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第二百六十九話 風の聖龍(前編)


-----三人称視点---



 帝国領の西部エリア。

 そこに戦乙女ヴァルキュリアリーファとその盟友。

 更には連合軍の第二軍を率いたグレイス王女の部隊が颯爽と戦場に現れた。


 リーファ達に同行した護衛部隊三百人。

 そして第二軍の精鋭で選抜された聖龍討伐隊五百人。

 合わせて八百人を超える部隊を持って、

 グレイス王女の指揮のもと

 風の聖龍オルパニーアの討伐戦が開始された。


 とはいえその前にいくつかの手順を踏む必要があった。

 戦場となるのは、帝国の西部エリアのロスジャイト方面。

 それ程、広くない戦場なので、

 両軍がこのロスジャイト方面にひしめき合う中、

 グレイス王女の指揮の元、

 連合軍の第二軍とヴィオラール王国軍は、

 十万に及ぶ大軍を持って、帝国軍を攻め立てた。


 帝国軍の第三軍の指揮官ハーン元帥。

 副将であるレジス将軍は、

 先日までのようにラッカライム砦を拠点にして、

 重厚な防御陣を組んでいたが――


「ハーン元帥、敵の攻撃が想像以上に激しいです」


「レジス将軍、それは観たら分かる。

 問題はこの状況をどう覆すかだ」


「元帥はあくまで守勢を貫くつもりですか?」


「嗚呼、我々だけが消耗したら、

 帝国軍の全体の陣形が崩れ、戦略にも影響する。

 故にこのロスジャイト方面の戦いは、

 守勢に徹して、全体の戦況を観て今後の方針を決める」


「となれば先日同様に「風の聖龍オルパニーア」を

 前線に押し出すべきでしょうが、

 敵の動きに気になる部分があります」


「……それは何だね?」


 ハーン元帥の表情が強張る。

 だがレジス将軍も怯まず、自身の意見を述べた。


「伝令兵によると、数日前の戦いで、

 「漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)」が戦乙女ヴァルキュリアに敗北したとの話。

 そしてその戦乙女ヴァルキュリアとその盟友の姿が

 ワールスリー地方の連合軍の本隊から消えたとの噂があります」


「ふむ、つまり戦乙女ヴァルキュリアを違う戦場に投じた。

 そしてこのロスジャイト方面に派遣した可能性が高い。

 とけいは申したいのだな?」


「……はい、その可能性は高いです」


「となれば敵の狙いは、

 「風の聖龍オルパニーア」討伐。

 という可能性も出てくるな」


「ええ、ですので元帥閣下の御意見を聞かせて欲しいです」


 レジス将軍の問いに、

 ハーン元帥がしばし沈思黙考する。

 そしてハーン元帥は、

 考えがまとまるなり、自分の考えを言語化した。


「仮に聖龍が討伐されれば、

 このロスジャイト方面をはじめとした帝国の西部エリアは、

 敵の猛攻により、敗北は必至となるであろう。

 とはいえ味方の増援は期待出来ない状況。

 ならば我々は今まで通りの方針を貫くべきだ。

 聖龍と言えど、所詮は龍。

 我等、両名の命の方が大事だ。

 だから聖龍には限界まで戦ってもらう。

 そして聖龍が敗れたら、

 その時にまた考えれば良いだろう」


「成る程、私も元帥閣下のお考えに賛成です。

 帝国や皇帝陛下には恩義がありますが、

 私も自分が可愛い、死してまで忠誠を誓う。

 といった殉教者のような真似は出来ません」


「ふっ、レジス将軍。

 貴公が聡くて助かったよ。

 そういう訳だ、「風の聖龍オルパニーア」は、

 予定通り前線に投入。

 但しその際には最大限のフォローをするように!

