いましょう」


「え、ええっ……」


 こうしてリーファ達は、

 無事に聖龍討伐に成功した。


 この事実は連合軍の士気が大幅に向上し、

 また帝国軍の士気も少なからず低下した。


 その後、グレイス王女率いる連合軍の第二軍。

 それと第二軍に合流したヴィオラール兵士は、

 エルネス団長の指揮の許、

 聖龍が討伐されて、

 手薄になったロスジャイト方面へ果敢に攻め込んだ。


 対する帝国軍の第三軍。

 ハーン元帥とレジス将軍は、

 相変わらずラッカライム砦を拠点として、

 強固な防御陣を敷いて、籠城戦に持っていった。


 どうやら二人とも限界までは、

 戦うつもりのようだが、

 帝国や皇帝の為に殉死する気はなかったようだ。


 その結果、

 連合軍は帝国軍を攻め倦ねて、

 一気に帝国の西部エリアを制圧する。

 といった当初の予定通りにはならなかった。


 その間にもリーファとその盟友は、

 馬車に揺られて、ワールスリー地方へ向かった。

 聖龍を倒して、一部の者はリーファの事を「ドラゴン・スレイヤー」と称えたが、

 当の本人は最悪なコンディションで、

 馬車の中で浅い眠りについていた。



次回の更新は2024年10月30日(水)の予定です。


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黄昏のウェルガリア
― 新着の感想 ―
 聖龍を一体倒せたのは大きいですね。ラビンソンは態度は大きいけど戦略眼が優れています。とはいえビジネスライクなのでグレイス王女との相性は悪いですね。  もっともラビンソンの実力は証明されたわけですし、…
更新お疲れ様です。 アストロス唯一の仕事の魔力パサーをしたものの、今回はあまりいい方向には働きませんでしたね。 アストロス、魔力パサーの時以外はまともに名前もでてこないのに... とりあえず、倒せま…
なんとか聖竜を倒しましたが、油断ならないですね。帝国の野望は何時になったら終わるのか……
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