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第二百七十二話 聖龍との激闘(前編)


-----三人称視点---



「ジョンちゃん、距離は六百を切ったよ。

 あっ、口の周りに魔力が溜まっている。

 ブレス攻撃するつもりかも!?」


 騒ぎ立てる守護聖獣クロアール。

 だが当のジョンソンは冷静そのものだった。


「良し、今だぁっ!!」


 ジョンソンは、

 右手の人差し指で狙撃銃のトリガーを引く。

 次の瞬間、漆黒の狙撃銃の銃口から、

 氷と風の合成弾が放たれて、

 聖龍の左足の甲の部分に命中。 


 炸裂した合成弾が風の聖龍の左足の中で砕けて、

 弾の残骸が聖龍の左足の内部で漂流する。 


「ギ、ギギギ……ギャァッ……アアアッ!!」


 地獄のような激痛が左足の甲の部分に駆け巡り、

 聖龍オルパニーアは、思わず絶叫した。

 そして痛みに耐えきれず左足を地につけた。


「――もう一発喰らえっ!!」


 ジョンソンは追い打ちをかけるべく、

 再び狙撃銃のトリガーを引いた。

 放たれる合成弾。


 今度は聖龍の左足の大腿部に命中。

 そして再び炸裂する氷と風の合成弾。


「ギ、ギギギ……ギャァァァッッ……アアアァァァッ!!」


 立て続けに銃弾を喰らった風の聖龍は、

 その激痛で地面に崩れ落ちて、

 物凄い叫び声を上げた。


「お、おのれっ! 赦さんぞぉっ!

 アアアァァァッ! ――ウインド・ブレスッ!」


 次の瞬間、聖龍オルパニーアの口から、

 風の息吹が連合軍の前衛部隊に目掛けて放出された。。

 速度、威力、精度、そのどれもが一級品であった。


「ぎゃっ、ぎゃあああぁっ!!」


「ニャァァ……ニャアアァァァンッ!」


「ピ、ピ、ピョォォォォォォンッ!」 


 一瞬で広がった風の吐息に悶える連合軍の兵士達

 魔導師部隊が張った対魔結界も八割近くが綺麗に破壊された。

 聖龍の口から吐かれた多数の風の刃で、

 兵士達は身体中に切り傷を負わされた。

 だが兎人ワーラビットの小さな大魔導師は、冷静であった。


「皆、怪我人に回復魔法ヒール及び治療魔法をかけるピョン!

 ――ディバイン・ヒール!!」

 

「私達も治療するわよ! ――ディバイン・ヒール」


「――キュアライト」


「――ホーリーキュアッ!」


 ラビンソンの後に続くように、

 グレイス王女、リーファとその盟友も回復及び治療魔法を唱えた。

 だが今の一撃で五十人以上の仲間が即死させられた。

 それでも三十人近くの怪我人を回復及び治療する事に成功した。


「やはり聖龍のブレス攻撃は強力ピョン。

 何度も撃たれたら、こちらの被害も莫迦ばかにならない。

 ならば奴が転倒しているこの好機に一気に勝負を決めるピョン。

 グレイス王女殿下、ボクが氷結魔法で聖龍の動きを封じるから、

 その後に電撃魔法を撃って頂戴ピョン。

 リーファくんは、その後に能力を強化させて、

 最強のスキル、あるいは魔法攻撃を!」


「了解よ!」


「分かりました」


 ラビンソンの言葉に二人は大きく頷いた。

 そしてラビンソンは、間髪入れず呪文を詠唱し始めた。


「我は汝、汝は我。 母なる大地ハイルローガンよ!

 我は大地に祈りを捧げる。 母なる大地よ、我が願いを叶えたまえ!」 


 呪文が紡がれて、ラビンソンの周囲に尋常でない魔力が生じた。

 ラビンソンの周囲の大気が激しく振動していたが、

 当の本人は涼しげな表情で、呪文を更に唱えた。


「そして天の覇者、氷帝ひょうていよ! 我が身を氷帝に捧ぐ! 