 だが聖龍より兵士の身の安全と命を優先せよ。

 これが指揮官としての私の意見だ」


「分かりました、そのように手配します」


「うむ、とりあえず我等は高みの見物と行こう」


「はい」


 帝国軍の元帥及び将軍も人の子。

 やはり自分の立場や命は惜しい。

 その結果、予定通りに「風の聖龍オルパニーア」が前線に投入された。


 それに対して、

 連合軍の第二軍は、魔導師部隊による魔法攻撃。

 そして中衛に弓兵アーチャー銃士ガンナーを配置して、

 弓矢や銃弾を放ちながら、オルパニーアの動きを封じた。


 対する「風の聖龍オルパニーア」。

 その三人の契約者マスターは、対魔結界や障壁バリアを張り、

 迫り来る魔法攻撃や弓矢、銃弾を防ぐ。


 またオルパニーアの他にも、

 多数の地竜、飛龍の姿が見えた。


「良し、ここで聖龍討伐隊と入れ替わるぞ。

 全員、防御陣を敷いたまま、

 ゆっくりと後退して、討伐隊と位置を入れ替えよっ!」


 エルネス団長の指示で、

 第二軍と聖龍討伐隊が見事な動きで、

 前列と中列を綺麗に入れ替えた。


「良し、皆! 前へ出て防御陣を引いたまま、

 防御及び強化技きょうかスキル、及び能力アビリティを使って頂戴。

 とりあえず私も使うわっ! ――ブレイブ・サークルッ!」


 グレイス王女はそう言いいながら、

 スキル『ブレイブ・サークル』を発動させた。


 これによってグレイス王女。

 そしてリーファ達や周囲の味方の防御力や魔法防御が一時的に強化された。


「私達も後に続きましょう! ――プロテクトッ!」


「はいっ! ――クイック」


「――ハイ・ディフェンダー!」


 リーファとエイシル。

 そして周囲のも味方も一斉に魔法やスキルを発動。

 これによって、下準備は整った。


「リーファさん、分析アナライズをお願い!:」


「王女殿下、了解です!

 ――我が守護聖獣ランディよ。 

 我の元に顕現せよっ!!」


 リーファがそう呪文を紡ぐと、

 毎度の如く、ポンという音を立てて、

 彼女の守護聖獣ランディが現れた。


「――ランディ! あの風の聖龍の分析アナライズをお願い!」


「了解! ――分析アナライズ開始!」


 それからランディの両眼が眩く光り、

 その身体も目映く白く輝きだした


 その間もリーファ達は武器や盾を構えながら、

 防御態勢を取り続けた。


「リーファ殿、あの聖龍の名はオルパニーア。

 以前戦った炎の聖龍の同種のようだ。

 パラメーターの数値は、炎の聖龍とほぼ同等。

 これは気を引き締めた方がいいぞ」


 ランディは分析アナライズの結果を告げた。

 そしてリーファとランディの意識が共有化されて、

 聖龍の能力値ステータスの数値が露わになった。



---------



 名前:オルパニーア


 種族:聖龍♀


 ランク&レベル:SSS(トリプル・エス)ランク、88


 能力値パラメーター



 力   :5654/10000

 耐久力 :8567/10000

 器用さ :3573/10000

 敏捷  :4785/10000

 知力  :7487/10000

 魔力  :10000/10000

 攻撃魔力:5507/10000

 回復魔力:3023/10000




---------


「……確かに凄い能力値ステータスね」


 炎の聖龍とほぼ同等の数値。

 項目によっては、ラグナールより高い部分もあった。

 これは骨の折れる戦いになりそうね。

 リーファは内心でそう呟く。


「ウン、遠巻きに見ても凄い魔力だピョン。

 でも大丈夫、ボクが居たら勝てるよ。

 それじゃあ、そろそろボクの実力を見せるね」


 ラッピー・ラビンソンは、そう言って前へ一歩進んだ。

 見た限りは小柄な兎人ワーラビット

 だがその堂々たる姿に、

 リーファだけでなく、グレイス王女も彼に視線を向けていた。


 自称・小さな大魔導師ラッピー・ラビンソン。

 その秘密のベールが遂に開かれる時がきた。



次回の更新は2024年10月16日(水)の予定です。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 聖龍、かなりステータス高いですね... 炎の聖龍と同じく、やはり魔力カンストですか... 10000は人間のマックスであって、聖龍にはそれ以上蓄えることができる...とかでしょう…
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