 偉大なる氷帝よ。 我に力を与えたまえ!」


 ラビンソンはそう言って、両腕を頭上に掲げた。

 攻撃する座標地点は、聖龍の周囲。

 速度と威力は最大、但し範囲は最小限。

 そして両腕を頭上に突き上げながら、

 ラビンソンは大声で叫んだ。


「――絶対アブソリュート零度・ゼロッ!!」


 すると前方の聖龍の周囲の大気が激しく揺れた。

 そして瞬間的に聖龍の気温が一気に低下した。

 

「な、なんだ……コレはぁっ!!!」


 聖龍が大慌てでそう叫ぶが、

 その口の中や歯、そして鼻の穴が一気に凍らされた。

 それから身体全体に広がり、

 気がつけば、聖龍の身体の大半が凍りついていた。


 神帝級しんていきゅうの氷結魔法「絶対アブソリュート零度・ゼロ」。

 その名の通り、攻撃対象を一瞬で凍らせる最大級の氷結魔法だ。


 だが聖龍は高い耐魔力の持ち主。

 だからこの氷結状態が何処まで続くかは、

 ラビンソンでも予測不能であった。


「グレイス王女殿下、今だピョン」


「分かったわ、

 我は汝、汝は我。 母なる大地ハイルローガンよ!

 我は大地に祈りを捧げる。 母なる大地よ、我が願いを叶えたまえ!」 


 彼女が呪文を紡ぐなり、

 上空の雨雲が再び広がりを見せた。


「そして天の覇者、雷帝よ! 我が身を雷帝に捧ぐ! 

 偉大なる雷帝よ。 我は力を求む、その代償として我が魔力を捧げる。

 嗚呼、天をべるその御力おちからを我に与えたまえっ!!


 グレイス王女は、再び左腕を頭の上に真っすぐ伸ばす。

 攻撃する座標地点は、当然、風の聖龍が居る地点。

 そしてグレイス王女は、

 左手の人差し指に、

 強力な魔力を篭めて大声で叫ぶ。


「――大雷撃だいらいげきっ!!」


 上空を覆う雨雲から眩い稲光が紫電と共に瞬いた。

 そしてグレイス王女の頭上から、

 放たれた稲妻が聖龍の身体を再び捉えた。


「ぎ、ぎ、ぎゃあぁぁぁ……あああぁぁぁっっ!?」


 神帝級しんていきゅうの電撃魔法に加えて、

 聖龍の氷結状態によって、

 感電状態が引き起こされた。


 地獄のような激痛が聖龍の全身に駆け巡る。

 そんな中でも聖龍オルパニーアは、

 両手足をバタバタと暴れさせた。


 通常の生物なら既に死んでいただろうが、

 そこは聖龍、この状態でも異様な生命力を見せた。


「何という生命力ピョン。

 だが間違いなく効いている。

 リーファくん!」


「はいっ!」


「今だ、今のうちに強力なスキルか、魔法攻撃を!」


「了解です、――かみ肉体にくたいっ!!」


 リーファは、職業能力ジョブ・アビリティかみ肉体にくたい」を発動させた。

 その瞬間、リーファの全身が燃えるような熱さに包まれた。


「く、く、ぐっ……」


 リーファの全身から物凄い力と魔力が溢れてくるが、

 それと同時に激しい頭痛が起こり、

 身体中が焼け付くような熱に包まれた。

 この状態は長く持って五分が限界であろう。


 だがリーファは歯を食い縛った。

 リーファは気力を振り絞った。

 そして奥歯を噛みしめながら、技名わざめいを叫んだ。



「行けえええっっ! ――ライトニング・スティンガー!!」



次回の更新は2024年10月26日(土)の予定です。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 風の聖龍、あまり強くないですね。 いや、ラビンソンが強すぎると言うべきか? これはちょっと強すぎて、次回には決着がつきそうですしラビンソンは出禁になりそうですね。
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